調理現場の機械化が進む調理・製菓業界では、求められる資質も変化している。単純作業は機械に任せて、人間はより想像力を駆使した仕事に取り組む必要があるという。人材不足が加速するなか、調理師やパティシエを目指す若者の活躍の場はますます広がっている。東京・横浜に2校を運営する学校法人誠心学園の広瀬道理事長に話を伺った。
必要なのは変化する調理・製菓の現場で何をすべきか「想像する力」
一流ホテルや高級店に就職できるチャンスが拡大
―慢性的な人材不足やインバウンド需要が話題の飲食業界の現状をどうご覧になっていますか?
食料品の小売業を含むフードビジネスの従業員数は、800万人を超える規模で、日本の就業人口の1割以上を占める一大市場です。それだけに人材不足は深刻で、近年は外国人労働者の増加が顕著です。特に牛丼チェーン店など飲食大手企業での外国人雇用が拡大しています。
飲食業界の中小企業では、跡継ぎ問題が深刻化しており、人気を維持している「名店」でも閉店を余儀なくされるケースが増加しています。これは地方においてより顕著です。人材不足以外に材料費の高騰も飲食業界の大きな経営課題となっています。製菓の分野では、いちごショートケーキ1ピースが800円超えという時代に突入しています。
明るい話題としては、インバウンド需要は引き続き活況です。個人的には現在の年間4000万人規模ではまだ少ないと思っていて、日本の観光立国としてのポテンシャルはまだ十分に発揮されていないと思います。訪日外国人旅行者が増加すれば、ホテルのレストランなど、飲食業界の求人もさらに増えるでしょう。
人材不足の課題は、学生にとっては希望となります。以前は高いハードルとされていた一流ホテルや高級店への就職も夢ではありません。売り手市場のため、飲食業界で働く若年層の転職も盛んです。早期離職を防ぐため、老舗料亭などでも1年目から焼き物や刺身など多様な業務を経験させる方向に変化しています。従来10年かけて習得していた技術を4〜5年で身につけられるよう、教育システムが変革されているのが現状になります。
―飲食業界の新時代において、調理・製菓の専門学校ではどのような学びを提供しているのでしょう?
先ほども申し上げた通り、調理現場の機械化は加速するでしょう。このAI時代の人材育成において、重要になるのは、「想像力」です。定型的な業務はAIでも対応可能になるため、人間にしかできない「想像する力」「考える力」の育成が急務とされています。調理実習においても、単純な技術の習得だけではなく、理論的理解を深める教育への転換が求められていると思います。
専門学校は、「クッキングスクールの延長」ではいけない。真の職業教育を提供するには、各分野の理論と実践を組み合わせた体系的なカリキュラムが不可欠です。個別の技術を身につけるだけでなく、各料理の全体像を理論的に理解できるような教育が求められているのです。
例えば、誠心学園が運営に携わる東京誠心調理師専門学校では、入学してから飲食業界で働くための幅広い体験ができるカリキュラムを用意しています。2年制コースの場合、1年次に和・洋・中の調理の基礎技術・理論を身につけた後、2年次は1年間を4クールに分けて、フレンチ、イタリアン、日本料理の実習を学生自身が選ぶことができます。
製菓の学びについては、横浜にある国際フード製菓専門学校のコースがいいサンプルになります。2年制の製菓製パン科では、1年次に洋菓子・和菓子・パンの基礎技術・理論を学び、2年次はこの3種から1コースを選び、実習を通して、専門的に学びます。いずれも体系的な理論を理解した上で、専門技術の習得という流れになっています。
卒業時に取得できる資格もしっかり確認しておこう
―調理・製菓の専門学校を選ぶ際のポイントはありますか?
これは私の持論でもありますが、校舎の設備を見れば、その専門学校のコンセプトがわかります。設備には、その学校の意向が強く反映されています。最近は校内にレストランを併設し、実習型の授業などで活用する専門学校も増えています。最新鋭の調理器具にこだわる学校もあれば、大規模な調理機器を配備している学校もあります。ここからどのような調理師や製菓衛生師を養成したいかが見えてきます。
卒業時に取得できる資格もしっかり確認しておきましょう。専門学校を卒業すれば、「調理師免許」「製菓衛生師」「菓子製造技能士」などの国家資格を取得できると思われがちですが、学校によってはコースを修了しても資格を取得できないケースがあるので注意が必要です。
―調理・製菓の専門学校卒業後はどのような会社に就職できますか?
調理師専門学校の卒業生の就職先は、一流ホテルや一等地に立つレストラン、機内食や海外日本大使館などが挙げられます。製菓専門学校の卒業生は、一流ホテルの製菓部門や有名チェーン店のほか、専門店に就職してパティシエとして活躍する道が拓けます。しっかり技術と知識を身につければ、憧れの有名店で働けるチャンスは広がっています。
専門学校を選ぶ際は、卒業生の就職先を確認すべきです。学校によって、特定の業界や地域との強いネットワークがある場合もあります。「ここで働きたい」という明確なイメージがある場合は、その店舗や企業への就職実績がある学校を選ぶと夢に近づける可能性が高まります。
―調理・製菓業界を目指す高校生とその保護者にメッセージを。
調理現場も機械化が進み、誰でもできる業務は、機械が担うことになるでしょう。人間側に残るのは、顧客のニーズに合わせて、柔軟にサービスを考える「想像」の仕事に尽きます。そのため、高校時代から、気になるレストランやカフェがあれば、必ずお店に足を運んで、自分の目で見て、舌で味わって体感してほしい。楽しむこと、体験することが発想力につながり、その先の学びにおいても必ず役に立つと思います。
調理・製菓分野のポイント
1 設備から学校のコンセプトがわかる
学校の設備から実習内容や養成したい調理師像が見えてくる。厨房設備の清潔さも要チェック!
2 どのような国家資格を取得できるか
コース修了時にどのような国家資格を取得できるか要チェック。無資格のまま卒業になる可能性もある。
3 卒業生の就職先をチェック
各学校には独自の業界や企業のネットワークがある。志望する企業への就職実績を確かめておこう。
この質問に答えてくれた人

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国際フード製菓専門学校








国際フード製菓専門学校
広瀬 道(おさむ) 理事長
東京ヒルトンホテル勤務後、学校法人誠心学園に入職。神奈川県専修学校各種学校協会副会長、全国製菓衛生師養成施設協会副会長、神奈川県洋菓子協会常務理事、内閣府6次産業化人材ワーキンググループメンバー。