これだけは知っておきたい!専門学校選びの基本

偏差値のような基準がない専門学校。その特徴を知って、教育内容が優れた学校に出会うためには?

世の中は「手に職を」が合言葉と言わんばかりに、大学に実学系の学部が増えたり、 専門職大学という新しい学校が創設されたりするなど、職業教育がブームとなっています。 このような中、以前から職業人教育を担ってきた専門学校に対しても再評価の動きが高まっています。 教育内容が優れた学校を選ぶために、押さえておきたいポイントをまとめてみました。

専門学校はどのような学校?

専門学校にはさまざまな分野の学校があります。どの分野も特別な技能や知識、あるいは資格が必要になるため、学生は専門学校で集中してこれらを習得することで、その業界へ巣立っていきます。

また専門学校の教員は実務経験者が多く、技術や知識だけでなく、職業人としての考え方やマナーなども教わることができます。教育内容のほとんどすべてが、就職して専門職として身を立てていくためのものといえます。大学は教養科目を含めて幅広く学ぶのに対して、専門学校は特定の分野を深く学んでいくのが特徴なのです。

専門学校は、学校教育法の定めに基づき都道府県知事の認可を受けることが必要です(※)年間の授業時間、教員数、学生数などさまざまな条件を満たした学校のみが専門学校として正式に認められます。

一方で、専門学校によく似た学校でありながら、認可を受けていない学校(無認可校などと呼ばれることもある)もあり、選ぶ際には注意が必要です。中には、あえて認可を受けないことによる制約のない教育環境を武器に、よい就職実績を上げている学校もありますが、あくまで少数派です。

しかし認可された専門学校を選びさえすれば絶対安心ということでもありません。学校によって教育内容や就職実績の良し悪しもあります。ここでは、専門学校選び全般に共通するポイントについて見ていくことにしましょう。

就職データの見方

 専門学校は学んだ分野へ就職するための学校ですから、どのくらい卒業生が就職できているかというデータが大切です。いずれの専門学校も「就職率」を公表しています。しかしこの就職率という数字の読み方には注意が必要です。少し解説しましょう。

就職率とは、卒業生のうちどれだけの人が就職できたかを表す割合と思われがちです。しかしこの計算方法だと、就職を希望しなかった人がたくさん出てしまった場合に、数字が低くなってしまいます【左図・計算方法1】そこで、ほとんどの学校では就職を希望する人だけを分母にして計算するという方式が採られています【左図・計算方法2】

専門学校なのに就職を希望しない人がいるのか、と思うかもしれません。しかし実際にはさまざまな理由で就職を希望しない人が出るものです。家庭の事情のほか、大学に進学したくなったなどというのが多い理由ですが、学んでいるうちにこの分野に興味が持てなくなり就職へのモチベーションが下がってしまった、ということもあります。このような人が多ければ、その学校の教育内容に問題がないのかを疑ってみなければなりません。

最近は【計算方法1】のように卒業生全員を分母として算出した割合(「実就職率」ということもある)を公表する学校も増えており、よい傾向になってきています。しかし、このような就職率のデータのみを見て判断するのではなく、就職先の企業名、雇用形態(正社員かどうかなど)、希望する企業への就職状況などを聞いてみると、同じ分野の学校でも違いが実感できるはずです。また、就職サポートの体制といったデータに表れないところに関心を持つことも大切です。

就職率の見方

カリキュラムに学校の方針が表れる

 就職先やその後の仕事人生に影響が大きいのは、なんといっても教育内容そのものです。つまり「カリキュラム」がとても重要だということです。それぞれの学校の教育方針が現れるのもこの部分です。専門学校は実習の時間が多いため、実習の進め方についての考え方も学校によって違います。

しかしカリキュラムはWEBサイトやパンフレット上で、ごく簡単にしか触れられていない場合があります。さらに詳しいカリキュラムやシラバス(授業ごとの計画書)や実際の時間割などを確認したい場合は専門学校に直接聞くとよいと思います。パンフレットには仮の時間割表を載せている場合もあるので、実際に使われているものを見せてもらうとよりイメージが湧くでしょう。

また、専門学校は1年間で行わなければならない授業時間数が800時間以上と決められています。たとえば、行事やレクリエーションなどをその授業時間数の中にカウントしていれば、専門的な内容に触れる時間は減ってしまいます。こういったカリキュラムの組み方といった点でも、学校によって方針の違いが出るため、比べがいがあります。

どのような教員が教えていてどのような設備を揃えているか

 国家資格を取得する専門学校であれば、決められた授業や実習を行わなければならないので、見かけ上はどの学校も同じようなカリキュラムということになります。そこでどのような教員が教えているかが教育内容の違いに表れます。専門学校ですから、どのような実務経験を積んだ人が教えているかということが大切です。また、ある程度の教員数を確保していることももちろん重要です。

設備のすばらしさについては多くの学校がアピールするポイントで、目を奪われるものもたくさんあります。しかし見た目だけでなく、学生が授業や実習で使うことをきちんと考慮して導入された設備かどうかに注目すると、さらに各校の特徴が見えてきます。

オープンキャンパスを活用する

 各分野への理解や学校選びのために、オープンキャンパスへ積極的に参加するとよいでしょう。  校舎や設備の見学や体験授業など、各学校とも工夫を凝らした魅力的なプログラムを準備しています。ただし一方で、オープンキャンパスは各学校のよい部分がクローズアップされがちですので、普段の授業や実習を見に行く機会があれば、それも逃さないようにしたいものです。

また、できれば3年生になる前に複数の学校を見ておくとよいと思います。というのも、最近は専門学校の入試は早期化しているからです。一番早い「AO入試」は、3年生の6月に実質的な選考が始まる場合もあります(ただしAO入試を行わない学校もあり)。直前で焦らないように、早めの情報収集を心がけましょう。

専門学校をめざすための心がまえ

 専門学校への入学は、業界に足を踏み入れるということだという意識を持つことが大切です。そのためには、その仕事についてよく調べて知り、めざす気持ちを高めておくとよいでしょう。そのうえでいろいろな学校を比較・検討します。カリキュラムの特徴や設備など、複数の学校を見比べると違いもよくわかります。

専門学校には同じ志を持った学生が集まるので、職業意識や分野への理解を高めて、自分に合った学校に入学すれば、同級生と切磋琢磨しつつ充実した学生生活を送れることでしょう。

 

※この文中では「専門課程を有する専修学校」という意味で「専門学校」という表記に統一しています。