目の前のお客様のために何ができるか。新時代の外食産業を担う調理師とは!?

コロナ禍を経て、飲食業界は危機的な「人材不足」の状況にあるという。一方で、調理現場機械化が進み、調理師に求められる資質も変化している。

調理師として外食産業を支える若者たちは今、を学び、どのようなスキルを身につけるべきか。

東京誠心調理師専門学校を運営する学校法人誠心学園広瀬道理事長に話を伺った。

専門学校は幅広い経験をして
自分の「好き」を確かめる場所

調理師専門学校はカスタマイズ教育を提供する時代へ

―コロナ禍もやや落ち着き、飲食業界にも勢いが戻ってきたのを感じます。
現場の状況をどのようにご覧になっていますか?

飲食業界は、コロナ禍の厳しい状況を移動販売の実施やデリバリーサービスの活用、出張シェフサービスの導入など、新しい取り組みによって乗り越えてきました。

コロナ禍は落ち着いたものの、ロシアのウクライナ侵攻などに起因する原材料高騰など新たな課題もあります。

そして、何よりも深刻なのは、「人材不足」です。労働力人口が減少している日本で、外食産業を支える人材が不足することはコロナ前から明らかでした。そのため、飲食業界の待遇は、大幅に改善されています。今や残業なし休みが取りやすい職場を探すことも十分可能です。

一方で、人材不足によって、調理の現場では、機械に頼る領域がますます増えています。

これからの外食産業で活躍するならば、「人」でなければできないことは何かを深く考える必要があるでしょう。つまり「料理をつくる」ことは、機械でもできるかもしれない。今後は調理師「いかに売るか」「いかにお客様に届けるか」という思考回路を持たないといけない時代になります。

―そんな外食産業の新しい時代に向け、調理の専門学校で何を学ぶべきでしょうか?

専門学校は、ますます学生ごとにカスタマイズされた教育を提供するようになるでしょう。

例えば、私が運営に携わる東京誠心調理師専門学校では、入学してから飲食業界で働くための幅広い体験ができるカリキュラムを用意しています。和・洋・中の調理の基本技術に加え、メニュー開発や原価計算を行う「レストランシミュレーション」、教養を身につけて接客を実践する「コミュニケーション実習」などの授業を用意しています。

学生は、調理だけでなく、接客サービス店舗運営の基礎も学び、自分に何が向いているかを見つけていくのです。

 

―多くの調理師専門学校は、1年制と2年制のコースがあります。
どのような違いがありますか?

1年制の課程は、短期間で専門スキルを習得できるカリキュラムになっています。これは、早く社会に出て活躍したい人には向いているでしょう。

一方で、2年制の課程は、幅広い授業や実習を経験して、将来の選択肢を広げることができます。学校側も学生にさまざまなきっかけを与えられるカリキュラム構成を心がけています。

自分の「好き」を確かめるために専門学校に通う人には、2年制が向いていますね。

飲食業界は可能性の宝庫
憧れの店で働くチャンスも

―専門学校を選ぶ際のポイントがあれば、お聞かせください。

調理師を養成する多くの専門学校は、校内にレストランを併設し、実習型の授業などで活用しています。

皆さんにチェックしてもらいたいのは、調理の現場となる厨房やバックヤードです。厨房は使い込むほどに汚れていきますが、管理の行き届いた学校なら、年季が入った厨房でも清潔に保たれています。

現場の衛生管理は、食の安心・安全を確保するための大前提です。これは教育の指針を見る物差しにもなります。

また、調理専門学校は、建物自体がオーダーメイドです。どういう実習をしたいのか、どういう人材を育成したいのかは、設備を見ればわかります。ぜひ現地を見て、どういう環境で学べるのか確かめてください。

 

―調理師免許取得後、卒業生はどのようなお店に就職しますか?

卒業生の就職先は、一流ホテルや一等地に立つレストラン、歴史ある日本料理店などが挙げられます。専門学校でプロの技術を身につける以上、こうした店舗で活躍する調理師を目指してほしいと思います。

ファミリーレストランやチェーン居酒屋などのマニュアル通りの調理は、アルバイトでもできます。プロの調理師は、お客様の要望があれば、メニューにない料理でも提供します。

蓄積した技術によって、柔軟にオーダーに対応するのもプロの調理師の醍醐味です。それが「人」でなくてはならない領域になるでしょう。

専門学校を選ぶ際は、卒業生の就職先を確認すべきです。学校によって、特定の業界や地域との強いネットワークがある場合もあります。「ここで働きたい」という明確なイメージがある場合は、その店舗や企業への就職実績がある学校を選ぶと夢に近づける可能性が高まります。

 

―最後に調理師を目指す高校生とその保護者にメッセージを。

人間は「食べる」という行為をやめることはありません。その点で、飲食業界には多くの希望があります。

前述の通り、人材不足は深刻で、就職先を選べる状況にあります。これから調理師を目指す若い世代は、憧れの店で働ける可能性もあるし、起業することも夢ではありません。

大切なのは、目の前のお客様に満足してもらうために自分に何ができるかを知ること。専門学校でそれを見つけることができれば、可能性は無限大だと思います。

 

調理分野のポイント

1 幅広い体験ができるカリキュラムか

調理だけでなく、接客、店舗運営など、さまざまなことを体験できると将来の選択肢が広がる。

2 衛生意識と食の安全・安心

学校の施設の清潔さは要チェック。技術以上に衛生面への意識が将来の現場で評価される。

3 卒業生の就職先をチェック

各学校には独自の業界や企業のネットワークがある。志望する企業への就職実績を確かめておこう。

 

この質問に答えてくれた人

学校法人 誠心学園
東京誠心調理師専門学校
広瀬 道(おさむ) 理事長
東京ヒルトンホテル勤務後、学校法人誠心学園に入職。
神奈川県専修学校各種学校協会副会長、全国製菓衛生師養成施設協会副会長、神奈川県洋菓子協会常務理事、内閣府6次産業化人材ワーキンググループメンバー
取材後記
調理業界には「(料理を)つくる」、「接客・店舗運営」、「商品開発・デザイン」など、様々な活躍の場がある。
将来、学生がどの方向を目指すべきか、在学中からサポートできる細やかな教育システムの必要性を強調された広瀬理事長のお話が印象に残った。
学校紹介
東京誠心調理師専門学校

東京都大田区蒲田3-21-4
TEL 03-3734-4411
https://www.seishingakuen.ac.jp/tokyo

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