「作る」技術だけでなく、マーケティングや販売などの学びから「届け方」を意識しよう

コンビニ商品が台頭するなか、人はスイーツやパンに何を求めているのだろう。お菓子作りやパン作りにはもちろん技術が必要だが、果たしてそれだけで今のニーズに応えられるだろうか。

国際フード製菓専門学校校長広瀬 道(おさむ)先生に、業界の現状から今後必要となる人材像と専門学校の選び方についてお話しいただいた。

お客様に寄り添って商品を届ける意識が業界のこれからを拓く

人の口の数だけニーズはある 大事なのは「どう届けるか」

―製菓・製パン業界の現状と求人傾向についてお聞かせください。

一般的な飲食業界の場合は営業時間短縮の要請により痛手を被るところもありましたが、パンやお菓子の場合はもともと20時まで開いているお店は珍しい。

そのせいもあって、業界の規模としては、ほぼ縮小していません。なかにはテイクアウトなどをうまく利用して売り上げを伸ばした店舗もありました。

ただ、デパートやスーパーに入っているお店はその限りではなく、厳しいところもあったと聞きます。

特にホテル業界ブライダル業界では職人の求人がまったくない時期もありましたが、コロナの落ち着きとともにかなり回復傾向にあります。

個人店の例ですが、感染者数が減少した2021年11月〜12月の時期には、過去にないほど売り上げがアップしたお店も多くありました。

コロナ禍で大きく変わったのは、「販売方法」の幅の広がりです。通販や宅配が当たり前になったのに加えて、パンを個別包装して販売するお店も多く、コロナ前よりも作業の手数が増えています。

業界全体としては、人材不足の傾向は変わらず、就職に困ることはないでしょう。

ここから考えるべきなのは、たとえ一時的に利用客が減っても、人の口の数は減らないわけで、飲食のニーズはなくなりません

大事なのは、求めている方々にどう届ければいいかを考えること。変化するお客様のライフスタイルに寄り添って商品をお届けしたいという意識が、今後ますます求められます。

―そうした変化の中で、専門学校では何を学ぶべきでしょうか?

極端に言えば、作る技術を学ぶだけでは、わざわざお金を払って専門学校に行く意味はないと思っています。調理方法や食材に関する知識は、インターネットを使えば簡単に手に入りますよね。

また、今後、製菓・製パン産業は「機械化」が進むでしょう。作る過程でのルーティンワークは、機械に取って代わられます。そうしたときに私たちが立ち向かうべきは、見せ方や売り方を工夫するような仕事です。

例えば、アフタヌーンティーを、自宅で食べるのと一流ホテルで食べるのとではどちらがより幸福感を得られるでしょう。間違いなく後者ですよね。

お客様はただお菓子やパンを食べにきているのではなく、その場の空間時間に期待してお金を払っているのです。そうした付加価値を提供する場面にこそ、人がいる意味があります。

本校では販売マーケティングの授業にも力を入れていますが、まずはこういうことに興味を持ってほしいですね。技術一辺倒の機械的な職人を育てるのではなく、その知識や技術をどのように使えばいいのかを学んでもらいたいのです。

専門学校は、学生の将来の道筋を示す羅針盤であるべきだと思っています。

製菓衛生師は将来の幅を広げる国家資格

―専門学校を選ぶ上でのポイントがあれば教えてください。

まず、認可校かどうかを確認してください。本気でプロを目指すなら、認可校の充実したカリキュラムで学ぶメリットは大きいと思います。

次に就職実績を確認してください。その際に注目すべきは、就職率ではなく、「就職先」です。実際にどういった企業に就職して働いているのかという情報が、将来の指標になります。

その専門学校にしか求人を出していない企業もあるので、細かく研究することをおすすめします。

 

―製菓衛生師の資格のメリットについても教えてください。

専門学校の製菓製パン系の学科には、3つのパターンがあります。製菓衛生師の資格を取得できる学校、洋菓子製造技能士の資格を取得できる学校、資格を取得することができないフリースクールです。

洋菓子製造技能士は、洋菓子製造に特化した技能資格です。一方の製菓衛生師は、和菓子・洋菓子・パンの技術を網羅しているだけでなく、衛生知識も備わっていることを証明する国家資格です。

どちらにもメリットはありますが、本校の場合は将来どのような場所でも活かせる幅広い知識や技能、経験を備えている製菓衛生師の資格取得を目指します。

―どのようなタイプの人がこの業界で伸びるでしょうか?

専門学校選びや資格選びにも同じことが言えますが、ただ単に「好き」というところで止まるのではなく、将来のことを考えて学びを選択する人が成長できると思います。

高校生活においても、学力を伸ばすために勉強するのではなく、学んだことをどう使えるかといった職業意識を持っている人は、伸びるのではないでしょうか。

 

―最後に、この分野を目指す高校生にメッセージをお願いします。

お菓子・パンの作り方は学校や現場で教えてもらえますが、もっと大事なのはお客様の気持ちに寄り添うこと。

だからこそ、たくさんの人と直接話をし、多様な価値観を知ってほしいと思っています。どうやったらお客様に喜んで買ってもらえるだろうか、と考える際の想像力につながるはずです。

 

製菓・製パン分野のポイント

1 技術を「どう使うか」を考える

技術はいつでもどこでも学べる時代。専門学校ではその先のお客様への届け方や見せ方を学ぼう。

2 就職率ではなく、「就職先」を確認

企業との関係性により特定の専門学校にしか求人を出していないところもあるので、就職先に注目。

3 将来の幅が広がる製菓衛生師の資格

製菓製パンの技術と衛生面の専門知識を備えた製菓衛生師は、あらゆる現場で活躍できるプロ。志望する学校で受験資格が得られるか確認を。

 

この質問に答えてくれた人

学校法人 誠心学園 理事長
国際フード製菓専門学校 校長
広瀬 道(おさむ)理事長
東京ヒルトンホテル勤務後、学校法人誠心学園に入職。
神奈川県専修学校各種学校協会副会長、全国製菓衛生師養成施設協会副会長、神奈川県洋菓子協会常務理事、内閣府6次産業化人材ワーキンググループメンバー
取材後記
「人の口の数だけニーズがある」という製菓・製パン分野。
顧客に購買してもらうためには付加価値やサービス、届け方が今後さらに重要になっていくことは間違いない。
技術だけでなく、このようなスキルを丁寧に教えてくれる講師が揃う専門学校を選んでほしい。
学校紹介
国際フード製菓専門学校

神奈川県横浜市西区北幸2-9-6
TEL 045-313-4411
https://www.seishingakuen.ac.jp/international/

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