「人」を運ぶだけが航空業界の仕事じゃない!コロナ禍で明らかになった「物流」の重要度

コロナ禍で大きな打撃を受けた航空業界だが、2022年度に入り、入国規制も緩和され、空港の仕事は一気に活気を取り戻している。また、コロナ禍の数年間、航空貨物分野の仕事はずっと盛況だったことなど、空港には一般の人々が知らない職種がたくさんあるという。成田航空ビジネス専門学校石井美帆広報部長に航空ビジネス・エアライン分野の仕事と今後の展望について伺った。

コロナ禍でもエアカーゴのビジネスは盛況だった

―ここ数年、コロナ禍の影響を受けた航空ビジネス・エアライン業界の現状についてお聞かせください。

コロナ禍で航空業界の仕事がすべてストップしたようなイメージをお持ちの方も多いようですが、実はエアカーゴ(航空貨物)の分野はむしろ活況で、早々に業績も回復しました。客室乗務員の採用が中止になった2020年もエアカーゴ分野は、採用が続いていたんですよ。

コロナ禍で通販などの需要が増え、物流業界が大忙しだったのは、ご存じの通りです。飛行機がワクチンの低温輸送に使われたこともニュースになりました。コロナ禍でわかったのは、非常時に「人」の往来は止まっても物流は止まらないということです。

2023年に入り、海外からの観光客も戻ってきて、成田空港も羽田空港も仕事が回らないくらい忙しいと聞いています。実際、空港関連の求人も急増しています。やっと航空業界に日常が戻って来た感じです。

―特に成田空港は、2029年までに滑走路を3本にして、発着回数を大幅に増やす予定のようですね。

2029年供用開始予定で、滑走路整備計画が進んでいます。現在2500mのB滑走路は1000m延伸され、新たに3500mのC滑走路が新設されます。

これにより、発着回数は年間30万回から50万回へ、空港従業員数は現在より3万人多く必要になると見込まれており、航空・空港の分野に興味がある人には、明るい状況といえるでしょう。

―改めて航空ビジネス・エアライン分野にはどのような仕事があるか教えてください。

大きく分けると、「接客」の仕事と「非接客」の仕事に分けられ、更に大きく4つの職種に分類できると考えています。

接客といえば、機内での接客を担う「キャビンアテンダント(客室乗務員)」を思い浮かべる方も多いでしょう。機内サービス全般や保安業務を行う専門家です。また、地上での接客を担う「グランドスタッフ」は、旅客ターミナル内でのほぼすべてが守備範囲で、航空券の発券から搭乗案内、手荷物の対応、トラブル対応など、とても幅広い業務を担当します。

非接客では、「人間ではないお客様」である「航空貨物」に関わるのが「エアカーゴ」の仕事です。通関関連の書類作成や確認、荷主の対応、データ入力など、オフィスワークが中心です。もうひとつが「グランドハンドリング」の仕事。これは飛行機の誘導、扉の開閉、旅客の荷物や貨物の積み下ろし、さらに飛行機の牽引など、縁の下の力持ち的な役割を担っています。飛行機の利用者からは見えにくいのですが、飛行機の安全運航・定時運航を支えるやりがいのある仕事です。

インターンシップや実習の選択肢が多い学校がおすすめ

―航空ビジネス・エアライン分野を学べる専門学校を選ぶ際のチェックポイントを教えてください。

成田航空ビジネス専門学校もそうですが、空港から近い学校を選ぶメリットは大きいと思います。早くから実習で空港の実務を体験でき、インターンシップの受け入れ先もたくさんあります。実際、研修先の企業に就職する学生もいるので、各校のインターンシップ実績を調べておくといいと思います。

また、グランドハンドリングのような、特殊車両の運転技術が必要な仕事を目指す場合は、実習設備や環境も要チェックです。例えば当校には、成田空港近くに専用実習場があり、グランドハンドリングコースの学生は、空港で貨物などを牽引する特殊車両やフォークリフトの運転技術を在学中に習得できます。

空港は海外の人々と日常的に接する場所でもあります。国際共通語である英語力やグローバルな対応力を身につけるために、常勤の外国人教師の有無や英語を学べる環境も確かめたいところです。

―想定される就職先は、やはり空港関連業務が中心でしょうか?

卒業生の8割以上が空港関連の企業に就職します。例えば、当校は特に成田・羽田空港のネットワークが強いのですが、関西国際空港や中部国際空港、新千歳空港や仙台空港に就職した卒業生もいます。

就職先は、日系の主要航空会社やその関連会社が中心ですが、物流業界、鉄道業界、ホテル業界などに就職する学生もいますね。業界の大手企業に就職できる可能性も大いにありますので、至近の内定状況なども確認することをおすすめします。

―航空ビジネス・エアライン分野を目指す高校生にメッセージを。

空港は非日常の場所です。航空ビジネス・エアライン分野を目指せば、日々刺激的なことが起こる楽しい職場で働くことができます。また、空港の仕事はチームプレーが基本です。常に相手や周囲を思いやり、共通の目標に向かって頑張ることが好きな人には、とてもやりがいを感じていただける仕事です。

この分野を目指すために、高校時代にやっておいてほしいのは、やはり英語をはじめとする通常の勉強です。また、世界とかかわる仕事をするので、地理の勉強をしておいてほしいですね。主要な国の場所や都市を地図上で理解しておくだけでも、就職してから大いに役立ちますよ!

航空ビジネス・エアライン分野のポイント

1 インターンシップの受け入れ先や実習の環境をチェック!

空港関連の仕事は、学生時代に実習やインターンシップでいかに実務を経験できるかがポイントに。

2 目指す企業への就職実績があるか

卒業生の就職実績は将来の就職先とダイレクトにつながってくる。憧れの企業があるか調べておこう。

3 英語力や国際力を身につける環境

空港の仕事に英語力は不可欠。外国人教員の有無などグローバルな環境があるか確認を。

この質問に答えてくれた人

学校法人翔陽学園 成田航空ビジネス専門学校
石井 美帆 広報部長

1989年日本航空株式会社入社。成田空港にて国際線グランドスタッフ、本社教育担当、JALスカイサービス( 現:JALスカイ)採用担当を経て2014年より現職。「自分を成長させてくれた航空業界に恩返しできる人材を育てる」のが目標。

取材後記
コロナ禍で大きな影響を受けた航空業界が昨年から急速に業績も求人も回復している状況を伺えて大変勉強になった。なかでも航空貨物に関わる「エアカーゴ」の業務内容は成田空港の拡張計画と併せて高校現場にぜひ知ってほしい話だ。

学校紹介

成田航空ビジネス専門学校
千葉県成田市公津の杜2-28-4
TEL:0476-27-2500
https://abc-narita.ac.jp

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