生成AIの登場で、デザイン業界にも大きな変化が訪れている。この新時代にデザイナーに求められるのは、「人間性」を持って未来を構想する力だという。桑沢デザイン研究所が目指すのは、「ヒューマンフィット=人間と人間性への適合」を軸に、社会や環境との関係を考える姿勢を身につけたデザイナーの育成。プロダクトデザイン専攻の本田圭吾先生にその真意を聞いた。

本田圭吾先生
渋谷という立地だから学べる社会と人に向き合うデザイン
―まず、桑沢デザイン研究所の特色や最新の学びについてお聞かせください。
本校の大きな特徴のひとつが、渋谷という立地が学びの一部になっている点です。渋谷は流行りの情報が集まるだけでなく、価値観や文化、テクノロジーが常に更新され続ける場所です。社会の変化や人の行動を日常的に体感できる環境に身を置くことで、デザインを「机上の技術」ではなく、社会と人間に向き合う実践的な行為として学ぶことができます。
総合デザイン科(昼間部)3年制の学びでは、1年次に「基礎造形」「基礎デザイン」を通して、全専攻に共通するいわゆるデザインの「汎用的な基礎力」を徹底的に身につけます。2年次からは、ビジュアルデザイン(VD)、プロダクトデザイン(PD)、スペースデザイン(SD)、ファッションデザイン(FD)の4専攻に分かれ、専門性を深めていきます。
また、ビジュアルデザイン(VD)、エクスペリエンスデザイン(XD)の2専攻で専門性を深める専攻デザイン科(夜間部)2年制(2027年4月から)でも「汎用的な基礎力」をしっかり学ぶのは本校の特色です。
いずれの専攻においても共通しているのは、「ヒューマンフィット=人間と人間性への適合」を軸に、社会や環境との関係を考える姿勢です。人間は生物学的に個体としては非常に弱く生存しにくいため、共同体(衆)をつくって生活を守り、環境(社会)を形成してきました。人間を中心にデザインするということは、社会がどうあるべきかを構想すること。人間の身体・感覚・行動・感情を起点に、デザインを通して社会にどう関与していくかを学んでいきます。
―桑沢デザイン研究所の特色である「基礎造形」「基礎デザイン」では、どのようなことを学ぶのでしょう?
デザインの世界には、唯一の正解は存在しません。同じ課題に対しても状況や視点によって複数の解が生まれます。
「基礎造形」では、その前提となる発想の幅を広げる力、可能性を生み出す力を養います。木材や紙、粘土などさまざまな素材に触れ、「手で考える」体験をすることで、自分の観察力や発想力を磨いていきます。
- 形・色・構成を試行錯誤すること
- 手を動かし、失敗を重ねること
- なぜそう感じたのかを言語化すること
こうした基礎的な経験の積み重ねが、後の専攻で「最適解」にたどり着くための土台になります。
一方、「基礎デザイン」では、2年次からの各専攻で学ぶ実践的デザインを経験することで、さまざまな領域におけるデザインの役割を理解します。これは、専攻に分かれて身につける高い専門性を力に「領域」を横断してデザイン力を発揮する統合力のあるスペシャリストとしての思考と姿勢につながります。
―本田先生が担当するプロダクトデザイン(PD)専攻では、どのような力を身につけることができますか?
プロダクトデザインというと、「モノをつくる仕事」というイメージを持たれることが多いですが、本校のPD専攻では、道具を通して人の体験や価値を設計することを重視しています。近年「プロダクトデザイン」という言葉は、デジタルサービスやアプリの体験設計を指して使われることが増え、フィジカルな道具のデザインは相対的に不可視化されつつあります。しかし、サービスやシステムは単体で完結するものではなく、現代の社会の仕組みの中ではプロダクトと一体化しています。「使われ方」「体験の流れ」「そこから生まれる感情や感覚」といったUX(ユーザーエクスペリエンス)は不可欠ですが、UI(ユーザーインターフェイス)として人が実際に触れるモノの色や形、質量や質感も大切です。
「モノからコトへ、コトからココロへ」この一連の流れを実体のある「心地よい道具」として成立させるスキルをPD専攻で養うことができます。
桑沢の卒業生作品展は、学生の「社会への問いかけ」
―桑沢デザイン研究所では、卒業生作品展を非常に大切にしています。その魅力はどのような点にあるのでしょう?
卒業制作は、学生一人ひとりの学びの集大成であると同時に、社会への問いかけでもあります。「デザインとは個の問題ではなく、衆の問題であり、社会の問題である」とは、桑沢デザイン研究所の創設者である桑澤洋子先生の言葉であり、本校のデザイン教育の指針です。ジャーナリストでもあった桑澤先生は常に生活者の視点で日常の物事を捉え、デザインの視点で紹介していました。
- 何を問題として捉えたのか
- なぜそれを課題と考えたのか
- どんな未来を提示しようとしたのか
卒業制作ではこうした問題意識の深さと社会との接続の仕方も重視しています。現代社会において、「問題」はますます見えにくくなっています。社会の「違和感」に気づき、あぶり出すと潜んでいた「問題や課題」にやっとたどり着くことができます。本校の卒業制作は、違和感を個人の感覚に留めず社会の問題と捉え、未来への最適解を示した学生たちによる「社会への問いかけ」なのです。
―桑沢デザイン研究所を目指す受験生と保護者、高校教員へメッセージを。
デザインとは、社会や人間と向き合い続け、「なぜそうあるべきか」を考え、その問いに形や仕組みで応えていく行為です。
桑沢デザイン研究所では、完成度の高い成果物をつくる以上に、考え方の軸を身につけることを大切にしています。時代が変わっても揺るがない「デザインとは何か」という問いを自分の言葉で表現できる人材を育成していきます。
AI開発や技術革新が加速し、誰でも簡単に何かをつくれる時代だからこそ、「何をつくるか」「なぜつくるか」を決める役割として「人間性」を持って考え続けることがデザイナーにより強く求められます。社会と人をつなぐ存在として、領域を横断し統合する力、責任をもって未来を構想する力を桑沢デザイン研究所で身につけてほしいと思います。
■総合デザイン科 昼間部3年制
■専攻デザイン科 夜間部2年制
■夜間附帯教育
■別科 Kuwasawa Design Studio専門学校桑沢デザイン研究所
〒150-0041 東京都渋谷区神南1丁目4-17
TEL 03-3463-2431
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