自ら生み出した「かたち」を通じて、社会に何かを提案するのがデザイン

近年、ビジネスの文脈でデザインの重要性が語られることが多くなっている。

デザインの基本は、観察し、試作し、提案すること。デザインには、社会を変える力さえあるという。

デザイン系専門学校では、どのような力が身につくのか。桑沢デザイン研究所 デザイン学分野責任者の御手洗陽先生にお話を伺った。

社会のあらゆる場面で「デザインの力」が求められる時代へ

コロナ禍でも実力のある卒業生は活躍の場を広げている

―まず、デザイン業界の現状についてお聞かせください。

コロナ禍に入る前から景気は後退傾向にありました。クリエイティブ業界は、実体経済より少し先に動きが表面化するので、就職はやや厳しくなる気配は感じていました。

さらに、今回のコロナ禍ということで、卒業生たちの心配をしたのですが、桑沢デザイン研究所の例でいうと頑張っていた学生は問題なく就職できていますね。こんな時期でも転職でフィールドを広げている卒業生もいます。

確かな技術があれば、それほど心配はいらないようです。

 

―「デザイン」という言葉はよく耳にしますが、具体的にはどのようなことを学べるのでしょう?

わかりやすい分野でいうと①ビジュアル②プロダクト③スペース④ファッションの4つに分けるのが一般的です。

①は、グラフィックデザインやWebデザイン、②は家電や家具など製品のデザイン、③は空間やインテリアデザイン、④は服飾系デザインとなります。

各分野で学べるのは、絵を描く、モノをつくるという技術自体ではありません。手を動かして生み出した「かたち」を通じて、社会に何かを提案する方法を学ぶのです。

ビジュアルなら「こういうことに関心を向けよう」、プロダクトなら「こういうモノや仕組みを選んで使おう」、スペースなら「こういう環境に身を置いてみよう」、ファッションなら「こういうスタイルや素材を選んでみよう」という具合に、制作をともなう社会への問いかけをするのがデザインなのです。

 

―デザインを学ぶとどのような力が身につくのでしょう?

ひと言でいうと「創造力」です。身体感覚を使ってモノを創り出した体験は、あらゆる分野で応用できます。その手段となるデザインの技術や能力は、デザイン・プロセスの成果として身につくものです。

デザイン系専門学校では、①観察する(リサーチ)→②試作する(プロトタイピング)→③提案する(プレゼンテーション)のサイクルをひたすら繰り返します。

①では鍛えた観察力と調査力で自分なりに問題を発見し、②で手を動かして自分なりの解決策を探り、③で自分の技術を活かして他の人も体験できるかたちにして提案する。このプロセスをひとりで回せるようになったとき、創造的な仕事ができるようになるのです。

 

デザインに特化した教養科目を短期間で集中的に学べる

―今期、コロナ禍で授業計画はどう進められましたか?

これは、桑沢デザイン研究所の例になりますが、理論系の座学の講義は、収録やオンライン配信で実施して、対面の授業は実技系を優先するようにしました。

やはり、実技系はリアルだからこそ伝わるものもあるので、少人数制で対面の環境を確保するようにしました。

一方、収録配信が自分のペースで学べると予想以上に学生から好評で、今後さらなる工夫を重ねていきます。

 

―デザインを学ぶ際に大学と専門学校の違いはありますか?

一般論として、専門学校は就職先で即戦力になれるデザインの専門知識を得られます。一方で大学は幅広い教養を身につけながら、デザインを学んでいく傾向があります。

もちろん、専門学校でも理論系科目を学ぶことはできます。例えば、デザインの歴史を学べば、有名な作品はどのような社会状況下で生まれたのかがわかります。さらに、著作権などデザインを取り巻く法規を学べる授業などもあります。

デザインに特化した教養科目を短期間で集中的に学べることも専門学校のメリットといえるかもしれません。

 

―デザイン系の専門学校を比較する上でのポイントはありますか?

各校の卒業制作を見るのが一番わかりやすいでしょう。どんな先輩がいて、どういう設備でものづくりをしているかすべてわかります。各校の公式サイトでも在校生の作品を公開しているはずです。

もちろん学校の規模や雰囲気が自分に合っているか現場を見て判断することも大切だと思います。さらに、その学校の就職実績も要チェックです。憧れの業界・職種で働いている先輩が多ければ、そのネットワークに仲間入りできる可能性が高まります。

 

―想定される就職先や就職後のキャリアアップの状況についてお聞かせください。

グラフィックデザイナー、プロダクトデザイナー、インテリアデザイナー、ファッションデザイナーなどの専門職を目指せるだけでなく、最近は社会のあらゆる場面でデザインの力が求められています。

デザイン会社や広告代理店だけでなく、衛生マスクや照明器具の会社でデザインの力を試している先輩や、陶芸や和菓子の商品企画や経営で活躍している先輩もいます。

デザインの力で、今までにない新たな仕事が生まれている動きに注目したいですね。

 

―デザインを学ぶために、高校時代から取り組むべきことは?

世の中の動きに関心を向け、みんなが何に関心があるのか常に考えてほしいと思います。

そのためには、さまざまなメディア表現に触れる必要があります。映画、マンガ、小説など、たくさんの作品に触れることが何より重要です。

外部の刺激をたくさん吸収できる状態で専門学校に入学できれば理想的だと思います。

 

デザイン分野のポイント

1 実技と理論のバランスがいいカリキュラムになっているか

優れたデザインを生み出すには、表現の技術だけでなく歴史や文化の幅広い知識も必要になる。

2 在学生の作品をチェックする

先輩たちが発信するメッセージに共感できるかも重要。オープンキャンパスやWebでチェック!

3 業界の卒業生ネットワーク

クリエイティブ業界で活躍する卒業生が多い学校に通えば、ネットワークを強みにできる可能性も。

 

この質問に答えてくれた人

学校法人 桑沢学園
専門学校 桑沢デザイン研究所
専任教員(メディア論)
デザイン学分野責任者
御手洗 陽 先生
埼玉大学大学院文化科学研究科修了。著書に『デザインの瞬間』(共著、角川学芸出版)など。現在会津大学短期大学部、関東学院大学、早稲田大学非常勤講師。
取材後記
デザインについて、理論面を中心に解説くださった御手洗先生のお話の中で紙面の都合で本文で触れられなかった、過去~現在~未来のデザイン理論を学ぶ大切さについて、取材後記でご紹介したい。古典の名作を多く知る事で創造する際の引き出しが増え、未来に思いを馳せる事で人々の生活をよくする発明・デザインが生まれるチャンスが広がるというお話だ。特に社会人にとっても古典からヒントを得て現在の仕事などに活かす機会は多いはずなので、趣味・教養として日ごろからぜひ取り込んでおきたいと思う。
学校紹介
専門学校 桑沢デザイン研究所

東京都渋谷区神南1丁目4-17
TEL 03-3463-2431
https://www.kds.ac.jp/