優れた料理人の育成方針を「シラバス」で見える化

即戦力人材の養成に向け、逆算に基づく段階別カリキュラムで着実にスキルアップ

学校法人後藤学園武蔵野調理師専門学校は、 1968年の開校以来、3万5000人以上の調理師を輩出。 近年では「高度調理経営科」と「ダブルプログラム科」が、 文部科学省の「職業実践専門課程」に認定され、 多様な人材を飲食業界に輩出している。 同校の教育方針や取り組みを教務部の大野強部長に伺った。

リーディング校としての 揺るがぬ矜持と使命感

―貴校の学びの特長についてお聞かせください

まず、調理師を養成する専門学校は、決して”お料理学校”ではありません。料理をつくるだけなら、レシピを見て忠実に手順を踏んでいけば十分なはず。専門学校に求められるのは、サービス業に従事するプロの料理人を育てることであり、それ以前に必須となる職業観や社会人基礎力を身につけさせるミッションがあります。

そこで本校は、1年制の「調理師科」に加え、2年制の「高度調理経営科」と「ダブルプログラム科」の3コースを用意しています。「高度調理経営科」は、将来の経営者養成に向けて、食文化から簿記、マネジメントまで、幅広い知識を習得します。

もうひとつが、料理と製菓の両方を学ぶ「ダブルプログラム科」です。調理師を目指しつつ、実際はパティシエ志望といったニーズに応えるべく、時代に先がけて開設しました。生徒の8割が女性という点も特徴的です。野菜ソムリエやフードコーディネーターの資格も取得して、将来の独立に備える卒業生もいます。

 

―生徒はどのようにステップアップしていくのでしょうか

第一歩は人格教育です。「しつける(人格教育)」「きたえる(実学教育)」「つなげる(就職サポート)」の三位一体の指導を段階的に進めていくカリキュラムに、本校の強みがあると考えています。

もちろん、調理師養成に向けた実学教育の中核をなすのは、日々の実習です。調理師の資格取得に必要な実習時間は、年間390時間と規定されていますが、本校の2年制コースでは、その約2・5倍となる990時間の実習を設けています。

さらには、着実なステップアップを実現するために、段階別カリキュラムを設けている点に本校の独自性があります。 まずは、「切る」「焼く」「煮る」「出汁をとる」という初歩から学ぶ「基本調理技術実習」。次に、和洋中製菓の基礎をバランスよく学び、応用力のベースを培う「グランドステージ」。最終段階が、より高度な技術を磨き、志望する専門領域への就職に備える「スキルアップステージ」です。

指導内容に関する膨大な 情報量をシラバスで見える化

―各段階での到達目標は、生徒自身も認識できていますか

本校では、実習の意義・目的・到達目標とその理由、進め方や注意点などを明確化した「シラバス」を作成しています。シラバスは、各段階の実習に臨む生徒の意識を高め、実習の成果を最大化させます。事前に内容を知るからこそ当日の理解が深まり、知識や技術の定着が促進されるからです。

なお、シラバスは本校の教育内容とその質を見える化したツールとして、広く公開しています。いわば、本校の教育の質を物語るエビデンスなのです。

―貴校では、課外プログラムも充実しているそうですね

通常の段階別カリキュラムに加え、本校のこだわりであり、強みであるのが、産学連携教育です。飲食業界で活躍する卒業生とのつながりを最大限に活用し、1年次から活発にセミナーやホテル見学、インターンシップなどを行います。

将来のロールモデルとなる卒業生とのコミュニケーションを通じて、生徒の目に輝きが生まれ、明確な目的意識にもつながります。

例えば、夏季休暇中に行うリゾート研修は、必修ではなく任意ですが多くの生徒が参加します。繁忙期での研修のため非常にタフな現場となりますが、サービス業の精神や衛生意識の大切さ、人の口に入るものを扱う責任感など、業界の本質を理解できる絶好のチャンスとなります。

また、そもそも繁忙期に生徒を受け入れてもらえるのは、本校に対する信頼の表れ。生徒のみならず、研修先には生徒の様子を確認する為に、私を含めた教職員も必ず足を運び、1日に数100kmを車で移動することも珍しくありません。こうした地道な取り組みが受け入れ企業との信頼関係につながっている自負があります。

 

1人1人の調理台を完備 充実の設備は大前提

―設備面での特徴やこだわりをお聞かせください

段階的な指導方法に加え、生徒の成長に寄与する大きな要因が設備です。就職先ではチームワークで調理を行う場面もありますので、本校でもグループワークを取り入れていますが、ゼロからすべて自分で調理できる技術を身につけてこそ一人前。ですから本校の実習では、プロ仕様の調理台を1人1台用意してスキルを磨きます。  

また、細かな調理技術やプロセスを学ぶためにモニターで教員の手元を映し、全生徒が見られる環境を整えています。アシスタントがカメラを操作し、見るべきポイントに応じてアングルの切り替えを行いながら、生徒の理解を深めさせるのです。ハード自体が強みなのではなく、肝心なのは使い方。設備を使いこなして生徒のスキルアップにつなげるソフト面にこそ、本校の強みがあると考えています。

―こうして即戦力人材が育っていくのですね

いわば、高いスキルを持った卒業生こそが本校の誇るべき「作品」。国内外のVIPクラスが訪れる高級レストランの総料理長クラスで活躍する卒業生も多く、ホテル・飲食業界から一目置かれる専門学校としての自負と使命感があります。

今後も実績に甘んじることなく、たゆまぬ努力によって継続的・安定的に、一流店、有名店へと即戦力を輩出していきます。35000人を超える卒業生たちが築いてきた、この圧倒的な「出口偏差値」をキープしていくことが私たちの責務だと考えています。

学校紹介

武蔵野調理師専門学校
高度調理経営科 2年制
ダブルプログラム科 2年制
調理師科 1年制
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-12-5
TEL 0120-510-331
https://www.musashino-chouri.ac.jp/