【桑沢デザイン研究所】卒業生作品展で見てほしいのは、未来に向けたデザインの可能性

桑沢デザイン研究所の卒業生作品展を訪れると、プロダクトからCG、ファッション、空間まで、あらゆるデザインの現在形が一様に見られるという。

スペースデザイン分野を担当する大松俊紀先生の案内で、卒業生作品展「桑沢2024」の様子をレポートしよう。

最新のデザインが集結した桑沢の「卒業生作品展」

2024年2月、東京・渋谷にある桑沢デザイン研究所で、卒業生作品展が開催された。

2月23日(金)から25日(日)で行われた「桑沢2024」の会場を訪れると白を基調としたスタイリッシュな空間に、個性的な作品がズラリと並んでいた。会場は、若者を中心とした多くの来場者で埋めつくされ、コロナ禍が終わったことを改めて感じさせられた。

会場は全6フロアで、ビジュアルデザイン、プロダクトデザイン、スペースデザイン、ファッションデザインと専攻ごとにスペースが分けられている。展示作品もポスターからイラスト、写真、商品パッケージ、家具、建築模型、ファッション作品まで実に多彩だ。

「桑沢の卒業生作品展の魅力は、ビル1棟のコンパクトな空間で、デザインのあらゆる分野をカバーした展示を一挙に見られることです。校舎の8階から下に降りてくる間に、最近のデザインの流れの全体像がわかります」

そう語るのは、桑沢デザイン研究所の大松俊紀先生だ。担当するスペースデザイン専攻では、家具や照明など空間を構成する単位である「エレメント」、内部空間を意味する「インテリア」、都市環境を形づくる「住環境」の3つの分野で多彩な授業を行っている。

「展示では、完成した作品自体に目が行きがちですが、本当に見てほしいのは、学生がゼロから独自のコンセプトを考え、長い時間をかけてそれを固めて、形にしていった過程です。また、そこから見える未来に向けたデザインの可能性にも注目してほしいですね」

桑沢デザイン研究所の昼間部では、3年間の学びの課程で、デザインの基本となる課題発見→仮説立案→提案・発信→検証のサイクルを繰り返す。そのベースとなるのが、1年次「基礎造形」「基礎デザイン」の授業だ。ここで実際に手を動かしながら、素材や造形と向き合い、デザインの基礎を学んでいく。

その後、2年次からビジュアルデザイン、プロダクトデザイン、スペースデザイン、ファッションデザインの4専攻に分かれて、実践的な課題に取り組む。

「1年次の『基礎造形』では、いきなり木の塊を渡されて、手に馴染む形に彫るという課題が与えられます。機能のことは一切考えずに、素材を感じ、その可能性を模索します。スペースデザインの学生もファッションデザインの学生も等しくこの授業を受けます。

そして、2年次から素材に機能を付けて、デザインとして発展させていきます。例えば、イスであれば木という素材に『座れる』という機能を加えながら、生活を変えるような新たな可能性を模索します。ここで最初から機能のことを考えるとどうしても似通った作品ばかりになってしまう。最初に機能を度外視して、素材の特性や手ざわりと徹底的に向き合うことで、言語ではうまく説明できない面白いものが生まれてきたりするのです」

デザインの「普遍性」とは何かを桑沢で学んでほしい

2年次からの「実践的な課題」の好例といえるのが、大松先生が担当する「住宅設計」の授業だ。

ここでは日本を代表する建築家・篠原一男氏が設計した住宅を訪問見学し、模型をつくってその設計思想を学び、それを参考にして新たな住宅を設計する課題に挑戦する。

「建築家・篠原一男は、桑沢の教壇に立っていたこともある縁の深い方です。授業で学生は、篠原氏が設計した住宅の隣に敷地を設定し、新しい住宅を設計する課題に挑戦します。巨匠の住宅デザインと向き合い、同氏が世界的に評価される背景やその思想を深く理解するプロセスを通じて、デザインの普遍性とは何かを学んでほしいと思っています」

優れた建築には必ず思想がある。それがなければ、2・3年で陳腐化してしまう建築にしかならない。実際に住宅の模型をつくり、巨匠の設計思想に触れる体験を通じて、普遍的なデザインの本質を学ぶことができるという。

作品展のWebサイトでは、担当学生による各作品の詳しい説明も掲載されている。また同サイトでは、今年度の学内説明会イベントの予定なども掲載されている。

卒業生作品展「桑沢2024」
詳細・オンライン展示公開中

「生成AIが登場し、3DCGなどが簡単に描ける時代になりました。しかし、デザインの本質は『考え方』にあります。例えば、イスをつくるなら『どんな形?』ではなく、『座るってどういうこと?』から考えるのが桑沢の教育です。ここでデザインを根本から考えた経験は、20年後、50年後の未来にも普遍的に役立つものになるでしょう」

スペースデザイン分野の大松俊紀先生
専門学校 桑沢デザイン研究所
■総合デザイン科 昼間部3年制
■専攻デザイン科 夜間部2年制

専門学校 桑沢デザイン研究所
〒150-0041
東京都渋谷区神南1丁目4-17
TEL 03-3463-2432(進路支援課)

→『進路の広場』で専門学校 桑沢デザイン研究所を見る