【桑沢デザイン研究所】卒業生作品展で感じてほしいのは、学生が捉える問題意識。

桑沢デザイン研究所の卒業生作品展を訪れると、学生たちが日常生活の中で、何かに違和感を感じ、それを解決するために作品づくりに挑んだ軌跡が見えるという。

プロダクトデザイン分野を担当する本田圭吾先生の案内で、卒業生作品展「桑沢2023」の様子をレポートしよう。

ジャーナリストだった創立者・桑澤洋子先生

桑沢デザイン研究所の創立者である桑澤洋子先生は、もともと建築・室内設計・服飾などを専門とするジャーナリストだった。客観的な視点で社会の課題を捉え、デザインの力によって人々の生活をよりよくする提案をするという基本理念は、現在にも受け継がれている。

日常生活で感じる漠然とした違和感をスルーせず、しっかり観察し、そこで見つけた課題を解決するための提案をするのがデザイナーの役割だと思っています。つまり、デザイナーにはジャーナリスト的な観察の視点が求められるのです」

そう語るのは、桑沢デザイン研究所の本田圭吾先生だ。

担当するプロダクトデザイン分野の授業では、学生たちに、日常生活で出会う違和感と向き合い、それを課題として「見える化」し、社会に向けて発信するプロセスを繰り返すように指導しているという。

プロダクトデザイン分野の本田圭吾先生

 

 社会への問題提起もデザインの重要な役割

そんな学生たちの試行錯誤の軌跡を見ることができるのが、卒業生作品展だ。

東京・渋谷にある桑沢デザイン研究所で2023年2月24日〜26日の3日間で開催された「桑沢2023」の会場を訪れると白を基調としたスタイリッシュな空間に、個性豊かなデザイン作品がズラリと並んでいた。作品の高いクオリティ緻密な空間レイアウトは、まるでモダンアート系の美術館のようだ。

会場は全6フロアで、ビジュアルデザインプロダクトデザインスペースデザインファッションデザインと専攻ごとにスペースが分けられている。展示作品もポスターからイラスト、写真、商品パッケージ、家具、家電・乗物、建築模型まで実に多彩だ。当日は校内特設ステージで、ファッションショーも行われた。

「完成した作品に目を向けがちですが、本当に見てほしいのは、学生が世の中をどう見て、どのような問題に気づいたのか、それを乗り越えるために何に挑んだのか……。その問題意識に共感してほしいのです。例えば、プロダクトデザインであれば、作品を通して、社会への問題提起をすることも重要な目的になります」

桑沢デザイン研究所の昼間部では、3年間の学びの課程で、デザインの基本となる課題発見→仮説立案→提案・発信→検証のサイクルを繰り返す

そのベースとなるのが、1年次の「基礎造形」「基礎デザイン」の授業だ。

デザインとは、いわば課題に対する最適解を探す取り組み」と本田先生。そこで、たくさんの答えを出せれば、最適解に近づく可能性が高まる。そのための体力を鍛えるのがこれらの基礎科目だという。

「やはり手を動かしながら考えることが重要です。実際につくってみることで、素材が折れたり、接着できなかったり、いろいろなことが起こります。一度、完成まで仕上げることで、実現可能性や作業工数もわかります。

ここでたくさんの答えを生み出す訓練をすることで、まだこの世界にない課題解決の手法を生み出せるようになるのです」

持続可能な社会をつくるデザインが求められる時代

卒業生作品展では、「エコデザイン」「エコマテリアル」といった言葉も見かけた。本田先生によれば、これからのデザインには、環境への配慮も不可欠だという。持続可能な社会をつくるために、デザイナーが担う役割もますます大きくなっている。

「新しい製品やサービスを創出して、人間らしく豊かな生活環境を生み出すのがデザインの役目ならば、その舞台を『100億人が乗る宇宙船地球号』と捉え、その乗組員として解決策を考える時代だといえます。

 

今後は環境に配慮した素材の検討、SDGsなどを意識したアイデアなどがデザインにも求められます。桑沢デザイン研究所でもこうした分野を詳しく学ぶことができますよ」

卒業生作品展「桑沢2023」は、後日、Web上でVR公開される予定だ。すでに昨年の作品も公開されているので、チェックしてみるといいだろう。作品展のWebサイトでは、担当学生による各作品の詳しい説明も掲載されている。また同サイトでは、今年度の学内説明会イベントの予定なども掲載されている。

卒業生作品展「桑沢2023」
詳細・オンライン展示(Web・VR)公開中

「デザイナーに求められるのが、『観察する力』であれば、桑沢デザイン研究所がある東京・渋谷は、最高の舞台だといえます。常に最先端の人やモノが溢れ、世界的名作と呼ばれる作品とリアルに出会うチャンスもあります。日本のカルチャーの中心である渋谷で3年間学び、観察力を鍛えながら、デザインで未来を変える挑戦をしてほしいと思います」

専門学校 桑沢デザイン研究所
■総合デザイン科 昼間部3年制
■専攻デザイン科 夜間部2年制

専門学校 桑沢デザイン研究所
〒150-0041
東京都渋谷区神南1丁目4-17
TEL 03-3463-2431

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