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調理師免許の取得は、調理業界で活躍するためのゴールではない。大事なのは、現場に出たときにどれだけ即戦力となって活躍できるかだ。
そのためには専門学校で学生のうちにどのような体験をしておくべきなのだろうか。
調理分野の専門学校を選ぶ際のポイントについて、東京調理製菓専門学校の木下圭介先生にお話を伺った。
専門学校で実践的に取り組んだ時間が現場での経験値になる
衛生管理まで含めたひとつのショーとして楽しんでもらう
―まずは、調理・飲食業界の現状についてお聞かせください。
コロナ禍が2年以上続いている状況のなかで、企業や店舗によって明暗が分かれているように思います。
テイクアウトなどにうまく舵を切った飲食店や時間を有効活用して新メニュー開発に取り組んだお店、空き店舗が生まれたことをチャンスと見て規模を拡大させた企業・店舗など、積極的に動いたところと何も策を打てなかったところの間に差が出た印象があります。
特に「衛生面」について、求められるハードルが高くなってきています。新型コロナウィルス感染症対策などによって利用客の衛生への意識が高まっており、これまで以上に「安心感」を提供する必要があるのです。
例えば、オープンキッチンの飲食店であれば、あえて消毒している風景まで見てもらうなど、衛生管理も含めてひとつのショーとして見せて、安心して食事を楽しんでもらうようなアプローチが広がっています。
就職状況については、2022年度から少しずつ求人数が復活してきています。観光産業と結びつくホテルについてはまだ完全復調とはいきませんが、今年は求人を出す企業も増えており、昨年と比べると状況が好転していることは確かです。
―調理の専門学校には1年制と2年制の学科がありますが、2年制にはどのような利点がありますか?
東京調理製菓専門学校のケースで言えば、1年制の調理技術科と2年制の高度調理技術科では、1年目は同じことを学びます。西洋料理、日本料理、中国料理の基礎をバランスよく学び、幅広い技術・知識を習得するのが1年目です。
1年制は現場でいち早く活躍したい方におすすめの最短ルートです。
2年制では、これに加えて語学学習や希望者は、海外研修留学などを経験することで、実践力や人間力を養っていきます。例えば、本校の2年制学科のカリキュラムに組み込まれている「職場体験実習」は、約4週間、飲食店やホテル、結婚式場など、学生自身が学びたい場所で就業体験を積む授業です。
就職を考えるにあたって、自分がレストランやホテル、集団調理などのうちどこの現場に向いているかというのは実際に経験してみないとわかりません。調理業界では就職前後でイメージのギャップを感じて離職してしまう人も多いので、将来の道に迷っている人こそ、こうした実習を経験できる2年制の学科で学んでほしいと思います。
現場で活躍できるように 学校選びにはこだわってほしい
―調理分野では、どのようなタイプの学生が伸びるでしょうか。
素直で明るく、挨拶のできる子が確実に伸びます。私が京都の日本料理店で働いていた10年前からこれは変わらない条件です。現場は常にコミュニケーションをとって作業をする場なので、1回言った指示を素直に聞き取ることや、元気に返事をすることは何よりも求められるのです。
高校までで多くの人と積極的に関わってきた人は、お客さまや職場の人間と円滑なコミュニケーションが取れるようになると思います。
―調理分野の専門学校を選ぶ際のポイントがあればお聞かせください。
施設や立地といった外的な要因よりも、教員やカリキュラム、学習や就職のサポート制度などの中身を見て、「自分が学びたい環境であるか」を総合的に判断してほしいと思っています。
例えば、実習ひとつとっても、教員ひとりに対して学生何人で実習をしているのか、それは週に何時間あるのか、といった質や量を見比べることが大事だと思います。ぜひ気になる学校があればオープンキャンパスに足を運び、教員や学生に直接話を聞いてみてください。コロナ禍において、どのようにして実習時間の確保に努めてきたのか、を聞くのもいいでしょう。
授業以外でのサポートの有無も大事です。本校ではフリートレーニング制度があり、学生が料理コンクールに出場する際の費用をすべて学校で負担しています。そして、準備に向けた指導についても、授業時間だけでなく空き時間なども使って教員が積極的にサポートしています。
学生時代にこうした実践的な経験を積むことで、自信につながっていきます。このようなやる気のある学生に対してのサポート制度があるかどうかもぜひチェックしてほしいですね。
―最後に、調理分野を目指す高校生にメッセージをお願いします。
この分野は長年、離職率が高く、本来的には厳しい業界であると思います。
そうした場所にいきなり飛び込むのは勇気がいりますが、専門学校で実践経験を積み、とにかく調理の技術を身につけるために頑張った時間は、必ず現場で活きる経験値になります。
だからこそ、専門学校選びには強くこだわってほしいです。ぜひ学校に直接足を運んで、自分の目で確かめて決めてください。「楽しくて充実した学校生活だった」と思ってもらいたいですし、私たちはそうした環境を用意してみなさんをお待ちしています。
調理分野のポイント
1 就職先に迷っている人ほど、職場体験を積める学校へ
調理分野の就職先は多様。就職後に後悔することがないよう、在学中に職場体験を積みたい。
2 「自分が学びたい環境」であるか
施設や家からの近さなどの外的な要因だけではなく、中身を見て進学先を考えることが大切。
3 実習の量や質にも注目
オープンキャンパスや学校説明会へ足を運んで学生に話を聞いてみよう
この質問に答えてくれた人
正規の授業以外でも熱心にコンクールへ向けた指導を行うなど、会話の端々から学生に少しでもスキルを身につけてもらおうと一生懸命な同校の取り組み姿勢が伝わってきた。
東京都新宿区西新宿7-11-11
TEL 03-3363-9181
https://www.tokyocook.ac.jp
→『進路の広場』で東京調理製菓専門学校を見る
東京調理製菓専門学校
木下 圭介 先生
京都の「京料理 さつき」で調理の技術を磨き、本学院に入職。
学生目線に立ち、より分かりやすい指導を心がけ、学生からの信頼も厚い。
現在は調理実習部課長として育成に励んでいる。