東京におけるデザイン系専門学校の代名詞ともいえる「桑沢デザイン研究所」では、毎年2月に「卒業生作品展」を開催している。
展示されているのは、グラフィックデザインからイラスト、写真、パッケージ、プロダクトデザイン、建築模型まで多種多様。校内でファッションショーも行われる。
2022年2月25〜27日の3日間で行われた熱気溢れる作品展の様子をレポートしよう。
学生たちが生きる今が 作品展から見えてくる
都会的なテクノミュージックが静かに流れる展示室に足を踏み入れると白を基調にしたスタイリッシュな空間に、個性豊かなデザイン作品が並んでいた。
作品たちの高いクオリティと緻密な空間レイアウトは、モダンアート系美術館の展示といっても誰も疑わないだろう。
ここは東京・渋谷にある桑沢デザイン研究所。当日は、「卒業生作品展 桑沢2022」が開催されていた。
「桑沢デザイン研究所の卒業生作品展は、ゼミごとにテーマを決め、各学生が独自の作品づくりに取り組みます。
テーマといっても『希望』『美しさ』『発見』など、抽象的な概念中心なので、学生は自らテーマを追究し、作品の方向性を考えることになります。作品をゼロから創造するプロセスを経て、やっと卒業の称号が与えられます。
卒業生作品展は、〝桑沢の学び〞の集大成なのです」
そう語るのは、同校造形分野責任者の小関潤先生だ。自らも卒業生である先生の案内で、全6フロアの展示室をまわっていく。
ビジュアルデザイン、プロダクトデザイン、スペースデザイン、ファッションデザインと専攻ごとにスペースが分けられ、展示された作品もポスターからイラスト、写真、パッケージ、プロダクト、建築模型まで実に多様だ。
当日は、校内の特設ステージで、ファッションデザイン専攻の学生によるファッションショーも行われた。
「作品づくりにおいて問われるのは、その学生が世の中をどう見て、どう捉えているのか……です。
過去の名作と呼ばれるデザインやアート作品には、必ず時代背景が反映されています。いかにしてそのデザインが生まれたのか、どういう着眼点だったのか……と考え抜いた経験値が学生の作品から見えてきます。
桑沢デザイン研究所が、デザイン史や文化史など、理論系・教養系の科目に力を入れている理由はここにあります」
会場には、高校生や在学生とその友人だけでなく、社会人の姿も見かけた。その正体は、デザイン業界や広告業界などで働くOB・OGたち。卒業生作品展は、桑沢デザイン研究所の同窓会的な役割も果たしているという。
「今回はコロナ禍ということで入場制限をしましたが、例年は卒業生作品展の3日間トータルで、4000人くらいの来場者が訪れます。
採用目的で来場するデザイン業界の企業の方もたくさんいます。実際に卒業生作品展をきっかけに就職先を決める学生も少なくないですよ」
進路支援課の高橋清司課長はそう言って笑顔を見せる。
デザイン業界は、まさに実力の世界。一般的な就職活動をするのもいいが、卒業作品に全力を注ぐことで、より高く評価されるというのは、この業界ならではの面白さだろう。
展示を見ていると時折、作品を手がけた学生のポートフォリオが置いてある。まさに、1年次のデッサンから始まるその学生の3年間の学びの軌跡だ。
桑沢デザイン研究所への進学を考えている高校生がこれを見れば、自分の成長の可能性をイメージすることができるはずだ。
「『卒業生作品展 桑沢2022』は、後日、Web上でVR公開する予定です。すでに昨年の作品もVRで見ることができるので、ぜひチェックしてみてください」
作品展のWebサイトでは、担当学生による各作品の詳しい説明も掲載されている(2022年卒展の様子はコチラ)。
ここで興味を持った人は、桑沢デザイン研究所のWebサイトで、今年度の学内説明会イベントを調べておくといいだろう。
造形分野責任者の小関潤先生(左)と進路支援課の高橋清司課長(右)