【ヒコ・みづのジュエリーカレッジ】AI時代だからこそ求められる「人の手仕事」 ストーリーのあるモノづくりが価値を生む。

2022年2月18日〜21日に水野学園青山校舎で開催された【卒祭】は、例年の卒業制作展と学園祭が融合した新しいイベントだ。

ジュエリー、ウォッチ、シューズ、バッグ、自転車の卒業制作作品の展示や、学生有志によるマーケットなども開かれた。

水野学園酒匂博教育部長専門学校ヒコ・みづのジュエリーカレッジ大友宏幸学科長飯塚ひろ子学科長にお話を聞きながら、卒祭に表れる水野学園の教育の真髄に迫る。

学生たちの学びの集大成【卒祭】をリポート!

国内で唯一、ここでしか学べない希少性の高い分野

AI化や機械化は、私たちに何をもたらしたのだろうか―。

いつでもどこでも好きなものが安価で手に入る時代になった。その一方で、「値は張るけど一生大事にしたいもの」の価値にも注目が集まっている。

どれだけAIが台頭しても、手間暇かけて人が手作業でつくりあげたモノの価値は、いつの時代も変わらないのだろうか。

「人がジュエリーや時計といった日常を彩るアイテムを求め続ける限り、若い人たちの手仕事モノづくりへの興味はなくならないと思います。

水野学園が目指すのは、そうした方々の意欲に応え、未来を切り拓いてあげること。『国内で唯一、ここでしか学べない』というような希少性の高い分野に絞った学びを提供し、あくまでも〝小さな学校〞づくりを大切にしています」

そう語るのは、学校法人水野学園酒匂博教育部長だ。水野学園は、1966年にその前身である「ヒコ・みづの宝石デザイン学校」が設立されて以来、50年以上にわたって「手仕事」に関わる分野の教育に力を入れている。

その専門分野は、ジュエリーに始まり、時計、靴、バッグ、自転車、すし・和食、そして2023年に開校予定の「日本さかな専門学校」(認可手続中)が取り組む魚まで。

徹底した少人数教育で学生一人ひとりの個性を重視し、ニッチな世界に焦点を当てた学校づくりを大切にする。あるジャンルに特化したモノづくりの専門教育は、その就職先となる業界からの信頼も厚い。


学校法人 水野学園 酒匂 博 教育部長

「特に大事にしているのが、実習の時間を多く設けることです。座学の講義ももちろんありますが、実際に手を動かして工具の使い方を学んだり、モノをつくったりする時間が全体の9割を占めます。

卒業後、手作業に直接関わる仕事だけではなく販売や営業に携わる方もいますが、肌で身につけた知識や技術は、業界でどんな仕事に就いても必ず活かされると確信しています」

 

作品を展示・販売する卒祭は 「マーケット」を意識する機会

取材当日に訪れた水野学園の【卒祭】は、実践教育の成果が発揮される晴れの舞台だ。

実はこの卒祭は、例年、別々に行っていた「卒業制作展」と「学園祭」を同時開催する新しい試み。最終学年の学生による卒業制作作品だけでなく、1年生や2年生の作品も展示されている。

「これまで卒業制作展と銘打っていたイベントは、学生たちのファイナルピースを展示するもので、来てくださるお客さまはその保護者の方が中心でした。会場も、学校の校舎ではなく外部のギャラリーホールを借りていたのです。

今回の卒祭ではあえて1年生や2年生も参加できるような形にし、学生たちが普段学んでいるこの校舎に舞台を移しました。その結果、全学年全コースの保護者の方、先生方、業界関係者の方が訪れてくださると期待しています」

展示されている作品のなかには、ジュエリーや靴、時計の修理品など、「販売」されているものも含む。

他コースの学生がつくった作品を見ることで、それぞれが刺激を受け、自分の専門ジャンルに収まらない幅広い視点を身につけることもできる。

「こうしてさまざまなジャンルの商品が一様に並んだときに、横にある作品と違う見せ方、違う特徴のあるモノを売らなければ、興味を持ってもらうことはできないでしょう。

我々の実践教育のなかでも特に大切にしているのが『マーケット=市場』をどう捉えるかという視点です。学園祭としての和気あいあいとした雰囲気がある一方で、お客さまがどういう反応をするかを見て、直接話して、売り方を学ぶ、貴重な実践の機会になると思っています」


Shoe & Bag

Jewelry

 

あらゆる時計に精通した 時計修理のプロを育成

卒祭に込められた熱い想いを聞いた上で、早速、会場内を散策していると、「ヴィンテージウォッチ」を取り扱う販売スペースが目に飛び込んできた。

機械式時計やクオーツ式時計など、並んでいるさまざまな時計たちは、すべて「ウォッチメーカーコース」の学生たちが修理した品々だ。メンテナンスが必要な不動品を自分たちで買ってきて、オーバーホール(清掃、修理、部品交換などの処置を行うことで、新品時の性能状態まで戻すこと)した上で販売している。

カリキュラムのなかで最も大きな比率を占める時計修理技術の学びが、直接生かされる場面である。

時計業界では、年々、技術者の高齢化絶対数の不足が課題に上がっている。ウォッチコース学科長である大友宏幸先生は、「名品の修理をできる人材は、ますます貴重になってきている」と語る。

「一概に『時計』と言っても、そこには手巻き、自動巻き、クオーツ、クロノグラフなど多様な種類があり、時計の症状やオーバーホールのアプローチも多岐に渡ります。

時計修理の現場では、不具合を起こした時計に対して、医者のようにどこが悪いか診断し、修理を施していきます。どんな症状でも診断できるようになるには、とにかくさまざまな時計に触り、経験を積むことが大事です。

ウォッチメーカーマスターコースでは、3年間でみっちりと基礎から技術や知識を修得。時計が動く緻密な仕組みと長く性能を維持するためのメンテナンス技術を一から学び、マスターしていきます」

大友 宏幸 学科長

大友先生はまた、一流の時計技術者になるためには、「技術力だけでは足りない」とも付け加える。大事なのは、お客さまの想いをいかに汲み取ることができるか。

一生大事にしたいと思うような時計を持っている方は、動かなくなった際に完璧な修理を頼みたいのはもちろん、専門家である時計技術者との信頼関係を通じて、自分の満足がいくアイテムを末長く使いたいと思っています。

だから時計技術者には、完成品のクオリティの高さだけではなく、お客さまの想いに寄り添うコミュニケーション力も必要なのです。今回の卒祭では、学生たちが接客の体験をすることもできます。学生が修理した時計について説明し、お客さまの時計に対する想いを聞く、その交流の機会にもなっています」

初心者でも一から丁寧に学ぶことができ、実践を重ねるうちにどんどん技術力が向上していく。この教育は業界からも定評があり、一度時計修理業界で働いた人が入学するケースもあるという。

それぞれの分野のプロが生まれる背景には、徹底した「基本」の修得過程があるのだ。


Watch

 

モノづくりに求めるのは 完璧さよりもストーリー

「コロナ禍でもハイブランドのジュエリーやシューズ、バッグといったアイテムは売れ行きが伸びていると聞きます。

これには旅行に行くことが難しくなったこともおそらく影響していて、自分へのご褒美に身近で満足度の高いものとして、そうしたラグジュアリーなアイテムを求める人が増えているのです」

学生たちの個性あふれる作品たちを見ながらそう紹介してくれたのは、ジュエリーコースシューズ&バッグコース学科長である飯塚ひろ子先生

環境問題への意識やミニマリズム的な考え方が浸透してきていることもあり、「すごくいいモノを長く大事に使いたい」と思う人が増えているのは納得できる流れだ。

ところで、「すごくいいモノ」とはどのようにしてつくられるのだろうか。先生方のお話を聞いていると、水野学園が大事にする「ストーリー」という言葉にヒントがあった。


飯塚 ひろ子 学科長

「まるで機械がつくったように隙がない靴やバッグは、いいモノではあるかもしれませんが、個性が浮かび上がってきません。

私たちが重要視しているのは、そうした『完璧さ』よりも、一人ひとり異なるつくり手による『想い』の部分です。学生たちは何を表現したくて、そのためにどういう素材を使ったのか、という作品に込められた『ストーリー』や『コンセプト』といったものを私たちは大事にしているのです」

卒祭で展示されている作品には、その横にQRコードが付いている。これを読み込むと、製作に至るまでの想い、製作のプロセス、着用した際の様子など、「作品の背景」まで見られるようになっているという。

これには、目の前に展示されているモノだけではなく、裏に隠された学生たちの想いも含めて見てもらたいという願いがある。

「美しいデザインや高級なアイテムほど、濃密なストーリーがある。逆に言えば、ストーリーがあるモノにこそ、人は感動し、お金を払いたくなるのです」

 


QRコードリンク先はコチラ

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学生たちが日々学び、作業する校舎も含めて鑑賞してほしい

学生たちの好きなものや、「こういうアイテムがあればいいのに」という純粋な想いは、作品として形になることで強く輝きを放つ。美術館の展覧会のように美しく並べられた作品の数々に、思わず時間を忘れて見とれてしまう。

と、ここでふと気づいたのが、作品が置かれた台の下や部屋の奥のカーテン越しに見える工具などの存在。酒匂教育部長にその狙いを聞いた。

「もちろん一つひとつのユニークな作品も楽しんでもらいたいのですが、校舎やそこにいる学生、教員も含めて、『水野学園』という学校全部を感じとれるような卒祭にできればと構想しました。

普段学生たちが学んでいる教室は、作業場でもあるので工具や部品などによって現場感があふれています。そうした環境も含めて見にきてほしいと思ったのです」

作品のよさは、その背景にこそ現れる。学生がどのような場所で学び、作品をつくり上げたのか。水野学園の卒祭もまた、そのストーリーを感じ取れるスタイルになっているのだ。


普段学生たちが作業に取り組んでいる作業台の上に展示された作品たち

最後に飯塚学科長から、ジュエリーやシューズ、バッグ業界への就職を目指す高校生へメッセージをもらった。

モノづくりが好きな人や絵を描くのが好きという人は確実に向いていると思います。

その一方で、不器用だからと悩んでいる方も、好奇心旺盛でアイデアを出すのが好きだったり、人と関わることが好きだったり、人々の生活を観察していいものを見出せる感度のある方は、その人なりのフィールドで活躍できる可能性があります。

学生たちのなかには、十分知識や技術を身につけた上で、販売職営業職に就きたいという人も多くいます。

水野学園は、必ずしも技術者だけを養成する学校ではありません。産学協同の授業などによって、商品開発やデザイン提案、企業へのプレゼンテーションを経験できる機会も多く用意しているので、それぞれの希望に応じた出口に向かって、学生とともに学びを深めていければと思っています」

専門学校 ヒコ・みづのジュエリーカレッジ
ジュエリーコース 2~4年制
ウォッチコース  3年制
シューズ&バッグコース 3年制

オンラインや来校型の体験入学、学校説明会を毎月開催。
詳細日程は学校HPをご覧ください。

専門学校 ヒコ・みづのジュエリーカレッジ
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前5-29-2
TEL 03-3499-0300

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