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文部科学省が2021年12月に発表した『学校基本調査』によると、2021年に専門学校の美容科に入学した学生数は、14年ぶりに2万人の大台を回復した。
その背景には、コロナ禍による受験生の進路選択に対する意識の変化があったのではないかと学校法人国際文化学園の桑田篤志所長は分析する。
理容・美容を学ぶ上での専門学校の役割、卒業後のキャリア、受験生の傾向について桑田所長に話を伺った。
まずは基本を習得し、専門に特化したスキルを身につけるのが理想的
コロナ禍で将来を見つめ直し
専門学校を選択する学生が増加傾向
―まず、理容・美容業界の現状についてお聞かせください。
コロナ禍においても美容院は、営業時間の制限を受けることは少なく、業界としてはかなり安定しています。おかげで、理容・美容分野の求人は堅調で、理容師・美容師の国家資格を取得すれば、就職に困ることはほとんどありません。
そこで、理容・美容系専門学校の役割は、この業界で長く活躍できる人材を育てることだと考えています。
アシスタントを経て1人前のプロになるまで、この業界に定着するには、現場で必要とされるスキルを専門学校でどれだけ学んできたかが問われます。学生時代はつらくても指導が厳しい専門学校を選ぶと現場に出た後で苦労しないでしょう。
- ■美容理容の主な仕事分野
―理容・美容業界を目指す最近の高校生の傾向を教えてください。
コロナ禍で「おうち時間」が増えた影響もあってか、美容系に興味がある高校生が、InstagramやYouTubeの動画で情報を集め、独学でヘアアレンジやメイクの練習を積んだ上で入学してくる傾向を強く感じます。
総合型選抜の面接で、時間をかけてつくった自分の作品をスライドを使ってみごとにプレゼンする高校生も増えています。少数ですが、オンライン授業が長引く大学から思い切って理美容分野に進路変更をしてくる学生もいますね。
―理容・美容系専門学校の役割についてお聞かせください。
専門学校は「トータルビューティー」を学ぶ場であるべきだと考えています。
高校生の中には、ネイルやまつエク(まつ毛エクステ)だけをやりたい!と近道を目指す人もいます。気持ちはわかりますが、これらの仕事をやるにしても無免許では厳しく、美容師の国家資格が強い味方になります。まずは、理容・美容の技術をしっかり身につけ、できることの幅を広げていくとよいでしょう。
人を美しく装う「美容」分野においては、人それぞれのファッションの全体像を理解することが不可欠です。私が広報を担当する国際文化理容美容専門学校では、髪型+素肌+服装=トータルファッションと考えているのですが、この大切さをぜひ知ってほしい。まつエクをやりたい場合でも、その人の全身コーデに合う提案をできるようになれば、相手の満足度は格段に高まるでしょう。
―理容・美容系専門学校の授業についてお聞かせください。
本校では、理容師・美容師免許(国家資格)取得を前提に、ヘアデザインの技術と理論からメイク、ネイル、エステ、アップスタイル、ウエディングまで、美容に関する幅広い分野を学ぶカリキュラムを用意しています。
国家試験には関係ない「着付」なども必修授業として加え、一般的な専門学校の約1・3倍を超える約2100時間の授業を2年間で行います。
また、人気のエステ分野では業界で圧倒的に評価されている、CIDESCO(シデスコ)という認定資格がありますが、これを取得できる専門学校は本校を含めてひと握りです。このように、学校見学の際には、授業で何をどのレベルで学べるかを確認することが大切です。
就職後のミスマッチを防ぐサポートにも注目
―美容師は、就職後どのようにステップアップしていけますか?
サロンでは、数年間のアシスタントを経てスタイリストになり、やがて店長になるキャリアパスが王道です。ただし、店舗によってそのスピードは違い、相性や向き不向きも関係します。
実際、有名店では役割分担が明確なことも多く、希望の働き方ができずに転職する人もいます。小規模店舗なら希望の業務を担当できるチャンスが多いからです。一方で、最初から具体的な仕事内容にはこだわらず、給与や経営状況の安定感を重視する人もいます。
こうした多くの物差しの存在を認識した上で、就職後のミスマッチを防ぐのが、各校の就職支援プログラムやクラス担任制度です。
特に、学生にとって身近な存在としてクラス担任を配置する学校は多くありますが、例えば本校では、1年次が1クラスに3名、2年次が1クラスに2名の専任教員による複数担任制度を採用しています。これなら、学生一人ひとりのレベルに応じて柔軟に対応することができます。
―最後に、高校生へのメッセージをお願いします。
理容・美容分野においては、技術面ばかりが注目されがちですが、もちろん国家試験にも筆記試験はあるので、高校での勉強にも力を入れて取り組んでください。
最初は「好き」「楽しそう」という気持ちから理容・美容業界を志しても、それだけでは続かない厳しさがあるのも確かです。本気で勉強するからこそ壁にもぶつかり、その先にようやく手応えやプロとしての楽しさが見えてくるものです。ぜひ業界で長く働いて、その境地までたどり着いてほしいですね。
理容・美容分野のポイント
1 「国家資格+α」を学べる環境
国家資格取得をゴールとせず、今の美容現場で求められるスキルを身につけることが重要。
2 授業で学べる分野をチェック
カラーリング、メイク、ネイル、エステ、着付け、ウエディングなど、ヘアデザインをベースに自分の興味のある分野を学べる授業があるか。
3 適性に応じた就職支援体制
一人ひとりの適性や性格に合った就職先を客観的にアドバイスしてくれる支援体制があるか。
この質問に答えてくれた人
お話で最も印象に残ったのは、人を美しく装う全体像、「トータルビューティー」を知ることがいかに大切かということ。
髪型+素肌+服装をすべて意識した提案ができる人材こそが業界に定着できるのだ。
国際文化理容美容専門学校
渋谷校
東京都渋谷区神泉町2-2
TEL 03-3462-1447
国分寺校
東京都国分寺市南町3-22-14
TEL 042-321-0002
国際文化教育総合研究所
桑田 篤志 所長
専門学校で学生指導を行ってきた経験を活かし高校教員からの依頼による進路全般講演、専門学校講演、教員研修会などを年間50校以上で行っている。