エンタメ業界を牽引するコンテンツを生み出し続けているCG・アニメ分野。アニメ作品でのCG活用も進んでおり、両者の垣根はなくなりつつあるという。技術革新も加速するこの業界で働くためには、どのようなスキルを身につける必要があるのだろうか。
日本電子専門学校の五十嵐淳之先生に、業界の動向や専門学校選びのポイントについて聞いた。
多様化・複雑化するCG・アニメ制作の最新技術を幅広く学べる学校とは?
アニメ制作においても存在感が増すCG技術
―まず、CG・アニメ業界の現状についてお聞かせください。
アニメ業界は、テレビや映画、動画配信サービスなどで、年間400を超えるタイトルが制作されており、活況が続いています。制作サイドの話としては、アニメ作品でCGの活用が進んでおり、アニメ制作とCG制作の垣根がなくなりつつあります。
CG制作の最新動向としては、ますます多様化・複雑化が進んでいます。グラフィックツールは劇的に便利になっていますが、それを使いこなす高度なテクニックも必要になっています。3DCGの制作ソフトとしては、Maya、Houdiniなどが有名で、日本電子専門学校でもこうしたツールを複数組み合わせて作品をつくる技術などを授業で扱っています。
一方、アニメ制作については、高い技術より人柄やコミュニケーション力を重視する傾向が強いです。会社で人材を育てる意識も強く、新卒でも有名なアニメ制作会社に就職できる可能性も大いにあります。待遇も大幅に改善されてきています。
―専門学校では、CG・アニメ制作についてどのように学んでいくのでしょう?
映画やドラマ、CMといった映像制作の現場では、3DCGと実写映像を合成する「VFX」という視覚効果技術が使用されています。本校のCG3学科のうち「CG映像制作科」では、CG制作の技術と実写映像を撮影するプロセスを学び、最終的にそのふたつを合成してひとつの映像作品をつくることを目指しています。
一方、CGを軸として、ゲームやアニメといったその業界に特化した技術を磨くのが「コンピュータグラフィックス科」の位置付けです。「コンピュータグラフィックス研究科」では、3年間でCGプログラミングを用いたよりテクニカルなCG制作を学びます。いずれもCG制作の全工程を学び、適性に合わせて専門技術を磨いていきます。
一方、アニメ業界は、液晶ペンタブレットを使った作画が一気に普及し、デジタル化の過渡期にあります。ただ、まだまだ手描きで作画を行う会社も多く、そのため就職先の幅を広げるには、アナログからデジタル技術までひと通り学ぶことが重要です。
また、アニメの仕事は工程ごとに職種が分かれています。キャラクターを描く作画の仕事から、色を塗る仕上げ、背景を専門に描く背景美術、それらの素材を合成して映像化する撮影の仕事まで実に多様です。本校ではそれぞれの工程を体系的に学習しながら、身につけた専門技術と適性をもとに、自分が向いていると思う職種への就職を目指すことができます。
―専門学校を選ぶ際には、どのような点が重要になりますか?
映像やアニメに興味があっても、入学時はCG制作のソフトに触れたことがない方や、絵を描いた経験がない初心者が大半です。ですから、どれだけ丁寧に基礎から教えて理解してもらえるかが、専門学校の力量にかかっていると思います。
例えば、本校では業界に精通し経験豊富な教員たちが、毎年「オリジナル教材」を作成して指導を行っています。作成された教科書やデジタル教材は、初心者でもつまずくことがないよう制作技術を効率的に学ぶことができます。企業からのアドバイスや、業界で働きながら非常勤講師として学校で教えている教員に最新動向を聞きながら、常に改良・刷新して業界のニーズに応えています。現場でクリエイターとして活躍していた教員も多く、技術+αの生きた学びを提供しています。
また、専門学校選びにおいては就職実績を必ずチェックしておきましょう。企業とのつながりが強い学校だと、講演会や特別授業で直接、現場で使える技術を学べる機会を得られるだけでなく、学校が主催する合同説明会で企業の方と交流の機会を持つこともできるでしょう。
絵を描くのが苦手でもクリエイターを目指せる!
―CG・アニメ制作の道を目指すうえで適性はありますか?
CG・アニメ制作にはさまざまな工程があります。「絵が下手だからアニメの仕事に就けない」ということはありません。学校で幅広い工程を経験しながら、自分の適性を見極めるのがいいでしょう。「文系には向いていないのでは?」という質問もよく受けますが、特に文系・理系は問いません。デジタルツールを前向きに使いこなす意識は必要になるでしょう。
―卒業後に想定される進路について教えてください。
卒業後の進路は、「ジェネラリスト」として幅広い工程を担う人材になるか、「スペシャリスト」として特定の工程を極めていくかの2択になります。
CG・アニメとも基本的には人材が足りていないので、憧れの会社で働けるチャンスはあります。ただし、CG制作の現場は、どんどん技術が高度化しており、より専門的な技術を身につけている人が採用される傾向もあります。
―最後に、アニメ・CG業界を目指す高校生にメッセージを!
スタートラインは「興味」からです。アニメやゲーム、映画が「好き」なら幅広い職種から、必ず自分に向いている仕事を探せる業界だと思います。
デジタル化の影響で、アニメ・CG制作の現場はどんどん変化しています。今後は新しいツールをどんどん受け入れて、楽しめる人が活躍していくのではないでしょうか。
CG・アニメ分野のポイント
1 教員や教材の「質」をチェック
業界の動向に沿ったオリジナル教材など、初心者を手厚くサポートする「教え方」に注目。
2 関連業界に卒業生を多く送り出している学校か
自分が働きたい業界や企業に先輩がいると心強い。就職実績はチェックしておきたい。
3 産学連携授業などの企業協力が豊富かどうか
企業との連携授業などが充実している学校は、就職後に即戦力となる実践的スキルを身につけられる。
この質問に答えてくれた人

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クリエイター教育部長
五十嵐淳之先生
千葉大学大学院教育学研究科修了後、同校でCGデザイン指導を担当。現在はクリエイター系の全学科を統括。