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2022年は100億円超えの興行収入を記録するアニメーション映画が3作品もあり、エンタメ業界を牽引するヒットコンテンツを生み出し続けているCG・アニメ分野。
この業界で働くためには、どのような技術を身につける必要があるのだろうか。日本電子専門学校の五十嵐淳之先生と坪井翔先生に、業界の動向や専門学校選びのポイントについて伺った。
初心者でも着実にスキルアップできる学校で
自主性を持って学ぶ
アニメ制作においても存在感が増すCG技術
―まずは、CG・アニメ業界の現状を教えてください。
坪井 特にアニメ業界は、テレビでも映画でも続々とヒット作が生まれており、好況が続いています。人材的にはコロナ禍以前から売り手市場が続いていましたが、最近は特に作画のセクションにおいてスタッフが不足している状態にあります。
五十嵐 CG技術が使われる映画やテレビ、CM業界の動向としては、CGの制作コストが上がっていることが挙げられます。ここ数年でも技術が格段に向上しているので、中途半端なクオリティでは見る人が驚かなくなってきているのです。ヒット作品をつくるには、より一層派手で、緻密な表現が求められていますね。
坪井 アニメ業界においてもCGの存在感は強くなっている傾向にありますね。『THE FIRST SLAM DUNK』や『チェンソーマン』といったヒット作品を見ていると、ひと目見ただけでは作画のカットとCGのカットの区別がつかないくらいに混在した映像になっています。
フルCGだとコストがかかってしまうので、作画とCGをうまく組み合わせながら品質も損なわない努力をしている作品が多いです。アニメとCGは切っても切り離せない関係になっています。
―CG・アニメ業界に就職するためには、どのような学びが必要なのでしょうか。
五十嵐 映画やドラマ、CMといった映像制作の現場では、3DCGと実写映像を合成する「VFX」という視覚効果技術が使用されています。
本校のCG3学科のうち「CG映像制作科」では、CG制作の技術と実写映像を撮影するプロセスを学び、最終的にそのふたつを合成してひとつの映像作品をつくることを目指します。また、CGを軸として、ゲームやアニメなどの分野に特化した技術を磨くのが本校の「コンピュータグラフィックス科」の位置付けです。
坪井 一方のアニメ業界は、液晶ペンタブレットを使ったデジタル作画が浸透している反面、まだまだ手描きで作画を行う機会もあります。そのため、就職の幅を広げるには、手描きでの作画からフルデジタルアニメまで学ぶことが重要です。アニメの花形といえば作画になりますが、アナログからデジタルの作画を中心に習得するのが2年制の「アニメーション科」です。
また、アニメ制作は工程ごとに職種が分かれています。キャラクターを動かす作画の仕事から、色を塗る仕上げという段階、背景を専門に描く背景美術、それらの素材を合成して映像化する撮影の仕事まで。
本校ではそれぞれの業務を体系的に学習しながら、身につけた専門技術と特性をもとに、自分が向いていると思う職種への就職を目指す3年制の「アニメーション研究科」を設置しています。
企業とのつながりが強いと
就職に役立つ機会が増える
―専門学校を選ぶ際には、どのような点が重要になりますか?
五十嵐 映像やアニメに興味があっても、入学時はCG制作のソフトに触れたことがない方や、絵を描いた経験がない初心者が大半です。どれだけ丁寧に基礎から教えて理解してもらえるかが、専門学校の力量にかかっていると思います。
例えば、本校では業界に精通し経験豊富な教員たちが、毎年「オリジナル教科書」を作成して指導を行っています。これは、初心者でもつまずくことがないよう、それぞれの制作技術を効率的に学ぶことができる、本校独自の学習教材です。企業からのアドバイスや、業界で働きながら非常勤講師として学校で教えている教員に最新動向を聞きながら、常に改良・刷新して業界のニーズに応えています。
現場でクリエイターとして活躍していた専任教員も多く、授業はもちろん、放課後に自主的に残って制作に励む学生にも、技術+αの生きた学びを提供しています。
坪井 専門学校選びにおいては就職実績もチェックしておくといいですね。卒業生を多数輩出していると、新入社員として入ったときに先輩がいて仕事がしやすいということも大いにあります。企業とのつながりが強い学校だと、講演会や特別授業で直接、現場で使える技術を学べる機会を得られるだけではなく、学校が主催する合同説明会で企業の方と交流の機会を持つことができます。
―どのような人がこの業界に向いていると思いますか。
五十嵐 映像やアニメを「どれだけ好きか」に尽きると思っています。「映像やアニメが好きでたまらない」という学生は、授業以外でもどんどん吸収していきます。高校の部活動と同じで、学校で部活の時間だけ練習する人よりも、家に帰ってからの「自主練」もできる人が伸びていくのです。
坪井 アニメや映像作品などは、目いっぱい見て、体感しておくことも大切です。その際に大事なのは「つくり手の視点」を持つこと。映画を見て面白いと思ったら、ただ「面白い」で終わらせず「このカッコいい映像はどうつくられているのだろう」と掘り下げてみてください。
―最後に、高校生にメッセージをお願いします。
五十嵐 「私は絵が描けないからアニメーターになれない」といった声を聞くことがありますが、「今できる/できない」で将来を考えず、「何をしたいか」を突き詰めましょう。その「好き」の原動力があれば、どんどん上達する可能性を秘めています。
(2023年2月取材)
CG・アニメ分野のポイント
1 教材の質や教員の経歴をチェック
業界の動向に沿ったオリジナル教材など、初心者を手厚くサポートする「教え方」に注目。
2 関連業界に卒業生を多く送り出している学校か
自分が働きたい業界や企業に先輩がいると心強い。就職実績はチェックしておきたい。
3 「好き」をどれだけ突き詰められるか
専門学校は、学生の「好き」という原動力に期待している。自主練を積んで、技術を磨いていこう。
この質問に答えてくれた人
アニメーション科 科長
坪井 翔 先生
本校卒業後、アニメーション制作会社にアニメーターとして就職。現場による実務経験を経て、日本電子専門学校で教鞭をとる。
東京都新宿区百人町1丁目25-4
TEL 03-3363-2985
https://www.jec.ac.jp/
→『進路の広場』で日本電子専門学校を見る
クリエイター教育 部長
アニメーション研究科 科長
五十嵐 淳之 先生
千葉大学大学院教育学研究科修了後、同校でCGデザイン指導を担当。現在はクリエイター系の全学科を統括。