桑沢デザイン研究所の卒業生作品展を訪れると、ファッションからCG、空間、プロダクトまで、あらゆるデザインの現在形が一様に見られる。特にファッションショーは卒業生作品展のハイライトだ。
ファッションデザイン分野の奥山大介先生に案内してもらった。
プロ顔負けの本格的なファッションショー
暗転したステージにスタイリッシュなテクノミュージックが鳴り響くとライトアップされたランウェイを華やかな衣装を着たモデルたちが颯爽と横切っていく―。パリか、ニューヨークか?
いや、ここは東京・渋谷の桑沢デザイン研究所である。
2025年2月、桑沢デザイン研究所で、卒業生作品展が開催された。2月21日(金)から23日(日)で行われた「桑沢2025」の会場を訪れるとファッションショーのスタートを今か今かと待つ若者たちが行列をつくっていた。建物内に入るとファッションショー会場は若者を中心とした多くの来場者で埋めつくされ、独特の浮遊感に包まれていた。
「ショート動画がいくら流行っていても現場に来なければわからない空気感があります。作品だけでなく、どんな学生たちが活躍しているのかを見るのが卒業生作品展の醍醐味ですよね」
そう語るのは、ファッションデザイン分野の奥山大介先生。当日は、自らのゼミ生たちの集大成を会場で見守っていた。
ファッションショーは、3部構成で行われた。まずは「夜間部」のアパレル商品企画。続いて、「昼間部」の眞田ゼミ、藤田ゼミの発表が続く。この両ゼミの特徴の違いこそ、桑沢のファッションショーを現場で見る醍醐味だ。
眞田ゼミは、パフォーマンスアートの要素が強く、空間全体を使ってコンセプチュアルな衣装を魅せていく。一方、藤田ゼミの学生たちは、幅広いジャンルのトレンドを形にした王道のアパレルショーケースを魅せてくれた。
「コンセプトを形にするプロセスを学べるのが眞田ゼミ、一方で藤田ゼミはそのまま業界で通用するレベルのショーを経験できます。学生たちは自分のスタイルに合うゼミを選び、仲間と一緒にファッションショーという作品を完成させます」
当日は、本館7フロア、2号館3フロアの計10フロアで、ビジュアル、プロダクト、スペース、ファッションの作品が展示された。展示作品もポスターからイラスト、写真、商品パッケージ、Webデザイン、家電や雑貨などの製品デザイン、家具、建築模型、ファッション作品まで実に多彩だ。
「桑沢の卒業生作品展の魅力は、隣接するビル2棟のコンパクトな空間で、デザインのあらゆる分野をカバーした展示を見られることです。すべてのフロアを見ると最新のデザイントレンドがわかるでしょう」
桑沢デザイン研究所の昼間部では、3年間の学びの課程で、デザインの基本となる課題発見→仮説立案→提案・発信→検証のサイクルを繰り返す。そのベースとなるのが、1年次の「基礎造形」「基礎デザイン」の授業だ。ここで実際に手を動かしながら、素材や造形と向き合い、デザインの基礎を学んでいく。
その後、2年次からビジュアルデザイン、プロダクトデザイン、スペースデザイン、ファッションデザインの4専攻に分かれて、実践的な課題に取り組む。
「1年次の『基礎造形』では、まず木の塊を手にし、手に馴染む形に彫るという課題が与えられます。機能のことは一切考えずに、素材を感じ、その可能性を模索します。すべての1年生が等しくこの授業を受けます。ひたすらデッサンをするような課題もあります。
そして、2年次から専攻ごとの学びを深めていきます。ファッションデザイン専攻であれば、デザインワーク、パターン・縫製、服飾史のリサーチなどに取り組みます」

奥山大介先生
「服は人が着て完成するもの」 マーケティングの知識も必須
ファッションデザイン専攻の授業で、奥山先生が特に力を入れているのが、2024年に新設した「ファッションデザインリサーチ」の授業だ。センスに自信があっても自分の発想だけではすぐに限界が来る。そこで、バックボーンとなる資料を自ら調べる経験を大切にしている。
「桑沢の図書室には、本当に貴重な資料がたくさんあります。これを利用しない手はありません。授業では、有名6ブランドのデザイナーをピックアップして、学生それぞれに調べてもらいます。対象は、シャネル、イヴ・サンローラン、ディオールなど。伝説のコレクションの背景などを深く理解して、自らのデザインに昇華してほしいと考えています」
また、ファッションデザイン専攻では、デザイナーだけでなく、企画やマーケティングを担う人材の育成にも力を入れている。例えば、「ファッションビジネス」の授業では、学生たちが街に出て、リアルな店頭で市場調査を行い、消費者のニーズを探り、独自の視点で発表を行う。
「ファッションは、ファインアートとは違い、『対お客様』という要素が強いですよね。服は人が来て完成するわけです。ビジネスの視点も身につけることを目標にしています」
卒業生作品展「桑沢2025」は、後日、Web上でオンライン展示が公開される予定だ。すでに昨年の作品も公開されているので、チェックしてみるといいだろう。作品展のWebサイトでは、担当学生による各作品の詳しい説明も掲載されている。
また同サイトでは、今年度の学内説明会イベントの予定なども掲載されている。
- 卒業生作品展「桑沢2025」
- 詳細・オンライン展示公開中




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