歯科医院のほか在宅医療の仕事も増加中! 活躍の場が広がる口腔ケアの専門家・歯科衛生士

国家資格の職業である「歯科衛生士」。近年は、口腔ケアのスペシャリストとして、歯科医院での診療サポートだけでなく、在宅医療の分野にも活躍の場が広がっている。求人のニーズが多く、「売り手市場」が続いているという歯科衛生士の仕事内容や現場の最新事情について、東京歯科衛生専門学校の齊藤和臣広報部長に話を伺った。

一生続けられる国家資格の仕事。就職も「売り手市場」が継続中!

国家資格なので結婚・出産を経験した後の復職も容易

―歯科衛生士を取り巻く業界の現状についてお聞かせください。

歯科衛生士は、歯科医師の診療行為をサポートする口腔ケアのスペシャリストです。国家資格の職業で、近年ますます需要が高まっています。

歯科衛生士の役割は大きく分けて3つあります。それは「歯科診療補助」「歯科予防処置」「歯科保健指導」です。皆さんもよくご存じの歯科医院でのサポート業務に加え、歯に付着した歯垢や歯石の除去、歯への予防薬の塗布といった歯科予防処置を行うこともできます。また、患者さんに対して、歯や口腔の健康を維持するためのアドバイスを行うのも歯科衛生士の大切な仕事です。

ちなみに、歯科助手という職業もありますが、こちらは歯科医院の受付業務やカルテの整理などの雑務を担当する仕事で、診療サポートを行うことはできません。つまり、患者さんの口腔ケアを行えるのは、国家資格の歯科衛生士だけなのです。

歯科衛生士は、現在も9割以上を女性が占めています。国家資格なので、結婚や出産を経験した後に復職することが容易な点も注目すべきところでしょう。医療分野だけに歯科衛生士は、給与面も比較的高めです。月収30万円という新卒採用の募集を見かけることさえあります。

―近年、歯科衛生士の活躍の場が広がっているようですね。

歯科医院で診療をサポートするだけでなく、行政の登録訪問介護員として、在宅口腔ケアを担う仕事も増えています。まず、20〜30代は歯科医院で働き、その後、訪問サポートの仕事に移行する方が多いですね。定年退職がないことも国家資格の強みです。70代になっても訪問サポートの現場で活躍している歯科衛生士もたくさんいます。

―歯科衛生士を養成する専門学校の学びについてお聞かせください。

歯科衛生士の専門学校は、通常3年制となります。東京歯科衛生専門学校の場合、1年次は座学で歯科医療を知るための基礎的な学びに触れながら、校内で専門の医療器具を使った実習を経験します。座学では、生化学、生物学、解剖学など、幅広い教養を身につけながら、歯科衛生学の基礎を学びます。さらに、パソコンスキルやコミュニケーション、手話などを学ぶ授業もあります。

その後、2年次は高齢者歯科学、障害者歯科学など、さらに専門的な分野を学び、歯科医院や病院での臨地実習がスタートします。そして、3年次は臨地実習メインで学びながら、国家資格に特化した対策を行います。歯科衛生士の国家試験はマークシート方式で、頑張ればほとんどの受験生が合格できる内容です。

―専門学校を選ぶ際のポイントを教えてください。

国家試験の合格実績は、各専門学校でそれほど大きな差はありません。それだけに、教員の指導やキャンパスの設備などが重要になります。私は近年、校内実習設備の重要性を感じます。歯科医療の現場では、日々、最新鋭の診療機器が導入され、歯科衛生士にもそれに合わせた対応が求められます。そのため、最新の設備に触れる機会が多い学校を選ぶメリットは大きくなります。

最新の設備を導入している学校は、学費も高めの設定になります。学費は重要な検討要素ですが、安さだけを指針にするのは要注意です。学校の設備は、オープンキャンパスや模擬授業で実際に触れることができます。

実習先の充実度も注目すべきポイントです。歯科衛生士の臨地実習は、将来の就職を視野に入れたものが一般的です。つまり実習先イコール就職先となる可能性が高いのです。その点で、歯科医院だけでなく、総合病院、介護施設など幅広い実習先の選択肢がある学校は信頼できます。

―歯科衛生士を目指す際は、短大進学という選択肢もありますね。

多くの短大は、附属病院があり、そこへの就職実績が強みになります。大規模病院に勤務できることは、安心材料にはなるでしょう。ただし、専門学校と比較すると短大の学費は高めな傾向にあります。授業内容については、専門学校と大きな差はないと考えていいでしょう。

就職はますます「売り手市場」安定&高収入も期待できる

―卒業後の想定される進路についてお聞かせください。

新卒学生の9割以上は歯科医院に就職します。希望すれば、在宅ケアをメインで行う訪問介護員になる選択肢もあります。最近は美容系医院へ就職する例も増えています。いわゆる審美歯科医療の分野です。現場では、歯科衛生士がホワイトニングなどの施術を行っています。

ここ数年、歯科衛生士は「売り手市場」が続いています。その分、各校には就職先の質が問われます。できれば卒業生の就職後の定着率も調べておきたいところです。

―最後に歯科衛生士を目指す高校生と保護者にアドバイスを。

超高齢社会を迎える日本において、歯科衛生士はますますニーズの高まる専門職といえるでしょう。
一方、国家資格を取得する上で、最低限の勉強の努力も必要です。高校時代に「化学」と「漢字」を勉強しておくことをおすすめします。医療系の職種なので、元素記号などの化学の基礎知識への興味と、難解な業務用語を理解するうえで漢字の知識が必要だからです。円滑なコミュニケーション能力を磨く体験もしておいてほしいですね。

歯科衛生分野のポイント

1 最新設備に触れられる環境か

進化する歯科医療に対応するため、最新設備が整った環境で実習ができる環境が重要。入学前にオープンキャンパスや模擬授業で確かめておこう。

2 国家資格+αのスキルを学べるか

パソコンスキル、語学、手話など国家資格に加え、付加価値になるスキルが身につくかもチェック。

3 実習先のバリエーションも重要

臨地実習の受け入れ先のバリエーションも大切な要素。歯科医院だけでなく、総合病院、介護施設など自習先の選択肢が広い学校は信頼できる。

この質問に答えてくれた人

学校法人 神奈川歯科大学
東京歯科衛生専門学校
齊藤 和臣 広報部長
東海大学大学院体育学研究科修了。趣味はラクロス。歯科衛生士に限らず、医療系をはじめ、様々な分野への進路相談を数多く実施している。
取材後記
歯科衛生士は、産休・転勤などを挟んでも、雇用体系にこだわらなければ歯医者がある限り一生仕事に困らない、価値ある国家資格であることがよくわかった。歯科医師との円満な関係作りが大切な理由、歯科助手との役割の違いなど、業界の実情に触れる話題も興味深かった。
学校紹介
東京歯科衛生専門学校

東京都北区滝野川1-75-16
TEL:03-3910-7211
https://www.tdh.ac.jp

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