誰もがAIを使いこなす時代 専門知識+発想力で差をつけよう

 AI(人工知能)の進歩が社会全体を変えようとしている。AIによって、人が果たす役割も変わりつつあると言われる今、次世代を生きる若者たちはどのような知識・技術を身につけるべきなのか? 日本工学院専門学校顧問の久保田達也先生と同カレッジ長・大矢政男先生に最新動向を伺った。

AIを社会実装するためのアイデアこそ重要になる

—現在注目を集めるAI(人工知能)は高校生にも人気があります。AIを取り巻く環境と今後の可能性について教えてください。

久保田 AIによって社会や経済が大きく変わろうとしています。AIによって、なくなる職業がたくさん出てくるという話がありますが、ウソとは言い切れません。指示すれば誰でもできる単純作業は、AIが代替していくようになります。つまり、AIスピーカーに聞いて解決できることは、人間の仕事ではなくなります。これからの時代、人間はAIを使いこなす立場になる必要があるのです。

では、AIとはそもそも何なのでしょう? AIの研究は1950年代から始まっていました。2000年代に入り、インターネットが急速に発達すると前時代にはなかった膨大なデータ(ビッグデータ)が入手できるようになり、それを高速で処理するAIが新たな可能性を生み出しました。その筆頭が、メディアで話題の「機械学習」やその一分野である「深層学習(ディープラーニング)」と呼ばれる技術です。

これまでのAIは、アルゴリズムと呼ばれる計算の手順を人間が指示して動くのが基本でしたが、現在のAIは自動で課題解決の方法を模索することができます。

その代表格が深層学習で、大量のデータを入力すると、コンピュータが自動でその特徴を検出してくれます。Googleの自動翻訳機能なども深層学習を応用したもので、WEB上の大量の会話データを自動で学習し、翻訳の精度を高めています。ひと口にAIと言ってもさまざまな種類の技術があり、日々進化を続けています。

—専門学校では、AIについてどのようなことを学べるのでしょう? また、卒業後はどのような分野での活躍が期待されますか?

久保田 最近、IT系専門学校では、AIに特化した学科が増えています。私が顧問を務める日本工学院のAIシステム科では、C言語やPythonと呼ばれるプログラミング言語の知識はもちろん、ロボットやIoT(モノのインターネット)、クラウドコンピューティングなど、AIを取り巻く技術についても幅広く学ぶことができます。

ただ、AIを使いこなすには、応用するためのアイデアが必要です。そのため、ITスキルだけでなく、社会実装のための「発想法」の養成にも力を入れています。

大矢 AIの活用技術を学んだ卒業生たちは、AIエンジニア、プログラマー、システムエンジニア、データアナリスト、データマーケターなど幅広い分野で活躍できるでしょう。また、AIの知識をさらに深めたい場合は、大学に編入する選択肢もあります。

新聞などでも話題になっている通り、AI人材の不足は深刻です。最近は、IT企業だけでなく、メーカーや物流企業などでもAIに詳しい社内エンジニアを採用する動きが広がっています。しっかりスキルを身につければ、憧れの職業に就けるチャンスは大きいと思います。

AIからつながるさまざまな技術

文系も理系も関係ないAIに興味があればOK

—AIの学びはどのような人に向いているのでしょう?

久保田 あえて申し上げると文系も理系も関係ないし、プログラミング言語を完全に理解する必要もない。必要なのはアイデアです。AIをビジネスに応用する発想力がある人が向いていると思います。

大矢 いい意味で、あまり深く考えずにAIの世界に飛び込んで来てほしいですね。「ゲームオーバーになったらリセットすればいい」という感覚で、気楽に挑戦してほしいと思っています。

—AI分野の学校選びのポイントを教えてください。

久保田 学校選びの際に気をつけるべきなのが、従来の「情報処理」と「AI」の学びの違いです。情報処理は、企業や社会のニーズをITで解決する分野。社会では、「マーケットイン型」と呼ばれています。

これに対しAIの学びは、まだこの世界にない発想をビジネスに応用していく分野。社会では、「プロダクトアウト型」と呼ばれています。繰り返しになりますが、AIは社会実装するアイデアがなければ、役立てることができません。プログラミングのような専門的な技術だけでなく、「発想力」を鍛えられる環境を選ぶのが重要になるでしょう。

大矢 学校選びは、やはりオープンキャンパスに行って、学びを体験するのが一番だと思います。実習内容や教員の得意分野、設備の充実度もそこでわかるでしょう。

—AI分野に興味を持つ高校生にメッセージをお願いします!

久保田 私は5年後には、みんなが電卓を使う感覚で、AIを使いこなしている時代が来ると思っています。数学が苦手でも問題ありません。「AIって面白い」と思うなら、早い段階でAIを使いこなす方法を学んでほしいですね。

AI分野のポイント

1 AI分野の人材不足は深刻

AIエンジニアは慢性的に不足している。スキルを身につければ、チャンスが大きい業界。

2 AIは「プロダクトアウト型」

AIが生み出す技術やビジネスは、これまでにない新しい発想で社会の課題を解決していく。

3 ITの幅広い知識を学びAIを応用する方法を考える

loT、クラウドなどAIを取り巻く幅広い知識を学び、AI技術の社会実装を目指していく。

この質問に答えてくれた人

学校法人 片柳学園日本工学院専門学校
顧問 久保田 達也先生
サンリオ、東急ハンズ、電通などの企業業務を歴任し、数々のプロデュースを手がける。金沢工業大学元教授、サイバー大学元教授、一般社団法人インターネット協会評議員。通称くぼたつ。
学校法人 片柳学園日本工学院専門学校
ITカレッジ長 大矢 政男先生
東証一部上場の電気機器メーカーにて、国内外の制御システムおよび産業用ロボットの開発製造などに従事。
取材後記
AIはアイデア、発想力が大事!というお話が何度も出た今回の取材。19才までが最も柔軟な吸収力がある時期だそうで世の中に役立ちそうなアイデアを日々考えてほしいと久保田先生ご自身が開発した、「くぼたつ式思考カード」は、社会人の我々がやっても面白そうな内容だった。
学校紹介
日本工学院専門学校
東京都大田区西蒲田5-23-22
日本工学院八王子専門学校
東京都八王子市片倉町1404-1
TEL 0120-123-351
https://www.neec.ac.jp