文部科学省が2024年12月に発表した『学校基本調査』によると、2024年に専門学校の美容科に入学した学生数は4年連続で2万人を越え、業界全体の市場規模も拡大を続けている。こうした要因のひとつとして、主に若年層において男女問わず美意識が高まっていることが挙げられると、学校法人国際文化学園の桑田篤志所長は語る。理容・美容業界の現状について話を伺った。
定着率を上げるため、業界全体で給与や労働時間などの待遇を改善
スタイリストデビューが早まると同時に求められるスキル
―はじめに、理容・美容業界の現状について教えてください。
2022年のデータでは美容師の数は約57万人(前年比1.8%増)で、特に都市部では需要が高まり続けています。業界では依然として人手不足が課題となっており、定着率の上昇を目指した給与アップや待遇面の強化が重要視されています。
その一環として、大手サロンではお客さまの接遇を行うデビューまでの期間を短縮する傾向が強まっています。通例としては3年から5年の修行期間を要していたのが、1、2年でスタイリストとして活躍できる環境が整いつつあるのです。早く現場に出ることで働くやりがいや楽しさを見出してもらおうという考え方ですね。
ただ、もちろん技術や接客スキルがなければデビューはできません。そのため、社員研修に力を入れるサロンも増加しています。理容・美容といえば以前は営業時間終了後に自主練をしてスキルを磨くような慣習もありましたが、大手サロンを中心にそうした「サービス残業」は減少していて、勤務時間中に研修などを通して鍛錬の時間を与える動きが主流になりつつあります。
さらに、産休・育休手当といった福利厚生の充実や、週に2日の休みが基本になるなど、離職率低下に向けた働き方が整ってきています。
―理容・美容における最新のトレンドについても教えてください。
都市部ではインバウンド需要の拡大によって訪日外国人への接客が求められる場面が増えています。丁寧で綺麗で安い日本の理容・美容は海外からも注目度が高いのです。そのため、働き手の英語教育も重要視されています。
最近は男性の美意識が高まっており、メンズのヘアメイクも注目されています。パーソナルカラーがイエローベースかブルーベースかによって着る服やメイクのファンデーションの使い方は変わってきますが、そうしたトータルビューティーを意識したアドバイスが男女問わずお客さまに対して求められる時代になってきました。

トータルビューティーをいかに深く教えてもらえる学校か
―専門学校選びでチェックすべきポイントをお聞かせください。
理容・美容業界は、実力がなければ仕事として続けていくことが難しい世界です。そのため、幅広い技術を身につけられる学校を選ぶことが大切です。私が広報を担当する国際文化理容美容専門学校では、「髪型+素肌+服装=トータルビューティー」であると捉え、ヘアメイクからネイル、まつエク、ブライダル、着付けまで、あらゆる技術を教えます。
例えば、美容師の国家試験におけるカットでは、モデルウィッグに対して「レイヤーカット」を行います。これは最も基礎的なカット技術ですが、現場ではウルフカットやフェードカットなど、より発展したカットスキルも求められる。これを就職してから学ぶのか、在学中に修得しているのかでは大きな違いです。シャンプーやカットといった国家試験レベルのスキルを高いレベルで修得していることと、「+α」でどれだけのことを学べるかが大事なポイントなのです。
また、学びの幅広さに加え、一つひとつの内容を深く学べるかどうかもチェックすべきポイントです。それは、「授業時間数の多さ」に表れています。
例えば、本校におけるシャンプー実習。1クラスには38人の生徒がいるのですが、1年間かけて自分以外の37人全員分のシャンプーをしていくのです。人によって毛量や髪質、頭の形は違うもので、この地道な実習を2年間続けることによって、合計70人以上のサンプルを得ることができる。ドライヤーで髪を乾かす時間も含めて、十分な授業時間数を確保していないとできないことです。現場ではアシスタントがシャンプーを任されることがありますが、在学中の経験が自信となって、スキルを認めてもらえるようになります。
専門学校選びにおいては「授業料」で比較することも多いと思うのですが、その際にも授業時間数との対比を意識してほしいです。いくら安い授業料で国家資格を取得できても、じっくり教えてもらえる環境がなければ現場に出た際に困ることになります。
また、ウィッグなどの教材費が授業料に含まれている場合と、追加で支払わなければいけない場合があります。そうした点を総合的に見て、授業料と教育の質や量が見合うかどうかを判断していただきたいです。
―最後に、高校生へのメッセージをお願いします。
理容・美容業界を志す皆さんには、自分の夢を実現することのできる、「本当の教育」を提供している学校を見つけてほしいと思います。「本当の教育」とは、理容・美容に関するあらゆる技術をもれなく丁寧に教えることだと考えています。そこで努力して身につけた技術や多様な知識は、きっと将来的に自分自身を守ってくれるはずです。
理容・美容分野のポイント
1 「美」を幅広く捉えた学びの多様さ
国家試験対策は大前提として、現場で求められるトータルビューティーのスキルを修得できるか。
2 「深く学ぶ」ための授業時間数の多さ
基礎的なシャンプー実習にかける時間の多さなど、学びの幅広さだけでなく量と質にも注目。
3 学費が教材や授業時間数に見合うか
授業の内容や教員のレベル、支給されるウィッグの数といった教材との兼ね合いで授業料を評価する。
この質問に答えてくれた人

国際文化理容美容専門学校
渋谷校
東京都渋谷区神泉町2-2
TEL 03-3462-1447

国分寺校
東京都国分寺市南町3-22-14
TEL 042-321-0002
国際文化教育総合研究所
桑田 篤志 所長
専門学校で学生指導を行ってきた経験を活かし高校教員からの依頼による進路全般講演、専門学校講演、教員研修会などを年間50校以上で行っている。