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「自分の技術で人の役に立ちたいと思っている人」にチャレンジしてほしい
技術の進歩がめざましいITの世界でエンジニアとして働くためには? この分野をリードし続ける日本電子専門学校で、長年にわたり技術者を育成してきたエンジニア教育部長・大川晃一先生に、この業界の状況をわかりやすく解説していただくとともに、専門学校での学びや選ぶポイントについてお聞きした。
IT業界は働きやすい職場に
—IT業界の現況と働き方について教えてください
AI、IoT、5Gというような新しい技術が一挙に押し寄せていることもあり、技術者が絶対的に足りていません。引く手あまたの状況といってよいでしょう。国がIT教育に力を入れているのはこういった背景があります。
IT業界はかつて長時間労働をともなう過酷な職場環境だといわれてきましたが、働き方改革の後押しもあり大きく様変わりしています。もともと自分の技術を評価してくれる会社に転職してキャリアアップすることに抵抗のない業界ですし、人材不足の折、近ごろは給与・業務の両面で厚遇されていると思います。
—ITエンジニアにはどのような職種がありますか
大まかに挙げても、プログラマ、システムエンジニア、ネットワークエンジニア、データベースエンジニア、組み込みエンジニア…、と数多く出てきます。技術の分野が広く、それぞれに専門性が問われる業界です。
しかしざっくりと分ければ「作る」か「守る」かになりますね。新しくシステムやアプリケーションを作り上げるか、できあがったものが日々問題なく動くように監視して守るか、ということです。最近話題に上がることの多いセキュリティは「守る」エンジニアになりますね。
—専門性を高めるために資格は必要でしょうか
業界には「資格不要論」を唱える人もいます。たしかに現場でものをいうのは技術と経験です。専門学校によっては資格取得よりも、プログラムを作って失敗して作り直して…という繰り返しのトレーニングを重視する学校もあります。
一方、ベースとなる知識を身につけるために資格の取得が有効だという考えもあります。この業界は専門用語が多いので、資格を通じて学んでおけば現場でのコミュニケーションもスムーズです。
本校でも複数学科で国家資格「基本情報技術者」の取得をめざしています。もちろんプログラムを作る実習時間も取り入れています。資格取得と技術習得のバランスが取れたカリキュラムがよいでしょう。
自分の専門性を高められる学校を選ぶ
—専門学校と大学の違いはなんでしょうか
専門学校では技術者として必要な要素を集中的に学びます。ですからこの業界で働きたいと思っている人におすすめです。
大学は学問研究をするところですし、教養の授業もあります。まだ就職の方向を決めかねている人や、自分の進路を模索している人には大学が合うかもしれません。
学歴よりも技術や経験が評価される業界ですから、専門学校が不利ということはないでしょう。ただし最先端の分野では高度な数学などが用いられるので、大学での学びが活きることもあります。
—専門学校を選ぶポイントを教えてください
卒業生が多く、歴史のある学校がよいのではないでしょうか。実際の仕事では多数の人とプロジェクトを進めることも少なくありません。同じ業務にかかわる人たちの中に卒業生がいるのは心強いです。多くの卒業生の活躍が積み重なることで、その学校への信頼が高まって、良い求人がさらに集まりやすくなります。
また、学校によってはいろいろなことに手を出しすぎているようなカリキュラムを見ることがあります。技術の種類が多岐にわたるので、「広く浅く」よりも、強みとなる技術を持つことができるカリキュラムの学校を選ぶのがよいのではないでしょうか。
—高校の時に取り組んでおくとよいことはありますか
英語を嫌いにならないでほしいです。得意な人なら海外の技術者とやりとりをするような場面もありますが、そこまででなくても、ほとんどのプログラミング言語は英語がベースになっていますし、新しい技術情報を海外のWEBサイトで調べるような場面にも遭遇します。
また、数学は必要ないとは言いませんが、それでは理系のほうが有利かというと、あまり関係ありません。私も文系の出身なのでどちらでも大丈夫でしょう。
あと、失敗を恐れずにやってみようという能動的なタイプが成功すると思います。IT業界のエンジニアはこれまで以上に提案力が求められるので、クラブ活動や生徒会など、仲間と一つの目標に向かう過程で意見を交わしたり自分の提案を伝えたり、そのような経験や積極性は強みになります。
—最後に読者の方へメッセージをお願いします
私自身、最初はシステム開発の現場で働きました。自分たちが作ったものが実際に動くのは楽しいですし、それでお客様に喜んでもらえた時は嬉しいです。この醍醐味を若い人に伝えたくて専門学校の教員になりました。パソコンが好きで、ものづくりに興味がある人に目指してもらいたいですね。
コンピュータ・情報処理分野のポイント
1 強みとなる技術を身につけられるカリキュラムか
技術の種類が多岐にわたる分野。「広く浅く」よりも自分の武器となる技術が身につく学校を選ぶ。
2 資格取得と技術習得のバランスがよい学校を選ぶ
資格がないと働けない業界ではないが、知識は技術者のベースになる。実務に必要な技術を習得できる時間とのバランスがよい学校を選びたい。
3 部活や委員会などの経験を大切に
お客様の要望をもとにチームでシステムを作り上げる仕事。課外活動の経験も大切。
エンジニア教育部長 ケータイ・アプリケーション科 科長
大川 晃一先生
大手IT企業で開発業務に従事したのち、日本電子専門学校へ教員として転職。情報系学科で国家試験対策の授業やエンジニアになるための技術力を身に付けるプログラミング言語の授業を担当している。