警察官、消防官、自治体職員など合格実績から自分に合う学校を読み解こう

数ある職種の中でも抜群の安定度で人気の高い公務員。しかし、地域住民の課題解決や日々の訓練など、決して楽な仕事ばかりではない。警察官、消防官、自治体の職員など、公務員試験の合格実績に定評のある、上野法律専門学校校長の田村雅之先生に公務員業界の現状と試験対策を中心にお話を伺った。

公務員には「公安系」と「事務系」の職種がある

—国家公務員・地方公務員の役割の違い、職種ごとの近況をお聞かせください

国家公務員は国全体の運営に関わる仕事で地方公務員は地域に根差した仕事といえます。
職種として国や地域や人を守る「公安系」と「事務系」に分けることができます。

たとえば、国家公務員では自衛官や海上保安官などは国や国民を守る「公安系」の仕事で、省庁や税務署、裁判所で働く人は「事務系」です。

地方公務員であれば都道府県や市区町村の職員が「事務系」で、各地の県警や消防署などで働く警察官や消防官などは地域の人を守る「公安系」の職種となります。最近の傾向として、少子化と民間企業が活況なためか、公務員志望者が少し減っているようです。

—公務員に必要な素養についてお聞かせください

「全体の奉仕者」といわれる公務員は国民や地域住民、社会全体のために働く存在です。安定性ばかりが注目されるきらいがありますが、職種によっては残業もありますし、多様化する社会のニーズに対応していくには指示待ちではなく自分から考えて行動する姿勢も必要です。

筆記試験の「一般知能」とはどんな内容なのか?

—公務員試験のプロセスについてお聞かせください

業界には「資格不要論」を唱える人もいます。たしかに現場でものをいうのは技術と経験です。専門学校によっては資格取得よりも、プログラムを作って失敗して作り直して…という繰り返しのトレーニングを重視する学校もあります。

一方、ベースとなる知識を身につけるために資格の取得が有効だという考えもあります。この業界は専門用語が多いので、資格を通じて学んでおけば現場でのコミュニケーションもスムーズです。本校でも複数学科で国家資格「基本情報技術者」の取得をめざしています。もちろんプログラムを作る実習時間も取り入れています。資格取得と技術習得のバランスが取れたカリキュラムがよいでしょう。

自分の専門性を高められる学校を選ぶ

—専門学校と大学の違いはなんでしょうか

専門学校から「国家公務員高卒程度」「地方公務員中・初級」「警察官」「消防官」などの公務員を目指す場合、まず一次試験として筆記試験があり、高校までに学んだ学力を問う「一般知識」と公務員としての適性を図る「一般知能」の2つで20科目ほどの対策が必要です。たとえば高校で学んできた「社会」であれば世界史、日本史、地理、政治経済といったように広い範囲を学びます。

「一般知能」は数的推理、判断推理、空間把握、資料解釈などの科目から構成されています。聞きなれない科目ばかりで独学では難しい面もありますが、公務員の仕事では統計データなどの資料解釈や法解釈に必要な読解力、ものごとを順序立てて理解・計算するスキルが必須なのでこのような科目が存在するのです。

二次試験の面接では志望動機・自己分析をなるべく早い段階から研ぎ澄ませていくことが大事です。私は勉強の大変さ、本番の雰囲気を知ってもらうために公務員を志望する高校生にはぜひ、高3生の時に公務員試験を実際にうけてみることをお勧めしています。

公務員試験 受験区分

—公務員試験対策のスケジュールの立て方をお聞かせください

本校の2年制では1年次に一般知識対策として社会、数学、理科を細かく学期ごとに勉強していきます。一般知能については、たとえば数的推論で必要な数学の知識などは中学の基礎学習から学びなおすことでレベルアップしていけるようにしています。

2年次には午前中に警察、消防、市区町村対策など、本番形式の模擬試験を志望分野に関わらず、全員、一通り体験します。午後は直前対策として、模試でできなかった箇所の反復や志望先についての対策を練ります。短期集中型の1年制で学ぶ人も多いですが、高校の時から公務員対策の勉強をしている人だと心強いですね。

先ほど挙げた、専門学校から目指す人が多い「国家公務員高卒程度」、「地方公務員初級」、「警察官」、「消防官」などの試験は、試験内容や出題傾向を分析して対策を立てており、複数の試験を受けながら、第一希望の合格を目指しています。

合格実績の「延べ数」と「実数」では大きく意味が違う

—公務員対策の専門学校を選ぶときのポイントをお聞かせください

ズバリいって、自分にとってどの学校が一番勉強しやすくて力をつけてくれるところかだと思います。それともう1つ大事なのは公務員試験の合格者数の見かたです。1人で何個も公務員試験に受かった人の合格数を全部カウントする延べ数か、あくまで1人1合格とカウントする実数か、で数字の持つ意味が全く違います。合格者数は、受験をした在校生の何%の人が合格したかが読みやすい実数でぜひ見比べてほしいと思います。

—高校生のときにやっておくとよいことはありますか?

先ほどお話したように高校で学ぶ教科が試験でたくさん出てきますのでまずは高校での勉強をしっかりやってほしいですね。あとは公務員というとイメージ先行になりがちなので就職説明会やwebサイトを見て実際の仕事の中身への理解を深めてもらいたいですね。

公務員分野のポイント

1 「一般知識」分野の対策は独学では難しい面も

高校で習う内容ではないのでプロの指導を受ける方が対策しやすい

2 自分に合った「1番勉強をしやすい」学校を選ぶ

個別指導、多人数授業など、専門学校によってやり方は色々

3 公務員合格実績は在校受験生の何人が合格したか「実績」で見る

1人1合格の実績で見れば在校受験生の何%が合格できたか読める

この質問に答えてくれた人

上野法律専門学校
校長 田村 雅之先生
1985年(昭和60年)より、専門学校にて公務員受験指導に携わる。1994年(平成6年)経験豊かな講師陣と少人数制を特色とする公務員受験指導のための専門学校、上野法律専門学校の創立に関わり現在に至る。
取材後記
この学校はとにかく教える先生の熱意がすごい。授業には緊張感が走り、私語をする学生は皆無。このストイックな風景が日常であるというところに公務員試験の厳しさを垣間見た思いがする。今回の取材で1番勉強になったのは専門学校が公表している公務員合格者数の見かた。「延べ数」と「実数」が持つ意味の違いは大きいので、このことをぜひ理解してから学校選びをしていただきたい。
学校紹介
上野法律専門学校
東京都台東区北上野2-3-5
TEL 03-3841-3707
https://www.uenohoritu.ac.jp