ケガや身体の回復に寄り添う医療のスペシャリストを目指すには?

ケガや身体の回復に寄り添う医療のスペシャリストを目指すには?

医療からスポーツ、美容まで、幅広い分野で活躍しているのが柔道整復師鍼灸師あん摩マッサージ指圧師といった国家資格を取得した人々だ。「独立開業」や身体の回復のスペシャリストを目指し、専門学校でどのように学びを重ねていくのだろうか?

東京呉竹医療専門学校柔道整復分野を担当する杉山直人先生鍼灸マッサージ分野を担当する中村真通先生に話を伺った。

資格や技術に加えて、対人コミュニケーション力をいかに身につけるか

医療、スポーツ、介護、美容などにまたがる資格

―柔道整復師、はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師の国家資格取得者が働く業界について、仕事内容やトレンドを教えてください。

杉山 柔道整復師は接骨院を中心に整形外科介護福祉施設で働き、骨折や脱臼、打撲、捻挫などのケガを扱います。リハビリに関わる職種としては理学療法士(PT)なども挙げられますが、柔道整復師はケガの回復に加えて「痛みを和らげる施術」を行うのが特徴。資格取得者は独立開業する権利もあります。

中村 鍼(はり)灸(きゅう)は、自然治癒力を高めたり、自律神経を整えたりします。あん摩マッサージ指圧は、「押す・もむ・さする・たたく」といった手技を用いて身体の変調を整える施術法です。

こうした東洋医療は西洋医療と比べてエビデンスがないと思われがちですが、さまざまな疾患への効果があることはWHO(世界保健機関)でも発表されており、国内外で注目を集めています。最近では自律神経に関わる精神疾患認知症婦人科疾患美容分野でも鍼・灸・マッサージのニーズが高まっています。

杉山 トレンドで言えば、こうした国家資格を活かしてスポーツトレーナーを目指す学生が増えていますね。スポーツ分野ではアスレチックトレーナー(AT)の資格を持つ人も活躍していますが、ATの領域はスポーツ選手のケガの予防応急処置まで。それ以上の医療行為ができないことは注意すべきポイントです。故障に対する施術リハビリ、日々のフィジカルトレーニングコンディショニングの維持には、国家資格である柔道整復鍼・灸・あん摩マッサージ指圧の施術が求められています。

柔整・鍼灸・マッサージが活躍するフィールド

―スポーツトレーナーを目指す学生に対しては、どのようなアドバイスをしていますか?

杉山 非常に狭き門ではありますが、まずはしっかりと柔道整復鍼・灸、あん摩マッサージ指圧資格をとることが重要です。プロ野球球団のメディカルスタッフとして活躍している本校の卒業生の中には、今挙げた4つの資格を複数取得している人も多くいます。そのぶん時間はかかりますが、ケアのアプローチについては格段に幅が広がります。

中村 本校ではスポーツトレーナーを目指す方のための「スーパートレーナーコース」という特別講座を開講しています。一流講師から実技などの直接指導が受けられ、プロスポーツチームなどへのインターンシップも行います。業界との人脈作りから就職まで、トータルサポートしています。

対人での実践力を身につける臨床実習の多さがポイント

―スポーツ・柔整・鍼灸分野の学校を選ぶ際のポイントを教えてください。

杉山 まず、柔道整復師を目指せる医療系の大学がありますが、これらの大学と比較した際の専門学校の強みは「実技指導の充実度」だと思います。柔道整復師の国家試験には実技がありませんが、専門学校の場合は卒業資格を得るために「認定実技審査」という「柔道」「固定・整復」の実技を判定する試験に合格することが必須です。

そのため、本校でも実技の修得には特に力を入れています。例えば、1年次には講義で学習した身体の構造と機能について、実習を通してより深く理解する時間があります。実際に学生同士で骨や筋肉を触りながら「正常」な状態を確かめ、「異常」な状態である損傷やケガに対処するための固定材料扱い方などを修得していきます。

中村 そうした確かな技術や資格に加えて、この分野で欠かせないのが対面でのコミュニケーション力です。多くの患者さんと接するためにも、臨床実習時間の量外部臨床施設の充実度が大切だと思います。本校では3年間180時間以上の実習時間を確保しており、200以上もの幅広い分野の施設で実際の業務に触れながら実践力を養っています。

杉山 在学中の3年間8施設臨床実習で訪れることになるので、自分に合う就職先や職場のイメージも掴みやすくなります。連携している実習先の多さは、学校を選ぶ際の重要なポイントですね。

―最後にスポーツ・柔整・鍼灸分野に興味がある高校生と保護者にメッセージをお願いします。

杉山 身体の調子がよくない人に寄り添う職業なので、適性としては「人が好き」な方にお勧めします。学費は少々高いイメージがあるかもしれませんが、生涯年収で考えれば採算が取れる可能性は高いと思います。

中村 柔整や鍼灸、マッサージといった手に職をつけるタイプの業界は、ご自身が健康であれば定年はありません。働いた時間や担当した患者さんの分だけ、臨床力信頼関係がどんどん積み上がっていく仕事です。将来は独立開業してご自身の施術所・接骨院を持つといったキャリアプランも可能です。

スポーツ・柔整・鍼灸分野のポイント

1 理学療法士やアスレチックトレーナーとの役割の違いを知っておく

柔道整復師はケガを施術する専門家であり、開業する権利も持っている。

2 実技の学習が充実しているか

専門学校の卒業判定にも関わる「認定実技審査」。その対策にもなる実技学習は、現場でも活きる。

3 臨床実習や実習施設の多さに注目

技術の次に大事なのが人と関わるためのコミュニケーション。現場力を養うための実習が要になる。

この質問に答えてくれた人

学校法人呉竹学園
東京呉竹医療専門学校
柔道整復科科長
杉山 直人 先生
認定実技審査委員(整復実技)を務める。鍼灸・あん摩マッサージ指圧師の資格も持つ。
学校法人呉竹学園
東京呉竹医療専門学校
鍼灸マッサージ科・鍼灸科科長
中村 真通 先生
臨床・教育・研究分野のゼネラリストとして学生を多方面から支援する。公認心理師の資格も持つ。
学校紹介
東京呉竹医療専門学校の外観
東京呉竹医療専門学校
東京都新宿区四谷三栄町16-12
TEL 03-3341-4043
https://www.kuretake.ac.jp
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