今やビジネスのさまざまなシーンで見かけるDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉。デジタル技術で社会の課題を解決し、新たな価値をもたらすDX人材は、あらゆる業界で求められている。
日本電子専門学校エンジニア教育部長の大川晃一先生と同校に新設されたDXスペシャリスト科 科長の谷口英司先生にDXの学びや将来性について伺った。
あらゆる業界で求められるDX人材。
志望業界に就職する手段にもなる!?
人々の生活を根本から変えてしまうのがDX
―最近、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉をメディアでよく目にします。そもそもDXとは何を指すのでしょう?
谷口 DXとは、デジタルによる変化・変容。つまり、デジタル技術を駆使して、ビジネスや社会を変革することを指します。DXはITだけでなく、あらゆる業界で活用できることから世界中で注目されています。日本でもたくさんの企業がビジネスのDX化に取り組んでいます。
大川 身近なDXの例として、皆さんもよくご存じの「ネットフリックス」が挙げられます。同社はもともとDVDレンタルの会社で、郵送で貸し出しと返却を行っていました。定額で何枚でもDVDが借りられて、返却日も自由という「サブスクリプション」のモデルをこの分野に導入したのも同社です。
その後、同社は現在主流であるサブスクのネット配信モデルをスタートします。デジタル化によって、DVDの貸し出し・返却のやりとりを省略し、「ボタンひとつで自宅で映画を見放題」という新しい世界をもたらしたわけです。このように人々の生活を大きく変えてしまうのがDXなのです。
谷口 ここで要注意なのが、「デジタル化」と「DX」の違いです。例えば、手書きの書類をPDFファイルにしてメールで送るのはデジタル化で、DXではありません。それにより、業務を効率化したり、蓄積した顧客データを新たな商品開発に役立てるなど、デジタル技術によって新しい価値を生み出すのがDXなのです。
―DXを推進するために必要なスキルとは何でしょうか?
谷口 DXを学べるコースでは、情報システムを用いてビジネスを効率化したり、新しいビジネスモデルを創出したりする方法を学びます。プログラミングの知識があれば強みになりますが、それよりもデジタル技術に関する幅広い知識を活かして、新しい何かを考え出す能力が求められると思います。
大川 つまり、DXとはデジタル技術を用いた「課題解決」と「価値創造」なのです。
ビジネス現場の課題を発見し、それを解決する手段としてどういうものがあるか、と考えるのがDX担当者の仕事だと思います。
DXは以下の2パターンでまとめられます。ひとつが各種データを分析し、新たなビジネスを創出する「攻めのDX」。もうひとつが、紙の書類をデータ化して管理する、オンライン会議ができる環境をつくるなどのデジタル化によって社内の業務を改善する「守りのDX」です。
そういう意味では、生徒会や学園祭実行委員で、「もっとこうしたほうが効率がいい」と業務の改善を提案できるような人が向いている仕事かもしれませんね。
―DXを学べる専門学校を選ぶ際に注意すべきポイントは?
谷口 DXは「デジタル技術」と「ビジネス知識」を融合した領域です。プログラミングやアプリ開発をはじめとするデジタル技術だけでなく、マーケティングやマネジメントなどビジネスに関する幅広い知識も得られるカリキュラムになっているか確認する必要があると思います。
専門学校に通いながら、クラウド環境を使ったアプリやオンライン環境でのワークスタイルにも慣れておく必要があります。
大川 日本電子専門学校のDXスペシャリスト科では、週5日のうち最大3日の授業をオンラインで実施しています。実習はリアルな環境で行い、知識を得る座学系の授業は主にオンラインで行います。さらに、Microsoft TeamsやSlackなどのコミュニケーションツールを授業に導入し、ビジネスでも使いこなせるようになってもらいます。
谷口 DXを学べる専門学校を選ぶ上で、どういう経験を持つ教員がいるかも重要なポイントです。SE(システムエンジニア)出身の教員、現役でDXに携わっている教員が多い学校は信頼できると思います。
あらゆる分野でDXのスキルを活かせる時代
―DXを学んだ後、想定される進路について教えてください。
大川 DXは社会全体で必要なスキルであるため、関連しない業界はありません。ITやものづくりはもちろん、商社、流通、医療、教育、スポーツ、地方創生など、あらゆる分野でDXを活用した考え方や取り組みが必要となるでしょう。
谷口 ただし、現状では企業から「DX担当者」という求人は出ていないので、「総合職」として入社し、営業や販売など、現場レベルでDX化に取り組むことになると思います。企業からDX人材へのニーズが高まることは間違いないので、希望の業界に就職するためにDXを学ぶという選択肢もあると思います。
―DXの分野に興味がある高校生にアドバイスを。
大川 とにかくいろいろなことに興味を持ち、体験しておくことが重要です。そして、日常の何気ないところに問題意識を持ち、それについて考える習慣をつけてほしいと思います。それがDXで社会の課題を解決するための第一歩になります。
谷口 DXは人材が不足している分野で、若い世代にとって大きな可能性があります。このような学びが気になる人は、DXを学べる専門学校のオープンキャンパスなどで早めに情報収集をしてほしいと思います。
※2023年2月の取材に基づく内容です。
DX分野のポイント
1 デジタル技術とビジネス知識をバランスよく学べるカリキュラムか
プログラミングなどのデジタル技術だけでなく、ビジネス分野も幅広く学べる科目があるか確認を。
2 クラウドやオンライン環境の設備
クラウド環境を使ったアプリやオンライン環境での授業を利用できる設備が整っているかをチェック!
3 専門家教員が揃っているか
SE(システムエンジニア)出身やDX業務経験者の先生から直接学べる環境があるか調べておく。
この質問に答えてくれた人
DXスペシャリスト科 科長
谷口 英司 先生
業務系、組込み系など、さまざまな分野のシステム開発に従事したのち、日本電子専門学校講師に。現在は、主にIT系、ビジネス系の科目を担当している。
東京都新宿区百人町1丁目25-4
TEL 03-3363-2985
https://www.jec.ac.jp/
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エンジニア教育部長
大川 晃一 先生
大手IT企業で開発業務に従事した後、日本電子専門学校へ。モバイルアプリ開発、Webシステム開発などの授業を担当。