サービススキルの基本に加え 語学力や企画力を鍛えられる環境が重要

 一流ホテルのフロント業務やウェディングプランナーの仕事は、誰もが一度は憧れる職業。ワンランク上のサービス業に就くには、どのような資質が求められるのでしょうか? 東京エアトラベル・ホテル専門学校の校長で、大手ホテルチェーンでの勤務経験もある小川一廣先生に業界の動向や学校選びのポイントについて聞いた。

人材ニーズはますます増加傾向。グローバル対応力が強みに。

新たなホテルが続々オープン。人材ニーズもますます堅調

—ホテル・ブライダル業界の現状について、お聞かせください

まず、ホテル業界について申し上げると訪日外国人旅行者の増加などを背景に、都市部では需要が供給を上回っている状況が続いています。私が校長を務める東京エアトラベル・ホテル専門学校でもホテル科の卒業生が就職で困ることはありません。

今年(2020年)夏の東京五輪後も2025年の大阪万博、2026年の第20回アジア競技大会など国際的イベントが続きます。政府の観光立国政策の後押しもあり、ホテルブームはまだまだ続くでしょう。就職先として、学生たちに人気なのは大型アミューズメント施設に隣接したアーバンシティリゾート系のホテルです。また、都市部で続々オープンしている外資系ホテルからの求人も探せます。

一方、ブライダル業界は、挙式件数が減少する一方、客単価は増加傾向にあります。結婚して、挙式を行うカップルの割合は、バブル期は8割だったのに対し、現在は5割程度です。ロケーションや当日の演出、写真撮影の方法など、お客様のこだわりがますます強くなっているので、ブライダル業界では、よりきめ細かな提案力が求められています。

—お客様の特別な日や体験を支えるこの仕事において、大切なものは何でしょうか?

共通して求められるのは、コミュニケーション力と相手の立場になって考えるバランス感覚です。さらにウェディング業界は、一生に一度の大切なイベントを支える仕事です。自分の考えを押しつけるのではなく、相手の要望にしっかり耳を傾け、先回りして提案できるような力が求められます。

—今後ますますグローバル化が進むなかで、やはり語学力は必須でしょうか?

おっしゃる通り、グローバル化はますます加速するでしょう。シティホテルのフロント業務を志すなら、TOEIC600点レベルの英語力が必須になると思います。

また、現在年間3000万人以上と言われる訪日外国人のうち、8割がアジア系で、最も多い中国圏の方々が全体の3割近くとなります。中国語やその他のアジア言語を学んでおくのも強みになるでしょう。

—サービススキル以外に、必要な知識や能力はありますか?

ホテル業界でも、ブライダル業界でも経営学の知識や企画力が必要になると思います。ホテルの仕事というとフロント業務やベル業務などをイメージしがちですが、それ以外にもレストランなど料飲部門や予約管理、営業、企画といった仕事もあります。

さらに、年末年始の宴会予約などは、単価の良い宴会を効率的に組み込めるかどうかなど、営業担当者のテクニック次第で、売り上げがまったく変わります。空室を埋めるだけでなく、利益率を考えて価格設定をするような経営のセンスがここで活かされます。

一方、ブライダル業界でプランナーを目指す場合も企画力や経営のセンスが求められるのは当然ですよね。ホテル・ブライダル系の専門学校では、必ず経営学やイベントプランニングに関する授業があるので、入学前にチェックしておくといいでしょう。

インターンシップは2.3か月の長期が主流

—近年、各校が力を入れているインターンシップについて教えてください

専門学校は実務を学ぶ場所なので、現場でのインターンシップは重視しています。各校でおよそ2.3か月の長期で、特定のホテルや結婚式場で働く経験ができるような環境を整えています。そのままインターンシップ先に就職する例も多いようです

—学校を比較する上で、どのような点をチェックすればいいでしょうか?

実際に学校を見て確かめるのはもちろんですが、接客の仕事に就く分野ですので、気になる学校に見習いたい先輩がいるかどうかは大切なポイントです。

たとえば本校ではオープンキャンパスはPBL学修の一環で学生に企画運営を任せています。学生たちにとってサービス業を体感する実践の場となりますし、このやり方の方が高校生に生の声を伝えやすいと思っています。できれば3校は学校を見て比較してほしいですね。

—卒業生の就職実績も参考にすべきでしょうか?

もちろん就職実績は学校選びの参考になります。有名企業への就職実績は、その学校の歴代の卒業生たちがそこで活躍している証でもあります。

ただし、ホテル業界もブライダル業界も転職しながらキャリアアップしていく人が多いのが実情です。就職後もスキルアップの努力を続ける必要があるでしょう。

—ホテル・ブライダル分野をめざす高校生にメッセージをお願いします

将来進みたい道が決まっているなら、現場のノウハウが身につく専門学校で学ぶのがいいでしょう。ホテル業界では、専門学校卒で大手ホテルの総支配人をやっているような人もたくさんいます。いずれの業界も人材が足りないので、本気で学べば、夢を実現できるチャンスが多い分野だと思います。

ホテル・ブライダル分野のポイント

1 都市ホテルのフロント業務に語学力は必須

英語はもちろんのこと、中国語やアジア言語まで習得できれば大きな強みに

2 経営学やプランニングなど授業の幅広さも重要

接客サービスだけでなく、経営学やイベントプランニングなども幅広く学べる環境が重要

3 サービスを学ぶ分野こそ学校の雰囲気が重要

学校や先輩の雰囲気が合うかも重要。最低3校はオープンキャンパスに足を運ぼう。

この質問に答えてくれた人

東京エアトラベル・ホテル専門学校
校長 小川 一廣先生
慶応義塾大学文学部卒業後大手ホテルチェーンに入社。総務部長、総支配人を経て2013年に東京エアトラベル・ホテル専門学校副校長に就任。翌年より校長に就任
取材後記
長らく大手ホテルに勤められ、人事のご経験もある小川先生。採用する側の目線も交えながら、専門学校に求められる教育について語ってくださった。「主役はお客様であって、我々は影」という言葉は、まさに「おもてなし」精神の現れ。日本のインバウンドビジネスを担う、これからのホテル・ブライダル業界に求められる人材像について理解が深まる取材となった。
学校紹介
東京エアトラベル・ホテル専門学校
東京都小金井市前原町5-1-29
TEL 042-387-0066
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