スタイリッシュな建物やSNS映えするインテリアなどを見て、建築やインテリアの分野に興味を持っている人も多いだろう。この分野ではどのような人材が求められているのか。建築・インテリアの分野で多くのプロを輩出してきた中央工学校の松田 正之校長に業界の現状や求められる人材像について聞いた。
鍛えた実務スキルが正当に評価されるのが魅力
東京五輪後も建設需要は安定して続いていく
—建設業界の今後の状況をどうご覧になっていますか?
2020年夏の東京五輪を境に、建設需要の落ち込みを懸念する声もありますが、スーパーゼネコンの関係者の話などを聞いていると大きな変化はなさそうです。
理由のひとつは、人材不足で未だ着工できていない建設案件が多数あること。また、震災や台風被害などの災害復興需要もまだまだ残っています。さらに全国的に老朽化した道路や橋梁などのインフラの再整備も進んでおり、現在の状況が、今後も続きそうです。
—建設業界にはどのような仕事があるのでしょう?
大きく分けて、設計・施工・販売の3職種に分かれます。専門学校の卒業生たちは、だいたい3分の1ずつ各職種に進んでいきます。
設計は、建物の外観やインテリアの設計図を作成するのが主な仕事。CAD・BIMなどのスキルのほか、デザインの意図を人に伝えるプレゼンテーションのスキルも求められます。
施工は、建物や橋梁などを実際につくる仕事。土木工学や測量の知識、コンクリートなどの材料の知識が必要になります。販売は、住宅やオフィスビルの営業をするのが主な仕事。不動産に関する幅広い知識のほか、コミュニケーション力も求められます。
各専門学校ごとに特色のある学科やコースがあります。自分の将来をイメージしながら、学ぶ場所を選ぶのが理想的です。
—建築士の資格があるとどのようなメリットがあるのでしょう?
建築士の国家資格があると仕事の幅は大きく広がります。私は、現在校長を務める中央工学校を卒業後、建設会社で12年間働きながら経験を積み、二級建築士、そして一級建築士の資格を取得しました。
一級建築士の資格を取得するのは、昔も今も並大抵のことではありません。その分、取得後は、大きなプロジェクトの施工管理を任され、大きなやりがいを得ることができました。もちろん国家資格の取得は、収入面のメリットも大きいと思います。
—最近はインテリア系の学科も人気です。建築系の学科と学びや進路の違いはありますか?
インテリアも設計分野の一部と考えていいと思います。学ぶ内容も製図やデザイン、家具づくりの実習など、多くの学校では建築設計の学科と変わらないと思います。
異なるのは卒業後の進路です。インテリアを専門的に学んだ学生は、商業施設やレストラン、ショップの内装やディスプレイを手がける仕事に就くことが多いですね。
—建築を学ぶ上で、専門学校と大学の違いはありますか?
4年間学ぶ想定でカリキュラムが組まれた大学と比べ、専門学校は実務に直結した学習の色合いが強いと考えていいでしょう。2年間という限られた時間で、仕事に直結する実践的なスキルを修得します。授業の課題はすべて仕事につながる学習だと思って取り組む意識が必要です。
「やらされ感」を乗り越えて、人より早く一人前になりたいと思って学べば、必ず社会で活躍できるようになるでしょう。
卒業生の就職実績はその学校の教育力の証
—専門学校を選ぶ際のポイントはありますか?
まず自分が目指す分野に特化した学科やコースがあるか調べましょう。その上で、より実践的なスキルを身につけられる施設や実習の充実度を調べるのをおすすめします。実習を何度も繰り返して身につけた実務スキルは、社会に出たときに大きな強みになります。オープンキャンパスや体験授業で志望校の教育施設や実習内容、資格取得の条件などをチェックしておくといいでしょう。
また、卒業生の就職先も重要です。就職実績は、その学校で学んだ先輩たちが業界で評価されている証でもあります。同様に建築士を目指す場合は、卒業生の一級建築士試験合格実績が大いに参考になります。
例えば、私が勤める中央工学校は、専門学校の中で一級建築士合格者数が10年連続トップです。設計製図の厳しい実習を課してきた成果が、この実績につながっていると考えています。
—この分野を目指す高校生にメッセージをお願いします。
私は、建築は「究極の人間工学」だと思っています。施工現場の自動化やAI化はますます進むでしょう。3D.CADやBIMといった新しい技術も登場しています。しかし、最後は人間の手でつくるのが建築です。人が住む空間をつくる上で、人間にしかできない仕事が必ずあります。住宅や商業施設は、誰もが接する身近なものです。
建築は理系の分野と思われがちですが、高校で文系を中心に学んできた人も本校を卒業して活躍しています。プロとして、この業界で必ず活躍する! という覚悟がある人なら誰でも大歓迎です。
建築・インテリア分野のポイント
1 志望職種に合わせた学科選びが重要
設計、施工、販売、インテリアなど、志望する職種に合わせて学科を選ぼう。
2 実習内容や設備をチェックする
実務スキルを身につける上で、実習内容や設備の充実度が将来を左右することになる。
3 卒業生の就職実績を指針にする
各学校の就職実績は、建設業界のどの分野からの評価が高いのかを知る指針になる。
校長 松田 正之先生
建築設計科(1978年卒業)
一級建築士 1級建築施工管理技士
一般財団法人中央工学校
生涯学習センター理事長