世界に誇る日本の自動車産業。その未来を担う整備士を目指す

日本の基幹産業である自動車業界。近年ではコンピューターやAIなど、様々な先端技術の発展で自動車整備士に求められる知識の範囲も広がっている。業界に2万人以上の卒業生を輩出してきた、学校法人小山学院 専門学校東京工科自動車大学校世田谷校・品川校校長、佐藤康夫先生に業界動向や専門学校の魅力を伺った。

自動車整備の最上位資格「一級自動車整備士」

—まずは自動車業界の現状をお聞かせください

自動車業界では、ハイブリッド車や電気自動車を中心に環境性能の向上が著しいほか、自動ブレーキや自動運転を可能にするセンサー技術やAI技術が駆使された「次世代型自動車」の普及が進んでいます。機械力学、材料力学、流体力学、熱力学といった機械工学の知見や、電気電子・通信・プログラミング技術など、多様かつ高度な最新技術が注ぎ込まれ、日々進化し続けています。

そして、自動車に新たな技術が採用されれば、その機能を保つための整備技術も必然的に不可欠になります。そこで国土交通省は、2002年に新たな国家資格となる「一級自動車整備士」を設けました。電子制御技術が多用され、いわばロボットのような自動車にも対応できる整備技術が求められています。これに伴い、専門学校も一級自動車整備士の養成課程を整えてきました。

—整備士の業務内容はどのようなものでしょうか

「車のドクター」といわれる整備士の業務は、「点検作業」と「一般作業」に大別されます。「点検作業」は、定期点検のように自動車が壊れないようにするための予備的な作業。「一般作業」は、不具合箇所の判定と実際の修理であり、内容は多岐にわたります。専門学校で習得する主な内容は、定期点検作業と一般作業を行うための基本知識です。

一方、整備に関わる技術や知識があれば、将来は整備士に限定されない幅広い選択肢が生まれます。メーカーや部品メーカーで設計開発業務に就いたり、輸出先で現地の整備士に対する教育スタッフとなり、国境を越えて活躍する「グローバル人材」になるチャンスもあります。

その他にも、モータースポーツのレースメカニックや、整備マニュアルなどの技術資料を作成するテクニカルライターなど、活躍できるフィールドは広がります。力仕事ばかりでもないため、女性が活躍するチャンスもあります。自動車業界は女性の進出に大きな期待を寄せています。例えば、ディーラーで技術知識を活かした接客を行い、お客様と整備士の架け橋としての役割を担うこともできます。

整備技術の世界では必ずしも大学優位とは限らない

—整備を学ぶ専門学校ならではの、魅力ある職業をお聞かせください

例えば自動車メーカーの開発職を目標にした場合、一般的には大学院の修士課程を修了した方が採用されています。しかし、専門学校でもまだ数は少ないですが、本校の4年制である1級自動車エンジニア科のような資格だけではなく、機械工学も学ぶカリキュラムで車の中身と仕組みの両方が分かる人材となれば、自動車メーカーの開発職に就くことができます。

また、専門学校の4年制課程を卒業すると「高度専門士」の称号と大学院入学資格が与えられ、実際に大学院への進学例もあります。有名大卒でも難しい、大手自動車メーカーの開発職に就くチャンスが専門学校にあるということをご理解いただきたいのです。例を挙げると、オープンキャンパスに理工系学部の大学生が訪れ、その後入学することが多くあります。

専門学校なら、自動車の整備基礎から幅広く理論的かつ体系的に学ぶことができ、大きな産業界に進める可能性も高まります。最先端の技術が結集されている自動車に熱意を持つ生徒さんがいれば、ぜひ進学先の候補として専門学校もご検討いただければと思います。

—専門学校はどのような基準で選ぶべきでしょうか

一級自動車整備士や二級自動車整備士といった取得可能な資格のほか、就職実績は大いに参考にすべきでしょう。本校の「メルセデス・ベンツコース」のように、特定のディーラーに勤務する整備士の育成を前提としたコースもありますので、目標に近づけそうな学校を探してみてください。

また、整備工場でのインターンシップがカリキュラムに組み込まれている学校や、走行体験プログラムやレース活動に参加できる学校もありますので、自分の興味に合う環境かどうかも判断材料になると思います。自分が何を強みにして自立したいのか。目標とする将来像から逆算して、習得すべき力を考えてみてください。

その際には、授業の中身にも目を向けてみましょう。授業計画となる「シラバス」を見れば、身につく技術やステップアップのシナリオがわかります。授業ごとに振り返りを行う体制が整っていれば、「わからないこと」が放置される心配もありません。テストの結果から生徒がつまずきやすいポイントや傾向を分析し、指導方法の改善につなげる学校もあります。

こうした取り組みを知るチャンスが学校見学や体験入学、オープンキャンパスですので、ぜひ積極的に参加してみてください。

自動車分野のポイント

1 取得できる資格のレベルを知る

ディーラーの整備士を目指すならまずは二級、自動車メーカーでの開発職なども視野に入れたいなら一級の取得が望ましい。

2 成長を後押しする指導体制か

幅広い知識と技術を着実に身につけていくために、わからないところを細かくフォローする授業体制かどうかも大切な判断材料。

3 カリキュラムの中身

整備工場でのインターンシップから、レース活動などの課外プログラムまで、授業外の学びもチェック。

この質問に答えてくれた人

学校法人 小山学園理事 専門学校東京工科自動車大学校
世田谷校・品川校 校長
佐藤 康夫 先生
2006年より同校校長に就任。産業技術大学院大学創造技術修士。国家一級自動車整備士の資格を有し、時には授業も受け持つ。また、自動車技術会会員など自動車業界において多くの任務に携わる。
取材後記
佐藤先生が語った「自動車は色々な技術の集大成」という言葉を聞いて、難易度の高い一級自動車整備士を取得する必要性について理解できた。また、「自動車への尽きない興味と探求心」とさらに工学知識を併せ持つ人材こそが、開発・設計など、大卒の領域だと思われがちだった分野で今後求められていくと思えてならない。自動車全般の知識を持った女性が販売の現場で熱望されているという話も新鮮だった。
学校紹介
専門学校東京工科自動車大学校
世田谷校:東京都世田谷区桜新町1-2-1
品川校:東京都品川区南品川3-7-12
中野校:東京都中野区東中野4-2-3
TEL 0120-1969-04
https://car.ttc.ac.jp