人口呼吸器や透析監視装置など、医療現場で扱われる機器が高度化するとともに、医師の業務を他職種へと移管していく「タスク・シフト/シェア」の進展により、臨床工学技士の役割も広がっている。一方で、その仕事内容が十分に知られていない現状もある。
東京電子専門学校臨床工学科の平塚明倫学部長に、臨床工学技士の仕事内容や専門学校での学びについて伺った。
活躍の場が広がる今、求められるスキルとは?
医療×工学
臨床工学技士の仕事とは?
―臨床工学技士の仕事内容について教えてください。
臨床工学技士は、医師の指示のもと、人工心肺装置や人工呼吸器、人工透析装置などの生命維持管理装置をはじめ、幅広い医療機器の操作・保守点検を担います。医療機器は一般的な耐用年数に応じて一律に更新するのではなく、適切な管理によって使用期間を延ばすことが可能です。たとえば10年とされる機器を15年使用できれば、医療機関にとって大きなコスト削減につながります。そのため、機械工学の知識に加え、医療機器メーカーとの情報共有や、最新技術を学び続ける姿勢が欠かせません。
臨床工学技士の業務の多くは患者さんの目に触れないところで行われます。人工心肺装置の操作時も患者さんは麻酔下にあり、医療機器の保守点検を含め、裏方として医療を支える役割が中心です。
一方で、近年はその役割に広がりが見られます。臨床工学技士は制度創設から約40年と比較的新しい国家資格ですが、医師の業務負担を軽減する「タスク・シフト/シェア」の進展に伴い、手術・麻酔・救急・集中治療などの領域で、医師が担ってきた診療補助業務にも関わる機会が増えています。高度化・複雑化する医療を支える専門職として、その重要性は今後さらに高まるでしょう。
国家資格取得まで直結したカリキュラム
専門学校ならではの伴走型教育
―専門学校と大学との学びの違いについてお聞かせください。
大学では、最終学年を研究に充て、指導教員のもとで専門分野を深く掘り下げていきます。一方、専門学校では資格取得と就職を明確なゴールに見据えて、そのために必要な知識と技術を集中的に学んでいきます。私が勤務する東京電子専門学校では、臨床工学技士の国家試験合格を見据えたカリキュラムを軸に、現場で通用する実践力の養成に力を注いでいます。
―専門学校での学びのステップについて教えてください。
東京電子専門学校の臨床工学科に入学する学生には文系出身者も多く、数学や物理学、生物学に苦手意識を持っているケースも少なくありません。しかし、臨床工学技士には幅広い基礎知識が不可欠です。そのため入学後は、まず基礎学力の底上げに重点を置き、土台づくりから丁寧に進めていきます。2年次には、実際の医療機器を用いた学内実習を中心に学びを深めるとともに、「第2種ME技術実力検定」の合格を目指した対策授業を行います。これは国家試験に向けた学習としても非常に有効です。3年次には、国家資格取得の要件となっている約30日間の病院実習に臨み、実践力を養うと同時に、医療を支える専門職としての責任の重さを学生自身が体感します。
本校では担任制を採用しており、病院実習中の不安や悩み、国家試験対策に関する疑問についても、担任が継続的に相談に応じています。入学時と卒業時を比べると、学力面だけでなく主体性の面でも、学生が大きく成長していることがわかります。基礎学力の習得から国家資格取得までを一貫して支える点こそが、専門学校教育の大きな強みだといえます。
チーム医療を支えるコミュニケーション力の重要性
―臨床工学技士にはどのような力が求められるのでしょうか。
各種医療機器に関する正確な知識はもちろん、数値を読み取る力や、患者データを適切に処理する力といったテクニカルスキルは欠かせません。しかし、実際の医療現場では、それだけでは十分とは言えません。臨床工学技士はチーム医療の一員として、医師や看護師と連携しながら業務を進めます。医療機器や患者の状態を的確に把握し、必要な対応を共有するためのコミュニケーション力、現場の流れを読み取る判断力といった、いわゆるノンテクニカルスキルも同様に重要です。
―専門学校を選ぶ際のポイントをお聞かせください。
注目してほしいのは、学内実習で使用できる医療機器の種類と台数です。機器の数が多ければ、その分、一人ひとりが実際に触れて学ぶ時間を確保でき、理解も深まります。
東京電子専門学校では、病院実習先との幅広いネットワークを活かし、旧型から最新機種まで多様な医療機器を揃えています。また、多くの病院と連携しているということは、それだけ卒業生が現場で活躍しているという証でもあり、卒業後の進路の広がりにもつながっています。
―最後に、臨床工学技士を目指す高校生にメッセージをお願いします。
臨床工学技士は、命の現場を支える仕事であり、大きなやりがいがあります。専門学校と大学では、就職時の初任給に差が出ることもありますが、現場に出てからは「実力」がものを言います。基礎から着実に力を身につければ、成長の伸びは非常に大きい職種です。高校時代は、特定の教科に偏らず、幅広く学ぶ姿勢を大切にしてほしいです。また、チーム医療の一員として働く以上、日頃からコミュニケーション力を養うことも重要です。何より、「臨床工学技士になりたい」という強い思いがあれば大丈夫です。さまざまなことに挑戦する意欲を持って、学びに向き合ってほしいと思います。
臨床工学分野のポイント
1 幅広い知識を体系的に身につける
機械工学に加え、数学から物理学、生物学まで幅広い知識が不可欠。基礎から段階的に学べる環境がベスト。
2 医療機器に触れ、実践力を磨く
実際に医療機器に触れる学びが、現場で通用する力を育てる。設備が充実し、実習時間を十分に確保できる学校を選びたい。
3 チーム医療で力を発揮する人間力
専門性だけでなく、チーム医療での連携力も不可欠。主体性とコミュニケーション力を備え、現場で信頼される存在を目指そう。
この質問に答えてくれた人

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東京電子専門学校







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臨床工学科 学部長
平塚 明倫 先生
横浜の病院に血液透析技士として数年勤務した。その後慈恵医大の西部医療センター(旧第三病院)へ転職、慈恵の機関病院異動を臨床工学技士として経験した。その後平成21年4月に慈恵医大附属病院臨床工学部の統括技士長として令和7年3月まで勤務する。