「衣食住」の「住」を担う、建築・インテリア業界。建てたものは街の一部を形成し、長く残っていくという点で大きなやりがいを得られる業種だ。
こうした建築やインテリアにおけるプロフェッショナルとなるために必要な学びについて、専門学校東京テクニカルカレッジの白井雅哲校長に話を伺った。
建設現場の最高責任者である「施工管理技術者」の注目度がアップ
活況の建築業界の中で施工管理技術者の求人増
―まずは建築業界の現状からお聞かせください。
建築・インテリア業界は求人がとても多く、活況を呈しています。それに付随する形で、給与の上昇やかつては「3K」の印象が強かった労働環境も大幅に改善されています。以前から建築現場では日曜を休みにする企業が一般的でしたが、最近は土曜と祝日まで休みにしたり、特別手当を付与したりする企業が増えています。
建築・インテリアの仕事には、大きく分けて「設計」と「施工」の2種類があります。設計は、建物を建てる前に図面を作成し、建築計画を立てる仕事。施工は、設計図をもとに実際に建物を建設する仕事です。
このなかで特に施工分野の責任者を務める施工管理技術者(現場監督)が人手不足で、どの企業も高待遇で求人を出している状況にあります。
インテリアの分野も売り手市場で、本校のインテリア科で学んでいる学生は早々に就職が決まります。インテリアコーディネーターとしてだけでなく、卒業後すぐに建築士取得も可能なことから戸建て住宅の設計に携わる人も多いです。
―一級建築士と二級建築士の資格の違いや、施工管理技術者に必要な資格についても教えてください。
一級建築士と二級建築士は、設計・監理できる建物の規模や種類に違いがあります。一級は超高層ビルや商業施設を含むすべての建物を設計することができる一方、二級は戸建て住宅や2階建てまでの共同住宅など小規模な建物に限ります。そのため資格取得の難易度にも差があります。
施工管理技術者の仕事をするには、まず建築施工管理技士(1級・2級)の資格が必要です。さらに建築士(一級・二級)の資格を取得していると建築全般の理解が深まり、現場での活躍の幅が広がります。
東京テクニカルカレッジでは、現場監督とも呼ばれる施工管理技術者を養成するための「建築監督科」(4年制)を設置しています。施工管理職に必要なのは、「品質」「予算」「工期」「安全」を管理する力です。
最近ではこの4つに加え、「環境」に配慮した建設計画も重要視されるようになりました。建築監督科では、学生たちが通うこの校舎を一から建設するという想定で、全体の工事計画を示す際に必要な「施工計画書」や、材料費や人件費など工事に必要な金額と予算の使い方を記載する「積算書」を作成する等の課題に取り組んでいます。
学校でここまで教えるのは珍しく、講義をしに訪れた大手ゼネコンの現場監督経験者の方々にも驚かれるほどです。こうした授業で実践力を身につけた学生の多くが、大手建設会社へと就職していきます。

「実務で活きるスキル」を身につけるための実習時間
―建築・インテリア分野の学校を選ぶ際のポイントはありますか。
まずは、実習や演習などを通したアウトプットの時間が多い学校を選んでほしいと思います。例えば、本校では企業や地域と連携して企画を提案・実施する「リアルジョブプロジェクト(RJP)」という課題解決型の授業を展開しています。
図面を描いたり、ソフトを扱ったりするスキルがあっても、実際の業務を経験してみなければ身につかない現場の空気や業界独自の考え方がある。現場でどう活かされるかを考えながら技術力を身につけてほしいです。
例えば、本校インテリア科のRJPでは、学生寮を運営する企業との連携で、寮室のリノベーションデザインを学生が提案しています。クライアントからの要望に応えながら、最終的には提案した計画のうち優れた案が実際に採用・施工されます。就活時にポートフォリオとしても活用できるので、こうした学んだ成果をカタチにする授業があるとよいと思います。
建築系学部がある大学と比べた際の専門学校の強みは、CADやBIMといった先端技術を修得できる点です。大学はどうしても「研究」の色が強いため、「実践力」では専門学校に一日の長があります。現場でもアプリケーションを使いこなす必要があるので、実務的な技術を修得できる学校を選んでほしいです。
身につけるべきスキルの多い分野なので、安心して授業を受けられる学校のサポート体制にも注目してください。本校では日々の疑問を細かく解消して学びの達成感を得るための「コヤマ式教育システム」というフォロー体制を確立していますが、「この学校なら卒業まで学べそうだ」と納得できる点を見つけていただけるとよいと思います。
―最後に、高校生へメッセージをお願いします。
建築やインテリアに興味があるなら、ぜひ挑戦してください。映画や旅行、リアルな空間を表現したゲームなど、日常生活のさまざまな場面で建築やインテリアに触れ、楽しみながら興味を深めてほしいですね。
建築・インテリア分野のポイント
1 アウトプットする実習時間の多さ
企業連携の授業が多いと、学校で身につけたスキルを実務で活かす際に必要なクライアントの意向や現場の雰囲気も学ぶことができる。
2 先端技術を学ぶ実践の機会
建築設計に用いられるCADやBIMなどのソフトを修得できる環境であるかどうかも大事。
3 学習のサポート体制が整っているか
幅広い知識や技術の修得、実習の時間が多い分野なので、授業に安心してついていける環境を選びたい。
この質問に答えてくれた人

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専門学校東京テクニカルカレッジ
一級建築士
全国専門学校建築教育連絡協議会副会長
校長
白井 雅哲 先生
長谷川敬アトリエ・椎名政夫建築設計事務所を経て、白井雅哲アトリエを開設。2000年度より本学建築工学科にて教鞭を開始。その後、インテリア科科長・企画部長・副校長を経て、2018年度、東京テクニカルカレッジ校長に就任。