今後、動物看護・トリマー分野をめざす学生が専門学校で学ぶべきこと

2019年に愛玩動物看護師法が制定され、「愛玩動物看護師」が新しい国家資格となった。2023年2月には多くの受験者が第1回目の国家試験に挑戦し、動物看護分野が注目を集めている。愛玩動物看護師とはどのような資格なのか? 動物看護やトリマー分野の仕事にどう影響するのか? 長年、動物看護・トリマー分野で多くの人材を輩出してきた東京愛犬専門学校窪田武雄理事長に伺った。

今後ますます広がる動物看護師の業務範囲。トリミング技術も強みに

―「愛玩動物看護師」が国家資格となりました。動物看護の仕事は今後、どのように変わるでしょうか?

大きな変更点として、動物看護師の仕事に独占業務が加わります。内容は、獣医師の指示のもと行う採血やマイクロチップの挿入、カテーテルによる採尿などです。これにより動物看護の業務の範囲は今後ますます広がるでしょう。加えて、動物病院では窓口業務をはじめ、内科外科的な診療の補佐カルテ管理、動物の保定患部の洗浄など数多くの業務があります。これらは変わらず動物看護師が担っていくもの。今まで同様、就職後も向上心を持って学び続ける必要のある職業といえます。
動物との接触も不可欠であり、看護の知識に限らず動物を扱う際の観察力、忍耐力、洞察力、手先の器用さも引き続き求められるでしょう。

また、国内のほとんどの動物病院が診療の他にトリミング業務も行っています。その意味でも、動物看護の知識だけでなく、トリミング技術を修得することが動物看護師にとって利点となるはずです。逆に、愛玩動物看護師資格を持っていても、動物の扱いに慣れていなければ現場では力不足ともいえます。

今後は愛玩動物看護師資格を持ち、高いトリミング技術も持つ優秀な人材が出てくるでしょう。そういった人が動物病院、ペットサロン、ペットショップで活躍されるのは間違いないと思います。

 

―動物看護師になるために、専門学校ではどのように知識やスキルを身につけるのでしょうか?

動物病院での実習など実践的な看護教育も行われますが、主に愛玩動物看護師資格取得のための座学の学びがメインとなります。点滴や注射の仕方のほか、医療の本質に関わるような授業もあり、吸収しなければいけない知識量は多いといえますね。

一方で、本校では動物看護学科でもトリマー教育を取り入れています。というのも、犬の生態や表情、目つき、性格などを理解し、うまく扱えるようになるには、やはり実際に犬と関わることが大切だからです。それができるトリマーの学びは、動物看護師として働き始めてからも必ず役立ちます。また、本校で各学科にドッグウェアの製作の授業を組み込んでいるのは、動物看護師やトリマーなどに求められる手先の器用さを養うためでもあります。

 

経験豊富かつ面倒見のいい先生から学び、高い技術力を身につけよう

―トリマー・ドッグトレーナーをめざす学生は、専門学校でどのように学んでいますか?

修得に最も時間のかかるトリミング技術は主に実習で学びます。

例えば本校の場合、愛犬総合学科のトリミングの実習時間は1週間に10〜20時間ほど。業界で高い評価を受ける一般社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)の資格保持者が手本を見せ、学生はその技術を見て繰り返し練習します。講師による手ほどきをどれだけ受けることができるかが、学生の技術力にも影響すると思います。

ドッグトレーナーの養成に関しては、あらゆるタイプの犬を取り扱いながら学ぶことが多いですね。ただ、今後は動物心理学行動学といった理論の習得も求められると考えています。というのも、コロナ禍で犬を飼う人が増えた一方で、しつけができず飼育を放棄してしまう人も増えています。そこで、飼い主向けのパピートレーニング教室が動物病院やペットサロンなどで多く開催されるようになりました。こうした場で活躍するには、トレーニングの技術はもちろん、人に論理的に説明できる力が必要になってきているのです。

この課題に対応するため、本校では日本で初めて「人と犬の関係学」で博士号を取られた鹿野正顕先生の授業を開設し、さらに訓練士として国内外で活躍する村瀬英博先生による実技指導も行っています。

 

―動物看護・トリマー分野の専門学校選びのポイントは?

学校見学では先生の経歴や技術力もそうですが、人柄にも注目してほしいと思います。容易ではないトリミング技術の修得や動物看護の学びにおいて、学生一人ひとりをしっかり見てくれる、面倒見のいい先生がいるかが重要だと思いますね。

また、高い技術力が評価されているJKCの有資格者やトレーニング分野・獣医療分野で豊富な現場経験を持つ先生がいる学校では、より充実した教育を受けられるでしょう。

 

―最後に、動物看護・トリマー分野で活躍していくための素養や資質があれば教えてください。

この分野は立ち仕事が多く、体力が必要とされます。ですから、高校時代から運動の習慣をつけておくといいでしょう。また、動物看護は動物の死に直面することも多く、その現実に耐えられず離れていく人もいます。そうならないためにも、「動物が好き」というだけでなく、きちんと目的意識を持つことが大切です。

他にも、手先を使うことが多い仕事ですから、手先の器用さも大切な素養のひとつ。ただし、これらは専門学校で養うこともできます。自己実現の一番の近道は、高校時代に友人をたくさんつくり、自律性のある学校生活を送ることではないでしょうか。

 

動物看護・トリマー分野のポイント

1 動物看護師の業務は幅広く、就職後も学び続けることが重要

動物病院によって動物看護師が担う業務内容はさまざま。現場で経験を積みながら成長していこう。

2 動物を扱う力が求められる

知識だけでは動物看護師として力不足。動物を扱う力に長けたトリマーの技術も持っていると強みに。

3 経験豊富な先生に学ぶ

動物看護師、トリマー、トレーナーのいずれも、現場経験の豊富な先生に学ぶことが力をつけるカギ。

この質問に答えてくれた人

学校法人東京愛犬学園
東京愛犬専門学校
理事長 窪田武雄 先生
1970年の創立時から東京愛犬専門学校の運営に携わる。2017年にはその功績が認められ、東京都から教育功労賞が授与された。
取材後記
50年以上、動物業界で教育に携わってきた窪田理事長のお話は示唆に富む内容が多かった。最も印象的だったのは、トリミングのスキルが動物病院でも実は非常に求められるスキルであるということ。国家資格だけでなく、現場で評価される技術力と人間性の養成こそが重要というお話はその通りだと思った。
学校紹介
東京愛犬専門学校

東京都中野区上高田1-1-1
TEL 03-3366-2322
https://www.aiken.ac.jp

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