X線(レントゲン)検査やMRI検査など、がんや脳疾患といった病気を発見するために画像検査は欠かせないもの。
そうした検査装置を確かな技術力で操作し、医師の診断を助ける最適な画像を提供するのが診療放射線技師の役割だ。
国家試験合格のための勉強や学校で身につけるべき技術や知識について、東京電子専門学校診療放射線学科の石田有治先生に話を伺った。
画像診断や放射線治療の一翼を担う
医療機器のスペシャリストに
「医師のタスクシフト」もあり、ますます重要度が増す高度医療職
―診療放射線技師の仕事内容と業界の現状についてお聞かせください。
診療放射線技師は、放射線を用いた検査装置であるX線撮影やCTスキャナを操作し、病気の診断に必要な画像情報を医師に提供するのが大きな役割のひとつです。
レントゲン検査や乳がん検査(マンモグラフィ)など、人体内部の様子を映し出したり、心臓や脳などを調べたりする高度な画像診断機器を扱う仕事です。
また、がん治療の際にも放射線を使用することがあり、医師や歯科医師から適正な線量の指示を受け、放射線を患者さんの人体に照射する業務も担います。
MRI検査や超音波検査(エコー)など、なかには放射線を使わない検査業務も。
そうしたさまざまな医療機器を駆使するための技術力だけでなく、患者さんの不安を取り除くコミュニケーション能力や人間性も必要な職業です。
コロナ禍で肺の診断にCT撮影が多く用いられるなど、現代医療において画像診断はますます重要な役割を担っており、それに付随して診療放射線技師の活躍の幅も広がっています。
加えて、ここ数年で医師の働き方改革が進められ、医師業務の一部を他の医療従事者が担う、あるいは共同実施する「タスクシフト」が進められています。検査によって得られた画像から医師が病気の有無や程度を診断する際の「読影」の補助や、CTやMRIなどの検査過程における「静脈路確保(静脈に注射針を刺す行為)」など、医療行為も含めて法令の改正によって診療放射線技師の業務の幅が広がっています。
本校ではそうした変化に対応した実習を行っています。
―診療放射線技師の資格取得や卒業後の活躍に向けて、専門学校ではどのように学んでいくのでしょうか。
本校では、3年間のうち1年次に数学や物理学、解剖学といった基礎的な学問を勉強し、2年次には画像診断に必要なX線やCTなどの検査装置の扱い方や画像処理方法を修得、3年次には主に放射線治療や核医学検査(RI検査)について学びます。
例えばX線検査をひとつとっても、どのようにX線が発生し、それを人体に照射すると画像にどのような差異が現れるのかを理解するために、ただ装置の特性を把握するだけでなく放射線物理学や病理学といったさまざまな知見が必要になります。
また、いくら画像だけを見つめていても「実物」の構造を知らなければ体内の状態はイメージできず、医師が診断しやすい画像を撮影することはできません。ですから、国家試験対策として座学の知識を勉強するだけでなく、内臓などの模型を使った実習によって3次元的に理解を深めていきます。
―専門学校と大学の学び方の違いについてお聞かせください。
専門学校の場合は1年早く現場に出ることができるので、真っ直ぐに診療放射線技師を目指して国家資格の取得を目指すならば専門学校をおすすめします。
一方で、資格試験のための勉強以外にも専門的に深く学びたい分野があるならば、大学でそれぞれの学問に特化した先生に教えを請うのがいいと思います。
専門学校で学ぶのであれば、早くに臨床現場で働く利点を活かして熱心に努力し続けたり、大学院に進学して専門的な勉強に取り組んだりするなど幅広い選択肢を見据えてほしいですね。
「自分の大切な人を守りたい」
その信念を持って学んでほしい
―専門学校を選ぶ際のポイントがあれば教えてください。
国家試験に向けた勉強は簡単ではないので、「ここでなら3年間しっかり学べる」と意欲を持続できるカリキュラムや充実した実習設備がある学校を選んでほしいと思います。
そのためにもオープンキャンパスや体験入学にぜひ足を運んで、自分の目で確認してみてください。
実習先の施設については、歴史がある学校の方が卒業生のネットワークが強く充実している傾向にあると思います。本校の場合は実習時間の増加に即して実習先の拡充を進めているところです。どの学校も基準として50〜60くらいの実習先を用意しているのではないかと思います。
―卒業後にはどのような進路が想定されますか?
診療放射線技師としては、病院やクリニック、健診機関といった医療機関に就職する人が大半を占めます。2023年で厚生労働省認定54年目を迎える本校の診療放射線学科では、国立病院機構や国・公・私立大学の附属病院などを中心に将来性や規模、本人の適性などを総合的に見て就職指導をしています。
―この分野を目指す高校生へのメッセージをお願いします。
放射線診療の根本には物理の知識が必要で、国家試験においても数学の計算問題などが出題されるので、高校時代から理教系科目にあまり苦手意識を持たずに取り組んでもらえるといいですね。
また、診療放射線技師の仕事には画像処理などPCの使用が必要不可欠です。パソコンスキルがある方が学習に有利ではあります。高校まででそうした勉強に触れていなくても、課題に向かってコツコツと努力して学んでいける人が向いていると思います。
医療従事者において大事なのは、「自分の大切な人を守りたい」というマインドを持っているかどうかです。強い信念を持って、国家試験対策や実習に取り組んでほしいですね。
診療放射線分野のポイント
1 法改正により業務の幅が拡大
豊富な実習で経験を積む
「医師のタスクシフト」により一部の医療行為も担うようになるため、丁寧に技術を学ぶ実習が大事。
2 実習設備が充実しているか
医療機器が充実した学校での日々の実習で、理論と同時に実践力や応用力を身につけることができる。
3 数学や物理、PC操作の学習が要
専門学校で解剖学や生理学を学ぶ上で、数学や物理の基礎知識は必須。しっかり勉強しておいてほしい。
この質問に答えてくれた人
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東京電子専門学校
診療放射線学科
石田 有治 先生
東京電子専門学校診療放射線学科卒業後、1981年より化学療法研究所附属病院で診療放射線技師として勤務。
その傍ら、東京理科大学理学部第2部物理学科に通学し、1985年卒業。
2005年には中嶋中央病院に転院し、2006年に東京電子専門学校に着任。現在、診療放射線学科で学生の指導に当たる。