コロナ後に完全復活したリアルイベントは、2024年も好調をキープしている。ライブや動画配信の舞台裏は慢性的な人材不足で、憧れのアーティストを支える仕事に就くことも夢ではないという。
そんなエンターテインメント業界を支える音楽、音響、放送、照明の仕事に就くために、専門学校で何を学べばいいのだろうか。日本工学院専門学校ミュージックカレッジの森永直樹先生、鈴木裕大先生に話を聞いた。
現場で即戦力になるために最新機材・設備で学べる環境を探そう!
人材不足のエンタメ業界は憧れの職業に就くチャンス
―エンターテインメント業界の現状と今後についてお聞かせください。
森永 ライブやコンサートなどのリアルイベントは、まさに絶好調という状態です。コロナ後に一気に客足が戻り、会場が足りない状況もありましたが、横浜近郊にぴあアリーナやKアリーナができ、東京には有明アリーナができたほか、お台場の青海エリアや川崎エリアにもアリーナ施設の建設が予定されており、会場不足は解消されつつあります。
鈴木 2024年はコンサート系の収入が大幅アップした一方で、舞台の資材や運営スタッフが足りず、悲鳴を上げているコンサート運営会社も多数ありました。そんな背景もあり、業界の人材ニーズは高く、コンサート照明会社を志望した学生の内定はすぐに出ていましたね。
森永 人材不足は、音響や舞台美術などの分野も変わりません。なかには、在学中から音響スタッフとして、有名K-POPアイドルのツアーに帯同している学生などもいます。
さらに、最近、注目を集めているのが動画編集の仕事です。コンサートやライブ映像の配信、YouTubeが活況な流れで、動画を編集できる人材が求められています。本校の放送芸術科で学べるようなプロの動画編集スキルを身につければ、テレビや動画配信会社を始めとする幅広い業界で活躍できる可能性があります。

―音楽・音響・放送・照明それぞれの分野には、どのような職種があるのでしょう?(下図参照)
鈴木 「音楽」分野では、歌い手(ヴォーカリスト)、アイドル、プレイヤー、作曲家、さらに、VTuberやサウンドクリエイターといった職種もメジャーになっています。
「音響」分野では、コンサート会場で音響機材を扱うPAと呼ばれる技術者を目指す人が多く、他にもミュージックビデオやテレビ番組の音を調整するMAエンジニアなどが人気です。
「放送」分野は、テレビやWeb動画の制作ディレクターや映像編集スタッフ、美術・大道具スタッフといった仕事があります。
最後の「照明」分野は、コンサートや演劇、テレビ、映画などの照明スタッフが中心です。
森永 ライブを企画するプロモーターの仕事、グッズ制作の仕事、タレント事務所でマネジメント職に就く人も増えています。こうした職種では、音楽や映像編集について学んだ知識がプラスアルファのスキルとして役立つ場面も多いですね。

―この分野の専門学校を選ぶ際のポイントも教えてください。
鈴木 まずは機材や設備の充実度に注目してほしいです。最新機材がそろっている学校では、現場さながらの環境で実習を重ねることができます。本校を例に挙げると、蒲田キャンパスには4000名を収容する舞台付き多目的アリーナ「日本工学院アリーナ」があり、ここには電動収納観客席をはじめとする舞台装置や最新の音響・放送設備を完備しています。
コンサート・イベント科ではアーティストのブッキングからプロモーション、PA、照明、舞台美術まで、すべてを学生が主体となってつくり上げる実習があります。これは、実践的な学びを得る最適な環境だといえます。
森永 専門学校を選ぶ際は講師にも注目すべきです。自分が目指す業界の実務経験がある講師陣が集まっている学校を選べば、得るものも大きいでしょう。
学生時代にインターンシップなどで実務経験を得る機会も重要です。日本工学院の場合は、学校と連携する企業やイベントも多く、さまざまなインターンシップやイベントに参加できるチャンスがあります。
さらに、卒業生の就職先も要チェックです。卒業生が学校に来てアドバイスをくれることもあるし、卒業生ネットワークで就職活動を有利に進められる可能性もあります。
―エンターテインメント業界の就職状況はいかがでしょう?
鈴木 イベントを支える、裏方の仕事については、採用市場はかなり活況です。今なら好きなアーティストのDVDのクレジットに載っているような有名企業に入れる可能性も高いと思います。
森永 アーティストやプレイヤーとして活躍したい場合は、今も狭き門を突破する必要があります。夢をめざすならば、それに伴うリスクも考える必要があります。最近は卒業後に一般企業に就職して一定の収入を得ながらアーティスト活動を続ける人も多いです。本校でも学科によっては「デュアルキャリア」というプログラムを組み、現実的なキャリアプランを考える機会を用意しています。
―最後にエンターテインメント業界を目指す高校生にメッセージを。
鈴木 高校時代から、興味のない音楽ジャンルにも目を向けて、自分の引き出しを増やしてほしいですね。それは必ず将来の糧になります。
森永 やはりコンサートや演劇を積極的に観に行ってほしいですね。クリエイティブな発想力には、インプットが不可欠です。良質な音楽やアートに触れて、センスを磨いておくと入学後に必ず役立つと思います。
音楽・音響・放送・照明分野のポイント
1 機材や設備の充実度に注目
最新機材を使った実習や学生主体でコンサートをつくる経験など、リアルな経験を重視しよう。
2 憧れの業界のプロから学ぶ
ミュージシャンや作曲家、ダンサーなど、めざす道のプロが講師を務める学校を探そう。
3 インターンシップや企業連携の授業で「実務経験」を得る
スタッフワークを体験するインターンやライブ制作実習に挑戦する機会を大事に。
この質問に答えてくれた人


日本工学院専門学校/日本工学院八王子専門学校
ミュージックカレッジコンサート・イベント科
鈴木 裕大 主任
2017年蒲田キャンパスのコンサート・イベント科の教員として採用される。前職では音楽に限らず、ウェディングにおける音響、照明、映像の演出業務にも従事。

日本工学院専門学校
東京都大田区西蒲田5-23-22

東京都八王子市片倉町1404-1
https://www.neec.ac.jp
日本工学院専門学校/日本工学院八王子専門学校
ミュージックカレッジコンサート・イベント科
森永 直樹 科長
2013年蒲田キャンパスのコンサート・イベント科の教員として採用される。前職ではA&R、マネジメント、音楽ディレクターからタイアップなどのプロモーション戦略にも従事。