コロナ禍によって一度は苦境に立たされたリアルイベントも、2023 年には完全復調。むしろ実体験の重要性が改めて問われ、コロナ前を上回る盛り上がりを見せている。
エンターテインメントを支える音楽、音響、放送、照明の分野で活躍するためには、専門学校で何を学べばいいのだろうか。日本工学院専門学校 校長補佐の中村英詞先生に話を聞いた。
設備環境や最新機材、講師陣に注目した学校選びが重要
興行売り上げは過去最高へ スタッフの募集が相次ぐ
―エンターテインメント業界の現状についてお聞かせください。
ライブやコンサートなどのリアルイベントはコロナ前の2019年が最も売り上げを伸ばした年で、20年には一気に2割ほどまで落ちてしまいました。しかし、23年にようやくコロナが5類に移行すると客足が一気に戻り、いきなり過去最高の興行を叩き出すまでになっているんです。実体験のイベントを多くの人が待ち望んでいた結果でしょう。
例えば、横浜近郊ではここ数年でZeppやぴあアリーナ、Kアリーナといった会場が次々に新設され、他の都市でも同様に会場が急増しています。その結果、スタッフが不足し、コンサート会場やイベント会社では、募集が相次いでいます。働き方改革によって交代制や時間制を導入する企業も多く、それゆえに求人も増えています。
コロナ禍で注目を集めたのが動画編集の仕事です。コンサートやライブ映像の配信やYouTubeが活況となっている流れで、動画の編集人材が求められています。
今の若い方々は、スマホを使って独自に動画を作っている人も多くいます。そうしたベースとなる経験に加えて、本学の放送芸術科で学べるようなプロの動画編集スキルを身につければ、広く業界で活躍できる可能性があります。
―音楽・音響・放送・照明それぞれの分野には、どのような職種があるのでしょう?(下図参照)
まず「音楽」分野では、ヴォーカリスト、プレイヤーから作曲家などの裏方、そしてボカロPやサウンドクリエイターといった職種もメジャーになっていますね。
「音響」分野では、コンサート会場で音響機材を扱うPAと呼ばれる技術者をめざす人が多く、他にもミュージックビデオやテレビ番組の音を調整するMAエンジニアなどが人気です。
「放送」分野は、テレビやWeb動画の制作ディレクターや映像編集スタッフ、美術・大道具スタッフといった仕事があります。
最後の「照明」分野は、コンサートや演劇、テレビ、映画などの照明スタッフが中心です。
このほか、ライブを企画するプロモーターの仕事や、グッズ制作の仕事、タレント事務所でマネジメント職に就く人も増えています。こうした職種では、音楽や映像編集について学んだ知識がプラスアルファのスキルとして役立つ場面も多いですね。
どれだけ濃く、リアルに実務経験を得られるか
―この分野の専門学校で学ぶ利点はどこにありますか。専門学校を選ぶ際のポイントも教えてください。
まずは機材や設備の充実度に注目してほしいです。最新機材がそろっている学校では、現場さながらの環境で実習を重ねることができます。
本学を例に挙げると、蒲田キャンパスには4000名を収容する舞台付き多目的アリーナ「日本工学院アリーナ」があり、ここには電動収納観客席をはじめとする舞台装置や最新の音響・放送設備を完備しています。
コンサート・イベント科ではアーティストのブッキングからプロモーション、PA、照明、舞台美術まで、すべてを学生が主体となってつくり上げる実習があり、これを日本工学院アリーナと外の会場「Zepp Haneda(TOKYO)」や「KT Zepp Yokohama」の両方で毎年実施しています。学内のアリーナであれば練習し放題で、実践的な学びを得るには最適な環境です。
また、専門学校を選ぶ際は講師にも注目するといいでしょう。自分がめざす業界の実務経験がある講師陣が集まっている学校を選べば、得るものも違ってくると思います。
インターンシップなどで実務経験を得ることも重要です。本学の場合は学校として、つながりのある企業やイベントも多く、さまざまなインターンシップや企業連携のイベントに参加できるチャンスがあります。
―就職先について、特にパフォーマー系の場合、どのような道があるのでしょうか。
アーティストやプレイヤーは世に出て活躍するのが狭き門で、挫折してしまう人も多い職種です。夢をめざすことはすばらしいことですが、それに伴うリスクも考える必要があります。最近は卒業後に一般企業に就職して一定の収入を得ながらアーティスト活動を続ける人も多いです。
本学でも「リアルキャリア」というプログラムを組み、ビジネスマナーや就職活動について早くから知識を得て現実的なキャリアプランを考えてもらう機会を用意しています。
―最後にエンタメ業界をめざす高校生にメッセージを。
まずは、高校での勉強に一生懸命取り組んでほしいです。その知識は高校でしか身につけられないものですし、今後、さまざまな人とコミュニケーションを取るうえで必ず活かされるはずです。また、本学のオープンキャンパスにも、ぜひ足を運んでほしいです。学生たちの姿や作品を見れば「1年後には、こんなふうに成長できるんだ」と実感していただけると思います。
音楽・音響・放送・照明分野のポイント
1 機材や設備の充実度に注目
最新機材を使った実習や学生主体でコンサートをつくる経験など、リアルな経験を重視しよう。
2 憧れの業界のプロから学ぶ
ミュージシャンや作曲家、ダンサーなど、めざす道のプロが講師を務める学校を探そう。
3 インターンシップや企業連携の授業で「実務経験」を得る
スタッフワークを体験するインターンやライブ制作実習に挑戦する機会を大事に。
この質問に答えてくれた人
東京都大田区西蒲田5-23-22
日本工学院八王子専門学校
東京都八王子市片倉町1404-1
TEL 0120-123-351
https://www.neec.ac.jp
→『進路の広場』で日本工学院専門学校、日本工学院八王子専門学校を見る
日本工学院専門学校/日本工学院八王子専門学校
校長補佐
中村 英詞 先生
2000年に蒲田キャンパスのコンサート・イベント科の教員として採用される。
2007年から4年間は、八王子キャンパスでも指導し両キャンパスがよりよく発展するために調整してきた。