国家資格に合わせて専門学校の学びも進化中 電動化で急速に変わる自動車整備士の仕事

EV(電気自動車)が急速に普及し、100年に1度の技術革新が起こっているといわれる自動車業界において、自動車整備士に求められる役割も変化している。高度な車載センサーや制御システムの安全を維持するために、自動車整備士を目指す学生は何を学び、どのようなスキルを身につけるべきなのか。東京工科自動車大学校 運営本部長であり中野校・世田谷校の佐藤康夫校長に話を伺った。

自動車整備士のニーズは拡大中。スキル次第で憧れの企業に就職できる!

新たな教育体制に移行する自動車整備専門学校

―自動車業界の現状についてお聞かせください。

電動化や自動運転技術が大きく進歩し、自動車業界は、100年に1度と言われる技術革新の真っ只中にあります。自動車に搭載されるセンサーやコンピュータの数は倍増して、いわゆる「自動車のロボット化」が進んでいます。

この状況において、自動車整備士の仕事内容も大きく変化しています。今後は、自動車に搭載された高度なセンサーや制御システムを事前に点検診断し、正常な機能を維持する技術が求められます。自動車整備士の役割は従来の消耗部品の点検・修理から大きく広がり、期待される仕事のレベルも高くなっています。

自動車整備士の主な就職先となる整備工場(ディーラー系/民間)のほうも従来の「分解整備」に加え、電子制御装置を整備する「特定整備」の認証が必要になります。この特定整備を担う自動車整備士を育成するために、新たな教育が必要になっています。東京工科自動車大学校も全国の専門学校に先駆けて2020年11月に「特定整備認定工場」の認証を取得しています。

一般企業では、コロナ禍によりテレワークなどの新しい働き方が生まれましたが自動車整備の仕事は、整備作業の機器や工具、そして、高度な診断装置などの環境が整った場での仕事が基本なので、出勤して現場で働くスタイルがベースとなります。

―自動車整備士の資格取得の学びにも変化がありますか?

自動車整備士の資格は、二級ではガソリン・ジーゼル・二輪、そして一級では小型・大型・二輪と種目が分かれています。EV(電気自動車)が急速に普及するなか、それらの資格名称も令和9年までに一級自動車整備士、二級自動車整備士に統合されることが決まっています。

2023年2月現在、内燃機関を搭載しないEV車両の割合は、まだ、日本における自動車の保有台数8000万台の1%にも達していません。しかし、今後、急速に普及・拡大することが予想されるため、EVやASV(自動停止装置などを搭載した先進安全自動車)の整備知識・技術は、これからの自動車整備士に必須なものとなるでしょう。

国土交通省指定の教科書内容も順次改訂されます。それに伴い、国家試験の出題内容も変更されていきます。ここ5〜6年の間に、各校は、カリキュラムの見直し、新規科目の導入、教材の変更などを行い、新たな教育体制に変わることが予想されます。

メーカー系と非メーカー系で専門学校の特長は異なる

―自動車整備分野を学べる専門学校を選ぶ際にチェックすべきポイントがあれば、教えてください。

専門学校は、メーカー系非メーカー系に大別できます。メーカー系は現在、トヨタ・日産・ホンダの専門学校が全国にあります。これは、自動車ディーラーのアフターサービス部門の整備品質向上のため、若い整備士を育成する目的でつくられた学校です。

メリットは、就職先のメーカーの仕事に直結する最先端技術を含めた教育を受けられること。ただし、主たる就職先は運営母体である各メーカーの自動車ディーラーが中心となります。

一方、非メーカー系は、特定の運営母体を持たないため、日本車・輸入車の複数メーカーの自動車整備関連企業に就職できる点が特長です。非メーカー校に通う学生は、自動車の専門知識・技術を学びながら、業界のさまざまな企業を知り、自分の適性や会社の方針にマッチした企業を就職先に選ぶことができます。

非メーカ系の中でも東京工科自動車大学校は、自動車整備関連企業だけでなく、自動車の設計開発などのものづくり企業、自動車関連メディア、損害保険会社、公務員など、幅広い分野に卒業生を輩出しています。

一級自動車整備士を目指す4年制のコース、二級自動車整備士を目指す2年制のコースのほか、企業連携に特化したコースなどもあり、自分の将来のステージをしっかり確認しながら学べます。

また、卒業生の就職実績も専門学校選びの指針になるかもしれません。幅広い企業とのネットワークの有無、在学中の企業からのバックアップ体制、奨学金制度の充実度などもチェックポイントになると思います。

―卒業後に想定される進路について、改めてお聞かせください。

前述した通り、ほとんどの学生は自動車関連企業に就職します。自動車業界は就業人口の8%、540万人が仕事に従事する日本の基幹産業です。ここで活躍するために国家資格である「自動車整備士資格」が強みになることは言うまでもありません。

自動車整備の現場は、人材不足が慢性化しており、さらに仕事内容も多様化しています。最近は、自動車整備の知識・技術を強みに、海外で働く道もあります。若者にとって自動車産業は世界を舞台に活躍できるチャンスのある業界といえます。

―自動車整備分野を目指す高校生と保護者にメッセージを。

ガソリン車がEVに代わっても自動車整備士の仕事はなくなりません。「手に職」である自動車整備の専門知識・技術は、世中で通用する大きな強みになっていくでしょう。

「車が好き」「車に関わる仕事をしたい」と本気で思える人は、専門学校で最先端の自動車整備を学ぶ意義は大きいと思います。

自動車分野のポイント

1 電動化時代の整備を学べる環境か

EVやASVの普及に合わせて、車載センサーや制御システムの点検・整備の知識・技術が求められる。

2 メーカー系と非メーカー系の違いを知る

運営母体がメーカーか非メーカーかで学べる内容や就職先に違いがあることを知っておく。

3 志望校の就職実績をチェック!

将来働きたい企業が明確にある場合は、志望校からその企業への就職実績を事前に確認しておこう。

この質問に答えてくれた人

学校法人 小山学園 理事
専門学校東京工科自動車大学校
中野校・世田谷校 校長
運営本部長
佐藤 康夫 先生
2006年より同校校長に就任。産業技術大学院大学創造技術修士。国家一級自動車整備士の資格を有し、時には授業も受け持つ。また、自動車技術会評議員など自動車業界において多くの任務に携わる。
取材後記
今の自動車は最新技術の粋を凝らした精密機械の集合体と語る佐藤先生。車が大好きで将来は自動車業界で働きたいと考えている人は、専門学校でぜひ体系的に最新の自動車に関する知識を学んでほしいというメッセージが印象に残った。
学校紹介
専門学校 東京工科自動車大学校
中野校:東京都中野区中野6-21-16
世田谷校:東京都世田谷区桜新町1-2-1
品川校:東京都品川区南品川3-7-12
TEL 0120-1969-04
https://car.ttc.ac.jp/
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