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日本透析医学会によると、国内で人工透析を必要とする患者数は増加の一途をたどり、現在は約34万人。実にわが国の人口約380人に1人の計算になる。
こうした背景もあり、透析治療にも携わる臨床工学技士を養成する専門学校も増えているが、高校生の多くは詳細を把握しきれていない。
そこで東京電子専門学校の石渡真由美先生に、臨床工学技士の業務内容や、専門学校での学びについて伺った。
患者さんと身近に接する医療従事者としての覚悟が求められる
医療機関を支え患者さんを支える 縁の下の力持ち
―まずは臨床工学技士の仕事内容からお聞かせください。
臨床工学技士は、人工呼吸器や透析監視装置など、医療機関で使われるさまざまな機器の管理・点検・保守を行います。例えば、勤務先に新しい医療機器が導入されれば、納入業者から使用方法や注意点などをヒアリングした上で、院内の医師や看護師に周知徹底させるのも業務のひとつ。
コロナ禍で注目される人工呼吸器などを実際に使えるようにセットアップするほか、トラブル発生時には臨床工学技士が迅速に対応します。
医療機器を扱う上で工学的知識も必要となります。また、人工透析などの業務では、実際に患者さんと接して治療に関わるケースもあります。
年齢層や症状も異なる多様な患者さんの容態にあわせて治療を安全に進めることが目的であり、患者さんの健康や笑顔を願う医療従事者としての覚悟と根気が不可欠な仕事です。
―専門学校での学びのステップについて教えてください。
3年間をかけて臨床工学技士の受験資格取得と合格を目指して学んでいくために、医療機器の工学的な仕組みや医学的な知識について、基礎から専門領域へと段階的に学習していきます。
本校では、1年次の前半に工学に関する基礎を身につけ、夏季休暇中には病院見学を実施。実際の業務内容を見て学ぶ機会を設けています。
1年次の後半は、見学した業務内容を実践していくための医療系の専門科目もスタートし、2年次にはさらに専門科目が増加。「第2種ME技術実力検定」での合格に向けた対策授業も行います。
その後、10月からは人工呼吸器や透析監視装置、さまざまな治療機器など、機器を相手にする学内実習で多忙を極めます。
最終年次となる3年次には、週5日を6週間、合計30日間にわたる病院実習が行われ、臨床現場における実践力を養います。
もちろん大変さはあるのですが、知識がゼロからでも着実にステップアップできるカリキュラムを組んでいますし、仲間同士で支え合って学びを深めるための環境づくりとして、本校では3年間にわたってクラス制を採用しています。
こうして本校の卒業生はほとんどが医療機関に就職しています。
最大のゴールである、「臨床工学技士」は比較的新しい国家資格で試験の実施は今年度でまだ34回目です。国家資格制定当初は数校しか養成校はなかったのですが、今では全国的にもかなり増え需要の高さが伺えると思います。

就職活動では、即戦力となる現場で働いてきた実績ある経験者が〝ライバル〟になることが多いため、新卒者としての熱意や覚悟をアピールするよう指導しています。
さまざまな医療機器に実際に触れながら
短期集中で学んでほしい
―専門学校を選ぶ際のポイントをお聞かせください。
まず、教員に医療機関での実務経験があるかを確認した上で、学生一人ひとりの不得意分野をどれだけ親身になってカバーしてくれるかがポイントです。
例えば、教員の有志が授業時間外に国家試験対策の補講を開くなど、どれだけ学生のサポートを手厚くしてくれるかなど、オープンキャンパスなどで在校生に確認してみるといいでしょう。
また、学内の演習で使用する医療機器の種類や台数も大切です。1台あたりの学生数が少なければ、それだけ実際に見て触って学ぶことができ、理解が深まるからです。
医療機器は、学校と医療機関との信頼関係のなかで教材として無償提供されるケースや、病院実習での学生への高い評価が提供につながるケースもあります。つまり、機器の種類や数はその学校の病院からの評価や教育の質を知る手がかりにもなるのです。
外部から高く評価される学校なら、それだけ求人数も多くなります。
なお、3年制の専門学校で学び、大学生よりも1年早く社会に出ることは、それだけ現場経験を積めるため経験がものをいう技術職だけにとても大きなメリットになります。
また、3年間で学び切る必要があるため、短期集中で知識・技術を習得するなかで、自ずと精神的なタフさが培われることも専門学校のメリットです。
このことは私自身、東京電子専門学校で臨床工学について学んだOGとして、卒業後に病院で働いてみてしみじみと在学中に効率的に学ぶという力を徹底的に体験しておいてよかったと思っています。
―最後に、臨床工学技士を目指す高校生にメッセージをお願いします。
勉強面では、数学や化学、生物、物理の基礎を高校までに身につけておけば、専門学校での勉強にもスムーズに入っていけるでしょう。
また生活面では、日頃から多くの人とコミュニケーションを重ね、性格の多様さを実感しておくことが、医療人の資質として重要になります。
大切にしてほしいのは、困っている人を見かけたら、見て見ぬふりをせずに行動を起こそうとする気持ち。その意識を持てれば、専門学校での友人をはじめ、実際の現場でも患者さんや周囲の医療スタッフとも強い信頼関係を築いていけるはずです。
臨床工学分野のポイント
1 患者さんに寄り添う気持ちが大切
医療機器に関する知識だけでなく、その先にいる患者さんを気遣う気持ちが重要。
2 工学系と医療系の知識を3年間で学び切る
講義型授業から学内実習、医療機関での臨床実習まで多忙な3年間で精神力も鍛えられる。
3 多くの医療機器を見て触れる学校へ
少しでも多くの機器に実際に触れ、引き出しを増やしておくことが就職後に活かされる。
この質問に答えてくれた人

→『進路の広場』で東京電子専門学校を見る
東京電子専門学校
臨床工学科
石渡 真由美 先生
東京電子専門学校卒業後、大学病院をはじめとした医療機関での勤務を経て母校の教員に。授業のほか、かつての勤務先とのネットワークを活かした教材調達や就職支援など、多面的に学生をサポートしている。